中国・EUハイレベル対話 貿易摩擦と気候協力の行方を読む video poster
世界的な地政学リスクと経済の不透明感が強まるなか、中国と欧州連合(EU)が北京でハイレベル対話を行い、貿易摩擦と気候変動協力をめぐる関係の再構築に動き出しました。
2025年7月24日に北京で開かれた中国・EUハイレベル対話(第25回中国・EU首脳会談)は、複雑で揺れ動く国際情勢の中で、双方が誤解を解き、摩擦を管理し、協力を立て直すための重要な機会だったと専門家は見ています。
北京ハイレベル対話:不確実性の時代に残された「対話の窓」
今回の対話は、中国とEUの今後の関係の進路を描き直すうえで「節目」となりました。地政学的な緊張が高まり、世界経済にも負担がかかるなか、両者の関係を安定させることは、自らの利益だけでなく、より広い国際社会の安定にも直結するからです。
会談では、貿易や投資のほか、気候変動といった地球規模の課題が議題となりました。中国側指導部は、中国・EUの協力が世界により多くの安定と確実性をもたらすべきだと呼びかけ、中国の首相も「中国・EU関係の基調は協力であるべきだ」と強調したと報じられています。
貿易と信頼が中国・EU関係の中核に
今回のハイレベル対話では、とりわけ貿易問題が大きなテーマになりました。専門家は、中国とEUが依然として深く経済的に相互依存している一方で、その貿易が現在の緊張の主な出発点にもなっていると指摘します。
中国社会科学院ヨーロッパ研究所の馮仲平(Feng Zhongping)所長は、経済・貿易分野こそが中国・EU関係における主な摩擦要因であると同時に、摩擦を管理するための重要なチャンネルでもあると述べました。さらに、対外的な圧力、特に米国など第三国からの圧力が強まるなかでこそ、貿易は中国・EU関係の「内なる原動力」であり続けていると強調しています。
馮氏は、さまざまな問題が顕在化しているからといって、貿易の重要性が低下したわけではないと指摘します。むしろ、多くの協力事例やデータが、中国とEUの経済関係が依然として強固であることを示しているといいます。そのうえで、双方が「協力したい」という意思を実際の共同行動に変えていくためには、相互信頼の強化が不可欠だとし、これは長期的なプロセスになると見ています。
一方で馮氏は、欧州委員会のフォンデアライエン委員長が首脳会談前に公表した対中制裁や強い言葉による圧力は、問題解決にはあまり役立たないと指摘しました。圧力よりも対話と信頼醸成のほうが、摩擦の管理に有効だという見立てです。
中国欧州商会(China Chamber of Commerce to the EU)の劉建東(Liu Jiandong)会長も、「相互利益こそ土台だ」と強調します。劉氏によれば、欧州で事業を展開する中国企業の8割以上が、EUを競争相手ではなく「長期的なパートナー」と見ているといいます。企業レベルでは、協力を軸にした関係を望む声が根強いことがうかがえます。
「協力の意思」を「行動」へとつなぐために
では、どうすれば中国とEUは、理念としての「協力」を、具体的な政策やプロジェクトに落とし込めるのでしょうか。馮氏が指摘するように、鍵となるのは時間をかけた信頼づくりです。
- 予見可能で一貫した政策ルールを示すこと
- 安全保障と経済を切り離した冷静な対話の場を維持すること
- 第三国の圧力に振り回されず、双方の利益を基準に判断すること
こうした条件が整って初めて、相互依存をリスクではなく「安定の土台」として活用できるようになります。
気候変動協力:グリーンが中国・EU協力の「基調色」に
今回の首脳会談で最も高く評価された成果の一つが、気候変動に関する共同声明です。この声明では、世界情勢が不安定さを増すなかでも、中国とEUが気候行動の加速にコミットし、気候政策の一貫性と安定性を維持することを改めて確認しました。
声明は、中国・EUの「グリーン・パートナーシップ」が両者の包括的パートナーシップの重要な柱であり、「グリーンこそが中国・EU協力の基調色である」と位置づけています。再生可能エネルギー、脱炭素技術、産業のグリーン転換などの分野で、すでに幅広い協力の土台があり、今後も大きな可能性があると強調しました。
アイルランドの元大統領で、気候外交の分野で知られるメアリー・ロビンソン氏は、欧州メディアのインタビューで「今この瞬間、EUと中国は好機を逃してはならない」と語り、中国・EUの気候協力は市場の安定化やクリーンエネルギー移行の加速につながり、分断が強まる時代においてもレジリエンス(回復力)を高める最も確かな道の一つだと評価しました。
米シンクタンク、世界資源研究所(World Resources Institute)のデービッド・ワスコウ氏も、「中国とEUという二大排出国が、地政学的な緊張を超えて気候協力を進めるというシグナルは極めて重要だ」と指摘します。米国がパリ協定から再び離脱したあと、こうしたリーダーシップが世界の気候行動の勢いを再び取り戻すうえで欠かせないと述べています。
グローバル・サウスへのメッセージ
北京語言大学「一帯一路」研究院の董一凡(Dong Yifan)研究員は、この共同声明は世界の気候ガバナンス、とりわけグローバル・サウスにとって大きな追い風になると見ています。グローバル・サウスとは、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの新興国・途上国を広く指す言葉です。
董氏によれば、現状では各国の気候変動対策の貢献度は依然として不十分であり、歴史的な排出責任と現在の負担のバランスにも課題が残っています。そうしたなかで、中国とEUが協力して気候変動という「地球規模の公共財」を守る姿勢を打ち出したことは、米国が残した空白を部分的に埋めるものだと指摘します。
資金や技術支援を必要とする多くの国にとって、二大経済圏である中国とEUの連携は、自国のエネルギー転換や気候適応策を進めるうえでの重要な後ろ盾になり得ます。
私たちは中国・EU関係をどう捉えるべきか
北京でのハイレベル対話と気候共同声明は、中国とEUの関係が「対立か協力か」という二者択一では語れない段階にあることを示しています。摩擦は確かに存在しますが、それでも協力の余地と必要性は大きいままです。
ニュースを読む際、次のような視点を持つと、中国・EU関係の変化が少し立体的に見えてきます。
- 対立と協力の同居を前提にする – 貿易摩擦があっても、経済の相互依存や共通の利益は消えていないことに注目する。
- 気候変動を「政治」と切り離さない – 気候協力は環境問題にとどまらず、市場の安定やエネルギー安全保障とも絡む戦略課題であることを意識する。
- 長期的な信頼づくりとして見る – 一度の首脳会談ですべてが解決するわけではなく、継続的な対話とルールづくりが必要だと理解する。
2025年7月の北京での中国・EUハイレベル対話から数カ月がたちましたが、その意味は今も色あせていません。貿易をめぐる緊張を管理しつつ、気候変動という共通の課題で連携を深められるかどうかは、今後の世界秩序と国際協調のあり方を左右するテーマの一つになりそうです。
日本を含むアジアの読者にとっても、この動きは決して他人事ではありません。中国とEUがどのように「対立を管理し、協力を拡大していくか」を追いかけることは、自国の外交や経済戦略、そして気候変動対策を考えるうえでのヒントになるはずです。
Reference(s):
Experts: Candid China-EU talks vital amid global uncertainties
cgtn.com







