上海エアモビリティ博から読み解く、中国「低空経済」のいま
2025年7月下旬、上海で開かれた「2025 International Advanced Air Mobility Expo」は、ドローンや電動垂直離着陸機(eVTOL)を一堂に集め、中国の「低空経済」の現在地と次の一歩を示す場となりました。
会場は約6万平方メートル、出展者は約300社。規模からも、空の新しい産業に対する中国の本気度がうかがえます。本記事では、2025年12月の視点から、この博覧会が示した低空経済の姿と、アジアや日本への示唆を整理します。
上海で開かれた「低空経済」博覧会とは
「2025 International Advanced Air Mobility Expo」は、先進的なエアモビリティ(空の移動手段)に特化した国際見本市です。上海で7月23日に開幕し、26日まで4日間にわたって開催されました。
会場には、さまざまな用途向けのドローンに加えて、電動で垂直離着陸ができるeVTOL機がずらりと並びました。物流や都市間移動、観光、災害対応など、低空での飛行を前提としたサービスやソリューションが紹介され、中国の低空経済に新たな原動力を与えることが期待されています。
キーワードは「低空経済」──何が変わるのか
低空経済とは、比較的低い高度の空域を、新しい産業やサービスの場として活用する経済圏を指します。今回の博覧会では、とくに次のような分野が意識されていました。
- 物流:小型ドローンによる宅配や、eVTOLを活用した中距離輸送
- モビリティ:都市内や近郊を結ぶ新しい移動手段としてのエアタクシー構想
- 防災・医療:災害時の物資輸送や、医療機器・検体の迅速な搬送
- インフラ点検:橋梁や送電線、鉄道などの安全点検の自動化・省力化
- 観光・エンタメ:空からの遊覧や、高精細な空撮コンテンツの提供
低空の空域を「新しいインフラ」と見なし、その上にサービスを積み上げていく発想が、低空経済の土台になっています。
ドローンとeVTOLがつくる新しい空のインフラ
今回の上海の博覧会では、用途に応じて細分化されたドローンと、eVTOLの存在感が際立ちました。
ドローンは、すでに撮影や測量の分野では一般化しつつありますが、物流・監視・農業などへの応用がさらに広がろうとしています。一方でeVTOLは、人や貨物を乗せて移動させることを想定した「空の乗り物」であり、従来のヘリコプターよりも静かで、環境負荷が小さい移動手段として期待されています。
この2つが組み合わさることで、次のような「空のインフラ」が描かれています。
- 都市部の上空を活用した新しい通勤・通学ルート
- 郊外や離島と都市を結ぶ補完的な交通ネットワーク
- 従来のトラック輸送を補う、中距離の空の物流ルート
今回の博覧会は、こうした構想の一部を実物の機体やシステムとして可視化し、「低空をどう使うのか」という具体的な議論を促す場になったと言えます。
なぜ今、中国の低空経済が注目されるのか
会場規模6万平方メートル、出展者約300社という数字は、低空経済をめぐる動きが一過性ではないことを示しています。背景には、次のような要素があると考えられます。
- 高度な製造業基盤と、電動化技術の蓄積
- 都市部の人口集中に伴う、新しい移動手段への需要
- デジタルプラットフォームや地図データなど、関連インフラの整備
2025年12月時点で振り返ると、この夏の上海での博覧会は、「実験段階」から「実装に向けた競争」へとギアが上がりつつあることを象徴するイベントだったと位置づけることができます。
日本とアジアへの示唆──競争と協調の余地
日本やアジアの読者にとって重要なのは、この動きが自国の産業や生活にどのような影響を与えうるかという点です。
- 都市構造:渋滞や高齢化が進む地域での、新しい移動手段の選択肢
- 産業連携:部品供給やソフトウェア、管制システムなどでの協業の可能性
- 観光・地域活性化:空からのアクセスによる地方の新たな魅力づくり
低空経済は、一国だけで完結するものではありません。安全基準や通信規格、運航ルールなど、国や地域をまたぐ調整が今後の大きなテーマになります。上海の博覧会は、その議論の出発点の一つとして位置づけられます。
これからの論点:安全・ルール・社会の受け入れ
一方で、低空経済の拡大には、いくつかの重要な論点も伴います。
- 安全性:機体の信頼性や、事故時のリスクをどう抑えるか
- 空域管理:既存の航空機やヘリコプターとの共存をどう設計するか
- プライバシー:低空飛行による撮影やデータ取得と、生活空間の保護
- 騒音・景観:都市や観光地の環境とのバランスをどう取るか
2025年の上海の博覧会は、技術の可能性を示すと同時に、これらの論点を社会全体で考える必要性も浮かび上がらせました。今後、各国・地域がどのようなルールづくりと社会対話を進めていくのかが、低空経済の行方を左右していきます。
「低空」がニュースになる時代に
かつて「空」は主に旅客機と軍用機の世界でしたが、いまはドローンやeVTOLが加わり、低空の使い方がニュースになる時代に入りつつあります。上海のInternational Advanced Air Mobility Expoは、その転換点を象徴する出来事でした。
今後、アジア各地で同様の動きが加速すれば、数年後には「空の移動」や「空の物流」が、私たちの日常の選択肢として自然に語られるようになっているかもしれません。低空経済の行方を追うことは、これからの都市と地域のあり方を考えることにもつながっていきます。
Reference(s):
Expo showcases China's latest achievement in low-altitude economy
cgtn.com








