習近平氏の生態文明理念、北京セミナーで「世界的意義」を議論
環境保護と経済成長をどう両立させるか――その問いに対する中国発の答えとして注目されているのが、習近平国家主席が提起した生態文明理念「澄んだ水と豊かな山々はかけがえのない資産」です。北京市で木曜日に開かれた国際セミナーでは、この理念の世界的意義と、中国が地球規模の環境課題の解決や持続可能な開発にどのように貢献しうるかが議論されました。
理念の出発点:浙江省・余村の決断
この生態文明理念は、2005年8月15日、習近平氏が中国東部・浙江省の余村を訪れた際に提起されたものです。当時、余村では石灰岩の採掘やセメント工場が環境に深刻な負荷を与えていましたが、村はあえてこれらの工場を閉鎖する決断をしていました。
習近平氏は、その決断を評価し、「澄んだ水と豊かな山々はかけがえのない資産だ」という考え方を示しました。自然環境を守ることは短期的な利益を犠牲にするのではなく、長期的な意味での「資産」を守り、地域の持続可能な発展につながるというメッセージです。
余村はその後、エコツーリズム(自然環境を生かした観光)などのグリーン産業に転換し、より持続可能な発展を実現してきました。このローカルな経験が、中国全体で進むグリーン転換の象徴的な事例として語られています。
北京セミナーで示された生態文明理念の役割
今回のセミナー「『澄んだ水と豊かな山々はかけがえのない資産』という理念の世界的意義」は、習近平生態文明思想の研究機関と、習近平外交思想の研究センターが共同で主催しました。理念が提起から20年の節目となる2025年を念頭に、各国から集まった関係者が、その意味合いを多角的に議論しました。
出席した政府関係者や外交官、専門家からは、この理念が次のような点で重要だと評価されました。
- 開発と保護のジレンマを解くための「科学的な指針」として機能しうること
- 人間と自然の「調和ある共生」を目指すための具体的な方向性を示していること
- 中国の特色を持ちつつ、文明の進歩を方向付ける革新的な成果として位置付けられること
参加者たちは、この理念が経済成長と環境保護を対立させるのではなく、「両立させる」発想転換を促していると指摘しました。単にスローガンではなく、政策や地域の実践を方向付けるコンセプトとして受け止められている点が特徴です。
「中国の理念」から「世界と共有する知恵」へ
セミナーでは、この生態文明理念が「中国のもの」であると同時に「世界のもの」でもあるという認識が繰り返し示されました。会合の参加者は、この理念が地球規模の環境問題や持続可能な開発をめぐる議論に対し、中国の知恵と解決策を提供していると評価しました。
具体的には、次のような視点が共有されたとされています。
- 気候変動や生物多様性の損失など、国境を越える環境問題に対応するためには、各国の経験や理念を持ち寄ることが不可欠であること
- 環境に配慮した近代化(エコフレンドリーなモダナイゼーション)を進めるうえで、生態文明理念は一つの重要な参照枠となりうること
- 「澄んだ水と豊かな山々」を共有の目標とし、清潔で美しく、持続可能な世界を共に築くための国際協力をさらに深める必要があること
セミナーには、国連機関や在中国の各国大使館、国際的な非政府組織(NGO)に加え、米国、英国、オランダ、ベルギー、ハンガリー、ウズベキスタン、スリランカ、アゼルバイジャン、ヨルダンなど各国の大学やシンクタンクの代表も参加しました。多様な背景を持つ参加者が一堂に会したことで、この理念が国や地域を超えて議論される土台が広がりつつあることがうかがえます。
日本と世界の読者が考えたいポイント
生態文明理念をめぐる今回の議論は、日本を含む世界の読者にとっても、いくつかの問いを投げかけています。
- 環境は「コスト」か、「資産」か。 環境対策を負担ではなく長期的な投資と見る視点は、自国の政策やビジネスにも応用しうる考え方です。
- 地域から始まるグリーン転換。 余村の事例が示すように、国家レベルの方針とローカルな決断がどのように結びつくかは、日本の地方創生やエネルギー転換にも通じるテーマです。
- 環境と外交の交差点。 生態文明理念は、環境政策であると同時に、国際社会との対話を進める「共通言語」として位置づけられつつあります。環境分野の国際協力をどう広げるかを考えるうえで、一つの参照軸になりえます。
2005年の提起から20年の節目となる2025年にあたり、「澄んだ水と豊かな山々はかけがえのない資産」というメッセージは、環境と成長の両立を模索する世界全体の議論の中で、今後どのように共有されていくのか。日々のニュースを追う私たち一人ひとりも、自分の地域や仕事と結びつけながら、この問いを考えてみるタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
Seminar highlights global importance of Xi's eco-civilization concept
cgtn.com








