WWFが評価 中国の湿地都市戦略とスポンジシティーの可能性
中国が都市計画に湿地を積極的に組み込む取り組みが、持続可能な都市づくりのモデルとして国際ニュースで注目を集めています。世界自然保護基金(WWF)の幹部は、中国の事例は未来の都市像を具体的に示していると評価しました。
ジンバブエで開かれた湿地条約COP15
今年7月31日まで、ジンバブエの観光地ビクトリアフォールズで湿地に関する国際会議「ラムサール条約第15回締約国会議(COP15)」が開催されました。各国・地域の政府代表が集まり、湿地保全と気候変動への適応について議論しました。
会議のテーマは「私たちの共通の未来のために湿地を守ること」。湿地が生物多様性や気候レジリエンス(気候への適応力)、水資源の安定に果たす役割をあらためて確認する場となりました。
WWFコルビン氏「中国は湿地都市づくりで先頭を走っている」
会期中の土曜日、新華社のインタビューに応じたのは、WWFで淡水政策を担当するクリスティーン・コルビン氏です。コルビン氏は、中国が都市の中に湿地を組み込みつつ開発を進めている点を高く評価しました。
とくに注目したのは、COP15の場で9つの中国の都市が国際湿地都市として認証されたことです。コルビン氏は、こうした認証は単なる称号ではなく、都市が湿地の保全と賢明な利用に本気で取り組んでいる証しだと語りました。
コルビン氏は、中国がスポンジシティーの考え方で先頭を走っていると指摘します。都市を硬いコンクリートで覆い尽くすのではなく、水を吸収し、にじみ出させるスポンジのような仕組みを持たせることで、自然の水循環を取り戻そうとしているという説明です。
スポンジシティーとは何か
スポンジシティーは、雨水を一気に排水するのではなく、公園や湿地、透水性の舗装などを通じて一時的にため、ゆっくりと地中や河川へ戻していく都市の設計思想です。
- 豪雨時の浸水・洪水リスクを減らす
- 地下水を涵養し、水不足を和らげる
- 水辺の生態系を守り、生物多様性を高める
コルビン氏は、中国がこうした自然に学ぶ都市設計を実際のプロジェクトに落とし込み、世界の市長や自治体に対して「どうすれば都市に自然を取り戻せるか」を示していると強調しました。
湿地はなぜ都市と気候の鍵になるのか
都市開発は経済成長のエンジンである一方で、湿地を埋め立て、河川を直線化し、水辺を失わせてきました。コルビン氏は、都市開発が湿地の犠牲の上に成り立ってはならないと強く訴えています。
湿地は、豪雨時には水をため、乾燥期には水をゆっくり放出する天然の調整装置です。また、有機物や栄養塩を吸収し、水質を浄化する機能も持っています。このため、湿地の保全は、気候変動への適応だけでなく、水の安全保障にも直結します。
食料・水・気候への連鎖的な影響
一方で、湿地や周辺の景観が劣化し、湿地そのものが崩壊していけば、食料安全保障や水の安定供給、気候の安定性に深刻な影響が出るとコルビン氏は警鐘を鳴らします。
- 湿地の消失は、魚介類や水鳥など、水辺に依存する生物資源の減少につながる
- 水をためる場所が減れば、渇水と洪水の両方のリスクが高まる
- 湿地の劣化は、気候を安定させる自然の緩衝機能を弱める
こうしたリスクを避けるためにも、都市の成長と湿地の保全を対立させるのではなく、両立させる発想が不可欠だというメッセージです。
次の10年を見据える湿地条約の戦略
コルビン氏は、COP15はラムサール条約の次の10年の方向性を決めるうえで重要な会議だったと振り返ります。各締約国がどのような目標を共有し、どのような行動計画を持つのか。その土台を形づくる場だったからです。
特に強調されたのは、国際協力の優先順位を高めることでした。湿地は国境を越えてつながっており、ある国や地域の対応が、別の国や地域の水環境や気候リスクに影響を及ぼします。そのため、一国だけで完結する対策ではなく、情報共有や資金支援、技術協力が欠かせないという考え方です。
日本とアジアの都市への示唆
今回の国際ニュースは、中国の事例を通じて、アジアの都市が直面する課題と可能性を示しています。近年、各地で豪雨や洪水への不安が高まるなか、都市を水から守るのではなく、水と共に暮らす視点が求められています。
コルビン氏が指摘するように、中国の取り組みは、他の都市にとっても具体的なヒントになり得ます。
- 都市計画の初期段階から湿地や水辺空間を前提条件として組み込む
- 自然を活用したネイチャーベースの解決策をインフラ整備と組み合わせる
- 国際会議やネットワークを通じて、成功例と教訓を共有する
こうした発想は、日本を含むアジアの多くの都市にとっても現実的な選択肢となりつつあります。
読み手としての私たちにできること
湿地や水辺というと、日常生活からは少し遠い存在に感じられるかもしれません。しかし、蛇口をひねれば水が出る暮らしも、スーパーに並ぶ食料も、その背景には健全な水循環と湿地の存在があります。
都市開発と自然保全をどう両立させるかは、これからの10年を左右する大きな問いです。中国の湿地都市づくりをめぐる議論は、その問いに対する一つの具体的な答えとして、今後も日本語で届ける国際ニュースの重要なテーマになっていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








