中国とアフリカが湿地を守る理由 COP15ビクトリアフォールズから
2025年12月、ジンバブエのビクトリアフォールズで開催中のラムサール条約第15回締約国会議(COP15)で、世界の湿地保全と中国とアフリカ諸国の協力が大きな注目を集めています。湿地が急速に失われるなか、どのようにして水と食料、生物多様性を守っていくのかが問われています。
ラムサール条約COP15、なぜいま湿地なのか
湿地は、洪水をやわらげ、水を浄化し、漁業や農業を支える「自然のインフラ」です。しかし現在、湿地は世界全体で森林の約3倍の速さで失われているとされ、危機的な状況にあります。
この傾向は、アフリカでも深刻です。多くの湿地が劣化し、そこに依存する地域社会の暮らしや生態系が揺らいでいます。一方で、中国では長年の生態系回復への投資と関連法制の整備により、湿地面積が純増に転じたと報告されています。この経験は、今後の中国とアフリカの協力の重要な土台となっています。
アフリカの湿地が直面する現実
アフリカ大陸では、多くの湿地が人間活動と気候変動の板挟みになっています。現地の専門家たちは、次のような要因を指摘します。
- 急速な都市化に伴い、環境配慮のないインフォーマルな居住地や道路・建物が湿地の上に広がっていること
- 採掘事業による湿地の水の流れの変化と重金属汚染
- 長期化する干ばつや降雨パターンの乱れなど、気候の変動による水量や生態系の変化
- 地方自治体と環境機関の連携不足や法令の実効性の欠如による、無規制の開発
ジンバブエでは、首都ハラレの主要な水源であるチベロ湖で、未処理の流入や、自然の浄化機能を果たす周辺湿地の破壊により、水質悪化が問題になっているといいます。
ハラレ工科大学で環境管理などを担当するアンソニー・フィリ氏は「このまま劣化が続けば、湿地と生物多様性だけでなく、食料と水の安全保障についても取り返しのつかない地点に達するおそれがある」と警告します。
ジンバブエで進む対策と市民の動き
ジンバブエは、ビクトリアフォールズを含む7カ所をラムサール条約湿地として登録しています。現在、政府機関や大学、市民社会が連携し、湿地保全に向けた具体的なアクションを進めています。
環境管理庁(EMA)は、ラジオを通じた啓発キャンペーンや湿地保護区の境界の明示などを行い、無秩序な開発を抑制しようとしています。ハラレ工科大学などの教育機関は、EMAとパートナーシップを組み、人工湿地の建設や一般向けの環境教育プログラムを実施しています。
こうした取り組みには、若者や学生の参加も目立ちます。フィールドでの調査や、地域ごとの啓発イベントを通じて、湿地の重要性を伝える活動が広がっています。
フィリ氏は「地域の人びとと協力しながら実証的な湿地プロジェクトをつくってきた。次の課題は、こうした取り組みを政策とモニタリングの仕組みで支え、スケールアップしていくことだ」と話します。
中国とアフリカの協力が開く可能性
今回のCOP15は、2022年の武漢宣言を土台に、中国とアフリカの代表団が湿地保全に関する共通目標を確認する場にもなっています。会場では、次のようなテーマが重点的に議論されています。
- 技術移転とグリーンインフラ(自然に配慮したインフラ整備)の推進
- 人材育成とトレーニングを通じた能力強化
- 各国の現状に合わせた湿地保全戦略の共同策定
- 国際的な資金メカニズムの強化と新しい財源づくり
国家湿地科学委員会の副主任であり、深圳紅樹林基金会の理事長も務める雷光春氏は「私たちは経験を共有するだけでなく、湿地保全の役割を生物多様性の枠組みにしっかり位置づけ、世界的な合意形成を進めたい」と語ります。
雷氏は、中国では湿地に法的な地位を与える国家法が整備されていることや、公共の監視と説明責任の仕組みによって、湿地が「静かに失われてしまう」ことを防ごうとしていると説明します。こうした制度と市民参加の経験は、アフリカ各国でも応用可能なモデルとして注目されています。
共有された未来に向けたアジェンダ
世界のラムサール指定湿地の面積のうち、約43%がアフリカにあります。アフリカの湿地保全の行方は、地球規模の水と生物多様性の未来に直結しており、中国の政策・法制度・技術の経験がどのように生かされるかが焦点となっています。
専門家たちが描く「共有されたアジェンダ」を整理すると、次のような優先課題が浮かび上がります。
- 都市計画と法執行の強化:湿地上の無秩序な開発を止めるゾーニングと監視
- コミュニティ主導の保全:住民や若者・学生が主体となる監視と再生プロジェクト
- 科学にもとづく管理:人工湿地などの技術実証と長期的なモニタリング
- 中国とアフリカの共同研究・研修:現地ニーズに合わせた技術と制度設計
- 安定した資金基盤:国際基金や民間資金を組み合わせた持続的な投資
湿地の回復には時間がかかりますが、失うのは一瞬です。フィリ氏と雷氏が指摘するように、いま取られる政策判断と協力の枠組みが、将来の水と食料の安全保障を左右します。ビクトリアフォールズで進む議論は、中国とアフリカ、そして世界が「共有された未来」のためにどこまで本気になれるかを映し出す試金石となりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








