水筒サイズで巻ける太陽電池翼 中国民間宇宙企業が新技術
ロケットの収納スペースに収まらないほど大型化する衛星。その課題に、中国の民間宇宙企業ギャラクシースペースが「水筒サイズまで巻ける」フレキシブル太陽電池翼で挑もうとしています。
水筒サイズに巻けるフレキシブル太陽電池翼とは
中国・北京に拠点を置く民間衛星メーカーのギャラクシースペースは、従来よりも小さく収納できるロール式の太陽電池翼を発表しました。南西部の都市・宜賓(Yibin)で開かれた2日間の会議でお披露目されたものです。
この新型太陽電池翼は、打ち上げ時には衛星の側面に取り付けたパネルを巻物のように丸めて収納し、軌道上に到達したあとで制御しながらゆっくりと展開します。
同社の最高経営責任者(CEO)である徐鳴(Xu Ming)氏によると、展開時には長さ10メートル超、幅約2メートルと、会議室ほどの20平方メートルの面積になりますが、それでも打ち上げ時には「水筒の直径」程度まで巻き取ることができるといいます。
従来比4倍のエネルギー密度
この太陽電池翼は、すべてがフレキシブル(柔軟)素材で構成されているのが特徴です。同社によれば、同じ面積で発電できる電力量を示す「エネルギー密度」は、従来の硬いパネルの約4倍に達します。
その結果、次のような効果が期待できると説明されています。
- ロケットのフェアリング(先端のカバー)内に収めるための衛星の体積を削減
- 構造を軽量化することで、衛星全体の重量を低減
- 高出力が必要な衛星にも対応しやすくなる
特に、1度の打ち上げで複数の衛星を積み重ねて載せる「スタック打ち上げ」のようなミッションでは、1基あたりの体積と重量をいかに抑えるかが鍵になります。小さく巻けて高出力を出せる太陽電池翼は、こうしたミッションに適した技術といえます。
インターネット衛星コンステレーションへの追い風
ギャラクシースペースは、このロール式太陽電池翼が「インターネット衛星コンステレーション(多数の通信衛星を連携させるネットワーク)」の運用期間延長にもつながると説明しています。電力に余裕があれば、姿勢制御や軌道維持のための運用を長く続けやすくなるためです。
同社はこれまでに、自社設計の衛星を計25基打ち上げてきたとしています。その中には、世界初とする高頻度の低軌道ミリ波衛星や、中国で初めてとされる、フレキシブル太陽電池パネルを備えたフラットな積み重ね可能衛星も含まれます。
「ダイレクト・トゥ・セル」通信の実証
今年2月には、低軌道ブロードバンド通信の試験用コンステレーションを使い、携帯電話網と衛星を直接つなぐ「ダイレクト・トゥ・セル」通信技術のデモンストレーションも行いました。
同社によると、北京に設けたゲートウェイ局(地上局)を経由し、中国の首都・北京とタイにいる担当者との間で通信を確立することに成功したといいます。衛星インターネット技術が、国境をまたぐ通信インフラの一部として機能しうることを示した形です。
年間100〜150基の衛星を生み出す「スマート工場」
衛星本体の製造面でも、ギャラクシースペースは自動化とデジタル化を進めています。中国東部の沿海都市・南通(Nantong)に設けたインテリジェント工場では、中型衛星を年間100〜150基生産できる体制を整えました。
低軌道衛星向けのスマート生産ラインでは、ロボットアームが部品を正確につかみ、組み立てを行います。工場責任者の程鳴(Cheng Ming)氏は、現場を「人と機械の協働」だと表現しています。
程氏によると、組立ロボット、各種のインテリジェント設備、デジタル製造システムにより、重量100キロから2,000キロまで幅広いクラスの衛星について、ほぼ一貫した製造チェーンを構築したといいます。
2018年設立の民間企業が映す国際宇宙ビジネスの現在地
ギャラクシースペースは2018年に設立された、衛星インターネット向けの衛星製造やソリューション提供を手がける民間企業です。北京本社、南通のインテリジェント工場、そして低軌道通信衛星の打ち上げ実績という三つの軸を持つことで、設計から量産、軌道上での実証までを一体的に進めていることがうかがえます。
今回発表された水筒サイズにまで巻けるフレキシブル太陽電池翼は、次のような流れを象徴しているように見えます。
- 衛星の小型化・軽量化と、高出力化を同時に追求する流れ
- 多数の衛星を一度に打ち上げるコンステレーション型ビジネスモデル
- ロボットとデジタル技術を活用した衛星製造の自動化
宇宙開発というと、依然として国家プロジェクトのイメージが強いかもしれません。しかし、今回のような民間企業の技術発表や工場整備の動きは、宇宙ビジネスが通信インフラや製造業の一分野として、より身近な産業になりつつあることを示しています。
ロケットの限られたスペースをどう使い切るか。その工夫から生まれた「巻ける太陽電池翼」は、これからの衛星インターネットや宇宙産業のかたちを考えるうえで、注目しておきたい技術と言えそうです。
Reference(s):
Chinese space firm unveils water bottle-sized rollable solar wing
cgtn.com








