中国とEU、貿易・投資拡大で結束 李強首相が協力強化を提案
中国と欧州連合(EU)の経済関係をどこまで深められるのかーー。2025年12月初旬に北京で開かれた中国・EUビジネスリーダーシンポジウムで、中国の李強首相が貿易と投資の拡大を呼びかけ、EU側も「デカップリング(経済の分断)は目指さない」と応じました。保護主義の高まりが懸念されるなか、中国とEUがあらためて協力の重要性を示した形です。
「協力こそ唯一の選択肢」李強首相のメッセージ
李強首相は、人民大会堂で開かれたシンポジウムで約60人の企業トップらを前に、「協力は中国とEUにとって唯一の正しい選択だ」と強調しました。中国とEUの貿易関係は、外交関係樹立から50年の間に強い内在的な活力を示してきたと指摘し、今後も協力を通じて経済のレジリエンス(強じん性)と活力を高めるべきだと述べました。
同首相は、保護主義や一国主義が広がる中で、中国とEUが経済のグローバル化を支え、国際的な産業・サプライチェーンの安定に重要な役割を果たし得ると説明しました。そのためには、自由貿易と多国間主義を守りつつ、経済・貿易協力を一層深める必要があると訴えています。
4つの重点分野:サービス、技術、グリーン、第三国協力
具体的な方向性として、李強首相は中国とEUが次の分野に注力することを提案しました。
- サービス貿易:デジタルサービスや金融サービスなど、新たな成長分野での開放と連携の拡大
- 科学技術イノベーション:研究開発や技術協力を通じた競争力の向上
- グリーン経済:脱炭素や再生可能エネルギーなど、環境配慮型の投資と技術普及
- 第三国協力:第三国・第三地域での共同プロジェクトやインフラ整備への協働
そのうえで、両者が健全な競争と協力の関係を築くことが重要だとしました。単なるライバル関係ではなく、共通の利益を広げる「競争しつつ協調する」関係を目指すべきだというメッセージです。
企業に求められる「オープンな姿勢」
李強首相は、政府間の枠組みだけでなく、企業レベルでの連携の重要性も強調しました。中国とEUの企業が互いにオープンな姿勢を保ち、ニーズを丁寧にすり合わせることで、次のような分野で協力を深められるとしています。
- 産業投資:製造業や先端産業への共同投資
- 市場開拓:双方の市場における販売網の構築やブランド展開
- 共同研究開発:技術や製品の共同開発による新ビジネスの創出
中国側の政策については、「ハイレベルな対外開放」を引き続き進めると表明しました。具体的には、外国投資を制限する「ネガティブリスト」の縮小、知的財産権の保護強化、公平な競争環境の確保などに取り組むと説明しています。
李強首相は「より多くの欧州企業が中国に投資し、長期的な視点で事業を展開することを歓迎する」と述べる一方で、欧州側にも中国企業に対して公正で差別のない投資環境を提供するよう呼びかけました。
EU側のメッセージ:デカップリングは目指さない
シンポジウムには、欧州委員会のフォンデアライエン委員長も出席しました。委員長は、中国が「産業の大国」であるだけでなく、「イノベーション(技術革新)においてもトップクラスの存在」だと評価しました。
EUは、中国との外交関係樹立50周年を、関係を一段と深める機会にしたい考えです。フォンデアライエン委員長は、長期的で安定し、互いに利益をもたらすパートナーシップを強化する方針を示しました。
具体的には、中国と貿易・投資の分野での協力を拡大し、産業・サプライチェーンの安定をともに推進するとともに、意見の違いは適切に管理し、ビジネスに前向きな環境を整えていくと述べました。
さらに、EUとして「中国とのデカップリング(切り離し)を意図していない」と明言し、中国企業の欧州投資も歓迎する姿勢を示しました。この発言は、グローバル経済の分断が懸念される中で、経済面では対話と協力を重視するメッセージと受け止められます。
日本の読者にとってのポイント
今回の中国とEUの発言は、日本を含むアジアの企業や投資家にとっても無関係ではありません。中国とEUが協力を重視する方向性を示したことで、次のような点が注目されます。
- サプライチェーンの安定:二大経済圏が供給網の安定を重視することで、世界全体の不確実性が和らぐ可能性
- 成長分野でのチャンス:サービス、科学技術、グリーン経済といった新分野での国際協力が進めば、新たなビジネス機会が生まれる余地
- ルールと環境づくり:知的財産権の保護や公平な競争条件の整備が進めば、多国間で活動する企業にとって予見性が高まる
もちろん、貿易摩擦や規制をめぐる意見の違いがすぐに解消されるわけではありません。それでも、中国とEU双方が「協力」と「長期的なパートナーシップ」を繰り返し強調したことは、分断よりも対話を選ぶメッセージとして受け止めることができます。
経済の先行きが不透明な今、二大経済圏の動きは世界に連鎖的な影響を及ぼします。今回のシンポジウムで示された方向性が、どこまで具体的な政策や企業の行動につながっていくのか。今後の交渉や協議の行方を、引き続き丁寧に追っていく必要がありそうです。
Reference(s):
China, EU should expand trade, investment ties: Chinese premier
cgtn.com








