中国の科学者が小麦黄さび病への抵抗性を世界初の遺伝地図で解明
「小麦のがん」とも呼ばれる黄さび病に対する抵抗性を追跡する世界初の遺伝地図を、中国の研究チームが公開しました。収量と品質を大きく下げる病気への対抗策として、より持続的な抵抗性と農薬依存の低減が期待されています。
この記事のポイント
- 中国の研究チームが、小麦黄さび病への抵抗性を追跡する世界初の遺伝地図を作成
- 黄さび病は小麦の収量と粒の品質を大きく下げるカビ由来の病気
- 新しい遺伝地図は、育種家にとって前例のない「遺伝子ナビゲーションツール」となる
- 研究は西北農林科技大学と中国科学院遺伝・発育生物学研究所が共同で主導し、科学誌Nature Geneticsに掲載された
「小麦のがん」と呼ばれる病気に挑む
今回焦点となっている黄さび病は、しばしば「小麦のがん」とも呼ばれるほど被害が深刻な病気です。このカビ由来の病原体に感染すると、穂や葉がむしばまれ、収量が減るだけでなく、収穫された粒の品質も低下してしまいます。
国際ニュースとしても注目されるのは、この病気が農家の収入や、私たちの食卓に並ぶ小麦製品の安定供給に直結するからです。黄さび病への対策は、農業の持続可能性を考えるうえで避けて通れないテーマになっています。
世界初の「遺伝地図」がもたらすもの
中国の科学者たちは今回、黄さび病に対して強い抵抗性を示す小麦と、そうでない小麦とを比べながら、その違いを生み出す遺伝子領域を詳細にたどる遺伝地図を作成しました。黄さび病に対する小麦の抵抗性をここまで体系的に整理した地図は、世界で初めてとされています。
この遺伝地図は、育種家にとって前例のない「遺伝子ナビゲーションツール」と位置づけられています。どの遺伝子を組み合わせれば、より病気に強い品種をつくれるのか。その道筋を具体的に描けるようになることで、これまで時間と労力のかかった品種改良のプロセスが、より戦略的かつ効率的になる可能性があります。
研究を主導した中国のチーム
この研究は、中国の西北農林科技大学(Northwest Agriculture and Forestry University, NWAFU)と、中国科学院遺伝・発育生物学研究所が共同で主導しました。両機関は、小麦の遺伝学や病害抵抗性の研究で蓄積してきた知見を持ち寄り、今回の成果につなげたとされています。
研究成果は、国際的な権威ある科学誌であるNature Geneticsに掲載されました。査読付きの専門誌に論文としてまとめられたことで、世界の研究者や育種プログラムがこの遺伝地図を共有し、活用していくための基盤が整ったといえます。
農薬依存を減らし、抵抗性を長持ちさせるには
今回の遺伝地図は、黄さび病への「より持続的な抵抗性」と「農薬への依存度の低減」をもたらすと期待されています。従来は、病気が出れば農薬で抑える対症療法に頼らざるをえない場面も少なくありませんでした。
しかし、そもそも小麦そのものが病気に強くなれば、病害の発生を事前に抑えやすくなります。これにより、
- 散布する農薬の量を減らせる可能性がある
- 農家のコスト負担や作業負担を軽減できる
- 環境への影響を抑えやすくなる
といった効果が見込まれます。さらに、複数の抵抗性遺伝子を組み合わせる戦略がとりやすくなることで、病原体が変化しても抵抗性が長持ちしやすい品種設計にもつながると考えられます。
これから私たちが注目したいポイント
もちろん、遺伝地図が完成したからといって、すぐに各地の小麦畑が黄さび病から解放されるわけではありません。実際の品種改良や現場への普及には時間がかかります。それでも、病気の弱点を遺伝子レベルで可視化した今回の成果は、今後の対策を根本から変えうる一歩です。
国際ニュースとしてこの動きを追っていくうえで、
- 各国や地域の育種プログラムがどのようにこの遺伝地図を活用していくのか
- 農薬使用量や生産コストに、長期的にどのような変化が現れるのか
- 気候変動など、他のストレス要因との関係も含めた総合的な小麦の強さがどう設計されていくのか
といった点が、今後の注目ポイントになっていきそうです。小麦という身近な作物をめぐる最先端の遺伝子研究は、遠い研究室の話ではなく、日々のパンや麺類の向こう側で進んでいる静かな変化でもあります。
Reference(s):
cgtn.com








