中国本土で世界初のグリーンアンモニア燃料補給 海運脱炭素へ一歩
中国本土の港で、純粋なアンモニアを燃料として使う船舶への補給が世界で初めて行われました。海運の脱炭素化に向けた象徴的な動きとして、2025年12月現在、国際的な注目を集めています。
世界初の純アンモニア燃料バンカリングとは
現地時間の金曜日、中国本土の遼寧省大連市にある China COSCO Shipping Corp., Ltd. のターミナルで、純アンモニア燃料による世界初のバンカリング(船舶への燃料補給)作業が完了しました。
今回燃料補給を受けたのは、港湾での運用に使用される船舶です。この船は、主機関を動かすエネルギー源としてアンモニアを利用する設計となっており、従来の化石燃料への依存を大きく減らすことを目指しています。
アンモニア燃料船の特徴:化石燃料を最大91%代替
この港湾運用船には、メインデッキの両舷にフルプレッシャー方式のアンモニア燃料タンクが1基ずつ搭載されています。これにより、主機関に安定した電力と推進力を供給できる構造になっています。
注目されるのが、そのアンモニアエネルギー代替率です。この船は、最大でエネルギーの91%をアンモニアで賄うことが可能とされており、化石燃料の使用量を大幅に抑える設計になっています。海運の現場で、実際に「どこまで化石燃料を減らせるか」を示す具体的な数字として、今後の議論の基準にもなりそうです。
内モンゴルの巨大グリーン水素・アンモニアプロジェクト
今回のバンカリングで使用された純アンモニアは、中国北部の内モンゴル自治区にある赤峰市のプロジェクトから供給されています。
この拠点は「世界最大のグリーン水素・アンモニアプロジェクト」とされており、その生産能力は年間152万トンに達します。特徴的なのは、AI(人工知能)を活用した新しい電力システム技術を採用し、100%グリーン電力を直接接続している点です。
つまり、再生可能エネルギーによって生み出された電力をもとに水素とアンモニアを生産し、そのアンモニアがそのまま船舶燃料として使われる構図です。発電から燃料利用までのサプライチェーン全体で、脱炭素を意識した設計になっていると言えます。
なぜアンモニア燃料が注目されるのか
アンモニアは、これまでは主に化学工業での原料として使われてきた物質です。一方で、エネルギー分野でも次のような理由から期待が高まっています。
- 高いエネルギー密度:体積あたりのエネルギー量が比較的高く、長距離輸送が必要な海運と相性が良いとされています。
- 炭素を含まない:アンモニアは炭素を含まないため、完全燃焼した場合には水と窒素だけを排出します。この点が、二酸化炭素削減に向けた燃料として大きな強みです。
- 既存インフラとの接続可能性:液体として貯蔵・輸送できるため、将来的には既存の燃料供給網との組み合わせも模索されると見られます。
今回の世界初のバンカリングは、こうしたアンモニアの特性が、実際に海運の現場でどこまで活用できるのかを試す重要な一歩と位置づけられます。
海運の脱炭素に向けた意味合い
国際物流の主役である海運業界にとって、燃料転換は大きなテーマです。今回の事例は、次のような点で注目されています。
- 港湾運用に使う実務船での実装であり、コンセプト段階を超えた運用に踏み出していること
- 燃料そのものだけでなく、上流のグリーン電力と組み合わせたサプライチェーンを構築していること
- アンモニアエネルギー代替率91%という、具体的な削減ポテンシャルを示したこと
今後、他の港湾や船種への拡大を検討する際の「実例」として、政策立案者や企業にとっても参考になるケースとなりそうです。
これからの論点:インフラ・コスト・ルールづくり
グリーンアンモニア燃料の活用が広がるためには、まだ多くの課題もあります。
- アンモニアを安全に貯蔵・取り扱うための港湾インフラの整備
- 新燃料のコスト負担をどう分担し、ビジネスとして成立させるか
- 国際海運における燃料仕様や環境基準などのルールづくり
今回の中国本土での取り組みは、技術的な可能性だけでなく、こうした実務的な論点を具体的に浮かび上がらせる役割も果たしています。
日本とアジアの読者にとっての示唆
日本を含むアジアの国々にとって、海運と港湾は経済の基盤です。グリーンアンモニア燃料を使った世界初のバンカリングは、地域全体のエネルギー転換や港湾戦略を考えるうえでも無視できないニュースと言えます。
今後、読者の皆さんがニュースや政策議論を見る際には、次の点に注目してみるとよいかもしれません。
- 各国・各地域の港湾が、どのような新燃料インフラを整備していくのか
- 海運企業が、どの燃料を主軸とした脱炭素戦略を描いていくのか
- グリーン水素・アンモニアなどの電力由来燃料と、再生可能エネルギー政策がどう結びついていくのか
今回の中国本土での一歩は、海運の未来をめぐる世界的な競争と協調のなかで、今後の展開を占う重要なサインの一つになりそうです。
Reference(s):
China uses green ammonia to fuel seafaring vessel for first time
cgtn.com








