海洋ごみが価値に?中国「ブルーサークル」に見る新しい海の守り方 video poster
海のプラスチックごみを「コスト」ではなく「価値」に変えることで片付けようとする中国の仕組み「Blue Circle(ブルーサークル)」が、海洋ごみ問題への新しい解決策として注目されています。商業の力で海をきれいにしようとするこの取り組みは、中国発の海洋ガバナンスの一つの答えといえます。
同じペットボトルでも海から回収すると6倍の価値
中国では、同じプラスチックボトルでも、陸上で回収された場合の価値は0.5セント、海から引き揚げられた場合は3セントとされています。数字だけを見ると小さく感じられますが、その差は6倍です。
この「6倍の差」をうまく活用し、海洋ごみを回収するインセンティブ(動機)に変えたのがブルーサークルの発想です。海から集められたプラスチックには、単なる素材としての価値だけでなく、「海をきれいにした」というストーリーが付加されます。
ブルーサークルがつくる「ごみ回収のビジネスループ」
ブルーサークルの特徴は、海洋ごみの回収から製品販売までを一つのビジネスループとしてつないでいる点です。沿岸地域の漁師が重要な役割を担います。
仕組みはシンプルです。
- 沿岸の漁師が、漁の際などに海に浮かぶプラスチックごみを回収する
- 海から集められたプラスチックは、陸上のごみより高い価格で買い取られる(0.5セントに対して3セント)
- 企業は、その海洋プラスチックを原料に高付加価値の製品をつくる
- その製品が高い価格で売れることで得た利益の一部が、再びごみ回収の費用として前段に戻る
このように、前段(海洋ごみの回収)と後段(製品の販売)が一つの輪になっているため、「きれいな海を保つこと」が継続的なビジネスとして成り立ちます。補助金頼みではなく、市場の仕組みの中で回る点がブルーサークルのポイントです。
海からのプラスチック製品が高く売れる理由
ブルーサークルのきっかけになったのは、「海から回収したプラスチックでつくった製品は、新品のプラスチック製より高く売れる」という発見でした。この気づきが、企業の発想を大きく変えました。
海洋プラスチック由来の製品が高い価格で受け入れられる背景には、消費者が環境への貢献やストーリーに価値を見いだしていることがあります。単なる製品ではなく、「この一つを買うことで、海のごみを減らす一助になる」というメッセージが付いてくるからです。
企業側は、新品プラスチックよりも原料コストがかかるとしても、その差額を価格に反映できると分かれば、あえて海洋プラスチックを選ぶ理由が生まれます。そこで生じる付加価値が、そのまま海洋ごみの回収費用を支える財源になります。
ビジネスの力で海をきれいにする、中国発の海洋ガバナンス
ブルーサークルは、「ビジネスの力でクリーンな海を実現する」という考え方を具体的な仕組みに落とし込んだ取り組みです。これは、中国が世界的な海洋ガバナンスに対して提示する一つのソリューションと位置づけられます。
海洋ガバナンスとは、海の環境や資源を守りながら利用していくための、国や地域、企業、市民などを巻き込んだルールづくりや実践のことです。多くの国や地域で海洋ごみ対策が課題となる中、ブルーサークルは、経済活動と環境保全を両立させようとするアプローチの一例です。
政策だけに頼らない「インセンティブ設計」
海洋ごみ対策というと、規制の強化や罰則、自治体による清掃事業などを思い浮かべがちです。しかし、こうした取り組みだけでは財源や人手の面で限界があります。
ブルーサークルは、「ごみを拾うことに直接的な経済的メリットを与える」仕組みを通じて、海を利用する人々自身が主体的に海をきれいにする動機を持てるよう設計されています。沿岸の漁師にとっては、海洋ごみの回収が新たな収入源にもなり得ます。
日本やアジアへのヒント
日本やアジアの沿岸地域でも、漁業者が海洋ごみの影響に悩まされているという状況は共通しています。ブルーサークルのように、海からごみを引き揚げる行為に明確な価値をつけ、その価値を製品の価格として回収する発想は、多くの国や地域にとって参考になります。
重要なのは、「ごみを減らすことが誰かの負担になる」のではなく、「ごみを減らすことが収入や新しいビジネスにつながる」という構図をどうつくるかという点です。その一つのモデルが、中国のブルーサークルだといえます。
「ごみ」に値札をつける発想が世界の海を変えるか
陸上で集めれば0.5セント、海から集めれば3セント。そんな小さな差から生まれたブルーサークルの仕組みは、海洋ごみを「負担」から「資源」に変えようとする試みです。
海洋ごみ問題は世界共通の課題ですが、その解決策は一つではありません。規制や技術だけでなく、ブルーサークルのようにビジネスの力を活用するアプローチが組み合わさることで、より現実的で持続可能な海洋ガバナンスが見えてきます。
海から引き揚げられた一本のペットボトルに、新たな値札と物語を与える。そんな発想が、これからの国際ニュースの現場でどのように広がっていくのか、引き続き注目していきたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








