健康はウィンウィンな国際公共財 ボアオ健康フォーラムが投げかけた問い video poster
健康は「勝ち負け」ではなく、世界がともに得をする「ウィンウィンの公共財」です――そんなメッセージが、今月北京で開かれたボアオ・フォーラム・フォー・アジアのグローバルヘルスフォーラムで語られました。本記事では、米疾病対策センター(CDC)元ディレクターで、現在Resolve to Save Lives代表兼CEOのトム・フリーデン医師の発言を手がかりに、国際ニュースとしてのグローバルヘルスの意味を整理します。
「健康はウィンウィン」 国境を越える公共財という視点
フリーデン医師は、中国国際テレビ(CGTN)の単独インタビューで、次のように強調しました。
「健康は勝ち負けの問題ではありません。健康はウィンウィンの問題です。他の国々がより健康になれば、私たち全員にとってプラスになります。」
この言葉が示しているのは、健康や公衆衛生を「誰かの得は誰かの損」というゼロサムゲームではなく、すべての国が同時に利益を得られる分野としてとらえる発想です。ある国で感染症が抑え込まれ、医療体制が強化されれば、その国だけでなく世界全体のリスクが下がります。
ポリオ根絶の瀬戸際で問われる国際的コミットメント
インタビューの中でフリーデン医師は、ポリオ(小児まひ)根絶の取り組みについて強い懸念も示しました。
「私たちはポリオ根絶に非常に近いところまで来ました。ところが今、米国がその努力から『じゅうたんを引き抜く』おそれがあり、ポリオが再び猛威を振るう可能性があります。」
さらに、現在の米国について「公衆衛生が攻撃にさらされている」とも述べ、国際的な約束や資金支援が揺らぐことへの危機感をあらわにしました。ポリオのような感染症の制圧は、一国だけでは完結しません。途中で主要なプレーヤーが支援を弱めれば、長年の成果が一気に失われるリスクがあります。
- 根絶に「ほぼ到達」しているとされるポリオ
- しかし、支援の縮小次第では再流行もありうる
- 国際ニュースとしての公衆衛生は、各国の政治的決定に左右されやすい
中国の医療の進歩と「基礎的ケア」への投資
一方でフリーデン医師は、中国の医療分野の進展について高く評価しました。医療研究、技術革新、病院ケアのレベルを「印象的」「世界クラス」と表現し、アジアのなかでも重要な存在になっていると指摘しました。
同時に、真の意味で公衆衛生を前進させる鍵は、地域の診療所や家庭医など「基礎的なヘルスケア(エッセンシャルケア)」への投資にあると強調しています。こうした日常の医療サービスや予防的な取り組みこそ、最も費用対効果が高く、多くの命を救う手段になるという見方です。
- 高度な病院医療や研究は重要だが、
- 住民に身近な「基礎的ケア」にこそ投資の余地が大きい
- 少ないコストで最大の健康効果を生むのが公衆衛生投資の特徴
地政学的緊張の中でも「協力は不可欠」
世界では、地政学的な対立や経済安全保障をめぐる緊張が続いています。しかしフリーデン医師は、そうした状況の中でも、健康分野での協力は「可能なだけでなく、不可欠だ」と述べました。
対立があるからこそ、感染症対策や医療制度の強化といった人々の生命に直結する領域では、対話と協力のチャンネルを開いておく必要があります。公衆衛生の課題は国境を越えて波及するため、どこか一つの地域だけで完結する「安全」は存在しません。
NGOと市民同士の交流がつくる「緩衝地帯」
フリーデン医師が特に期待を寄せたのが、非政府組織(NGO)などによる人と人との交流です。政府間関係がぎくしゃくしているときでも、専門家同士の連携や市民レベルの対話は、緊張を和らげる「緩衝地帯」となりえます。
国際ニュースで語られる大国間の関係だけでなく、医師、研究者、市民が国境を越えて経験や知識を共有することで、より現場に根ざした協力の形が生まれます。こうした積み重ねが、結果として世界全体の安全保障にもつながるという視点は、今後ますます重要になりそうです。
読者への問いかけ:健康をめぐる「ウィンウィン」をどう実現するか
北京で開かれたグローバルヘルスフォーラムのテーマは「イノベーションが牽引する健康産業の新たな未来」でした。技術革新が進む一方で、フリーデン医師のメッセージは、あくまで人の命と暮らしに近いところへの投資を忘れてはならないというものです。
健康は、どこか一つの国だけが守ればよいものではありません。他国の医療と公衆衛生が充実することが、自国の安全にも直結します。この「ウィンウィン」の発想を前提にしたとき、私たちはどのように国際協力を支え、どのような形でグローバルヘルスに関わることができるのか――。
ニュースとしての事実を追うだけでなく、こうした問いを自分ごととして考えることが、これからの時代の「国際ニュースの読み方」といえるのかもしれません。
Reference(s):
Health Talk: Health is a win-win cause, global cooperation essential
cgtn.com








