中国の国家公園改革から10年 生物多様性回復と統合管理のいま
約10年前に始まった中国の国家公園制度の改革が、生物多様性の回復と生態系の安定という形で成果を上げつつあります。中国国家林草局によると、代表的な野生生物の個体数が回復し、自然環境全体の安定性も高まっているとされています。
国家公園改革から10年、生物多様性はどう変わったか
国際ニュースとしても注目される中国の国家公園改革は、広大な国土を対象にした長期の制度づくりです。国家林草局は、改革開始から約10年の時点で、いわゆる「フラッグシップ種」と呼ばれる象徴的な野生生物の個体群が回復しつつあり、生態系全体のバランスも改善していると説明しています。
具体的な種名や数値は公表されていませんが、生物多様性の観点からは、代表的な大型動物や希少種の回復は、その背後にある森林や湿地、草地などの環境が総合的に改善しているサインとみることができます。
「単一保護」から「統合管理」へ
木曜日に開かれた記者会見で、中国国家林草局の担当者であるSun Hongyan氏は、国家公園制度の考え方が大きく変わってきたと説明しました。従来は特定の動物や森林といった単一の対象を守る「単一要素の保護」が中心でしたが、現在は次のような要素をまとめて見ていく「統合管理」へとシフトしているといいます。
- 山地(山)
- 河川や湿地などの水域(水)
- 森林
- 農地(農耕地)
- 湖
- 草原
- 砂漠地帯
これらを一体として管理することで、国家公園を「点」ではなく「面」として守り、さらに流域や生態系のつながり全体を見渡しながら保全と利用のバランスを取ろうとしているのが特徴です。
なぜ統合管理が生物多様性に効くのか
生物多様性の保全では、特定の動物だけを守るのでは不十分だといわれます。なぜなら、野生生物は広い範囲を移動し、森林、水辺、草原など複数の環境にまたがって暮らしているからです。
中国が進める統合管理は、次のような点で生物多様性の回復を後押ししていると考えられます。
- 生息地のつながりを確保:山から川、湖、草地へと続く環境をまとめて守ることで、動物たちが移動しやすくなり、遺伝的な多様性が保たれやすくなります。
- 水と土壌をセットで保全:森林や草原を守ることは、土砂流出を防ぎ、河川や湖の水質保全にもつながります。結果として、水生生物や湿地の生態系も守られます。
- 農地との共存:国家公園の周辺では農地も重要な土地利用です。農地も含めて管理することで、農業と自然保護の両立をめざすことができます。
こうしたアプローチは、生物多様性だけでなく、洪水や干ばつといった自然災害への耐性(レジリエンス)を高めるうえでも意味を持ちます。
中国の国家公園改革が示すもの
中国の国家公園制度は、国土全体を視野に入れた大規模な自然保護の試みとして、国際ニュースや環境政策の議論でも注目を集めています。山や水、森林から草原、砂漠までを統合して管理するという発想は、気候変動対策とも結びつきやすい考え方です。
日本を含むアジア諸国にとっても、次のような点で示唆がありそうです。
- 複数の省庁や自治体に分かれがちな自然保護を、どうやって一体的に進めるか
- 地元住民や地域社会の暮らしと自然保護を、どのような制度設計で両立させるか
- 国立公園や保護区のネットワークを、国境を越えてどう連携させていくか
中国の国家公園改革は、それぞれの国や地域が自分たちの現状に合わせて自然保護をアップデートしていくための一つの参考事例になり得ます。
これからの注目ポイント
生物多様性や環境政策に関心のある読者にとって、今後注目したいのは次のようなポイントです。
- 国家公園の統合管理が、長期的にどの程度生物多様性の回復につながるのか
- 地域住民の雇用や暮らしと、自然保護をどう両立させていくのか
- 蓄積されるデータや経験が、他の国や地域とどのように共有されるのか
約10年という時間軸で見ると、政策の方向性と初期の成果が見え始める段階です。これから先の10年で、生物多様性の回復や気候変動対策とどのように結びついていくのか。中国の国家公園改革は、アジアと世界の環境ガバナンスを考えるうえでも注視しておきたいテーマだといえるでしょう。
Reference(s):
China's national park reforms drive steady gains in biodiversity
cgtn.com








