アムールトラと人の共存へ 中露共同ラボが行動規範を公表
中国東北部でアムールトラと人との共存をめざす新たな一歩が、国際ニュースとして注目されています。中国の東北林業大学に設置された中露共同のアムールトラ保全研究ラボが、「人とトラの衝突」を減らすための行動規範を発表し、回復しつつあるトラの個体群と地域社会の調和ある共存をめざしています。
この行動規範は、2025年7月に迎えた第15回「国際トラの日」(International Tiger Day)のタイミングに合わせて公表されました。科学的な知見にもとづき、人の安全と野生動物保護の両立を図る指針として位置づけられています。
中露共同ラボが示した「人とトラのルール」
行動規範をまとめたのは、中国の東北林業大学にある「アムールトラ(シベリアトラ)保全のための中露共同研究ラボ」です。ロシアと中国の研究者が協力し、アムールトラの生態や移動、保全策を長期的に研究してきました。
今回の行動規範は、とくに中国東北部で増えつつあるアムールトラと人との接触に焦点を当て、「人とトラの衝突(ヒューマン・タイガー・コンフリクト)」を科学的に減らすことをめざしています。
アムールトラと人の「衝突」とは何か
アムールトラは、アジアでもっとも大きなネコ科動物の一つで、中国東北部の森林地帯などに生息しています。かつては個体数の減少が大きな課題でしたが、保全の取り組みによって個体群は回復傾向にあるとされます。
その一方で、一般的に大型肉食動物の回復は、人の生活圏との距離が近づくことを意味します。家畜が襲われるおそれや、人がトラと遭遇するリスクへの不安など、「人と野生動物の衝突」は多くの地域で共通する課題です。
科学的な行動規範が果たす役割
今回の行動規範は、こうした衝突をできるだけ避けつつ、アムールトラの保全を進めるための「科学的なガイド」と位置づけられています。地域住民や行政、レンジャー(保護員)などが、共通のルールにもとづいて動けるようにするねらいがあります。
この種の行動指針には、一般的に次のような内容が盛り込まれることが多いです。
- トラを見かけたときに、むやみに近づかず落ち着いて行動するための基本ルール
- 家畜や農作物を守るための予防的な対策や、危険が高い場所・時間帯に関する注意点
- トラの足跡や姿を確認した際の連絡先や通報手順など、情報共有の仕組み
- 研究データにもとづき、どのエリアでどのような行動に注意すべきかを示す地域別の助言
こうしたルールを共有することで、過度な恐怖や誤解にもとづく排除ではなく、リスクを理解したうえでの共存をめざすことができます。
中国東北部でめざす「調和のとれた共存」
中露共同ラボの行動規範は、回復しつつあるアムールトラの個体群と、中国東北部に暮らす人びとの「調和のとれた共存」を掲げています。急速な開発と、生物多様性の保全をどう両立させるかという課題に対する、一つの具体的な回答ともいえます。
とくに、科学的なデータにもとづいた指針を先に示すことで、地域社会の不安を軽減しつつ、アムールトラ保護への理解と協力を広げる効果が期待されます。
中露協力が持つ国際的な意味
アムールトラは国境をまたいで移動する可能性のある野生動物であり、その保全には国際的な協力が欠かせません。中露共同研究ラボによる今回の行動規範は、国境を越えた科学協力が、地域の具体的なルールづくりにもつながりうることを示しています。
国際トラの日に合わせてこうした指針が公表されたことは、トラ保全をめぐる世界的な議論に、中国東北部からの経験や知見を共有していく狙いも読み取れます。
日本の読者への問いかけ——大型野生動物とどう向き合うか
日本でも、クマやイノシシなど野生動物との距離の取り方が、近年大きな社会問題になっています。アムールトラとは生息する動物が違っても、「人と野生動物の衝突」をどう減らし、共存のルールをどう作るかという点では共通する課題です。
中国東北部で進むアムールトラとの共存の試みは、日本を含むアジア各地にとっても多くの示唆を与えてくれます。科学的なデータと地域住民の知恵を組み合わせながら、「恐れる」か「排除する」かだけではない第三の道をどう描くのか。国際ニュースとしてのフォローとともに、私たち自身の足元の問題として考えてみる価値がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








