中国が世界初のAI宇宙天気予測モデル「FengYu」を公開
中国は上海で開かれた2025年世界人工知能大会(World Artificial Intelligence Conference、WAIC)の気象関連イベントで、宇宙天気を予測する世界初のフルチェーンAIモデル「FengYu(風雨)」を公開しました。太陽嵐が衛星通信やナビゲーション、重要インフラに与える影響を、より正確かつ素早く把握することがねらいです。
宇宙天気を読むAIモデル「FengYu」とは
今回発表された「FengYu」は、宇宙空間の環境変化、いわゆる「宇宙天気」を予測するためのAIモデルです。中国側は、太陽風から地球周辺の磁気圏、さらに電離圏までを一貫してカバーする「世界初のフルチェーンAI宇宙天気予測モデル」と位置づけています。
研究開発を主導したのは、中国気象局の国家衛星気象センターです。同センターの王京松(ワン・ジンソン)センター長によると、「FengYu」は複数の大型AIモデルを組み合わせ、それぞれが太陽風、磁気圏、電離圏といった異なる空間領域を担当する構造になっています。
フルチェーンと「プラグイン」構造が鍵
王氏は、「FengYu」の特徴として、フルチェーン予測と柔軟なアーキテクチャ(設計)を挙げています。
- フルチェーン予測:太陽から放出される太陽風が地球の磁気圏に到達し、電離圏に影響を与えるまでの一連のプロセスを、つながった一つの予測チェーンとして扱います。
- プラグイン型アーキテクチャ:各空間領域を担当するAIモデルは「プラグイン」のように差し替え可能で、将来のニーズに応じて更新や追加ができる設計だと説明しています。
- マルチスケールの知能的結合:異なる領域・異なる時間スケールのモデルを「知能的に結合」することに世界で初めて成功したとし、これにより宇宙天気の振る舞いをより一体的にとらえられるとしています。
- 国産AIプラットフォーム上で構築:「FengYu」はすべて国内のAIプラットフォーム上で構築されており、今後の国内AI開発にも資するとしています。
宇宙天気と私たちの生活のつながり
宇宙空間の環境変化は、一見すると日常生活から遠い話に聞こえます。しかし、太陽活動が活発化した際に発生する太陽嵐(ソーラーストーム)は、地球周辺の磁場や電離圏に影響を与え、衛星通信や測位システム、地上の重要インフラにトラブルを引き起こすおそれがあります。
今回のAI宇宙天気予測モデル「FengYu」は、こうした太陽嵐の影響を事前に把握し、衛星通信やナビゲーション、各国の重要インフラを守るための判断材料を提供することを目指しています。宇宙天気予報の精度やスピードが向上すれば、航空・海運・防災など幅広い分野でリスク管理の質が変わってくる可能性があります。
AIと気象の融合がもたらすもの
王氏は、「FengYu」の開発を通じて、AI技術が宇宙天気という高度な科学分野に本格的に取り入れられたことの意味を強調しています。従来の数値予報モデルが抱えていた計算コストや精度向上の限界を、AIによって乗り越えることを目指したといいます。
同モデルは、宇宙天気の分野だけでなく、今後の気象分野や科学技術分野でのAI活用にも波及効果をもたらす可能性があります。気象データや衛星観測データとAIを組み合わせる取り組みは各国で進んでおり、「FengYu」はその一つの到達点として注目されます。
今後の焦点:精度向上と国際的な活用
「FengYu」は、プラグイン型の構造を持つことで、将来的なモデルの改良や観測データの追加にも柔軟に対応できるとされています。今後は、
- 予測精度の検証と継続的なアップデート
- 衛星通信・ナビゲーション事業者やインフラ管理者との連携
- 国際的な宇宙天気監視ネットワークとの協調
といった点が焦点になっていくとみられます。
宇宙空間の環境変化を「見通す力」をAIがどこまで高められるのか。中国が打ち出したフルチェーンAI宇宙天気予測モデル「FengYu」の動向は、今後の国際ニュースとしても追いかける価値がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








