中国工学アカデミーがAI重要技術リスト公開 6Gと大規模モデルなど300件
中国のChinese Academy of Engineering(CAE)は木曜日、今後5〜10年の人工知能(AI)開発の「ホットスポット」になると見込む次世代情報工学・AI技術のリストを公表しました。約300の重要技術を一挙に示したこの発表は、国際ニュースとしても中国のAI戦略の方向性をうかがう手がかりになります。
約300のAI関連技術を3つの分野に整理
CAEが公表したリストは、次世代の情報工学と新興AI技術を対象とし、合計でほぼ300件の技術が選ばれています。内容は大きく次の3カテゴリーに分かれます。
- 情報工学のイノベーション:163の技術
- 伝統産業の変革と学際的な統合:122の新興技術
- 日常生活に密接に関連するAIホットスポット:12の技術
CAEによると、これらは今後5〜10年の間に特に注目度が高まると見込まれる分野です。
1. 情報工学のイノベーション:6G、マルチモーダル大規模モデルなど163件
最初のカテゴリーには、次世代の情報基盤となる163の技術が含まれています。代表的な例として挙げられているのが、6G通信、マルチモーダル大規模AIモデル、そして「スーパー汎用エージェント」です。
6G通信は、現在普及が進む5Gのさらに先を行く通信技術で、超高速・低遅延のネットワーク環境を目指すものです。マルチモーダル大規模AIモデルは、テキストや画像、音声など複数の形式のデータをまとめて理解・生成できるタイプのAIで、生成AIの次のステージを支える基盤技術と位置づけられています。
スーパー汎用エージェントは、特定の用途に限られない「何でも屋」のようなAIエージェントを指し、状況に応じて自律的に判断し、複数のタスクをこなせる存在として期待されています。
2. 産業変革と学際融合:計算神経科学やAI創薬を含む122技術
二つ目のカテゴリーは、伝統的な産業の高度化や異なる分野の融合をねらう122の新興技術です。ここでは、計算神経科学、スマートウェアラブル、AIを活用した創薬支援(AIアシストの薬剤設計)などが挙げられています。
計算神経科学は、脳や神経系の働きを数理モデルやコンピューターシミュレーションで解き明かそうとする分野で、AIの原理の理解にも直結します。スマートウェアラブルは、身体データを常時取得し健康管理や働き方の改善に生かすデバイスで、AIによる解析が前提になりつつあります。
AI支援の薬剤設計は、新薬候補の探索や副作用の予測をAIが助けることで、研究開発のスピードと効率を大きく高める可能性があります。CAEは、こうした技術群が「生産性革命」を引き起こし得ると位置づけています。
3. 生活に近い12のAIホットスポット:無人システムとエンボディドAI
三つ目のカテゴリーは、日常生活と直接関係する12のAIホットスポットです。ここには、大規模AIモデル技術に加え、インテリジェント無人システムや「エンボディド・インテリジェンス(身体性を持つ知能)」などが含まれています。
インテリジェント無人システムとは、AIを搭載した自律走行車やドローン、無人配送ロボットなど、人が乗らずに動き回る機械全般を指します。エンボディド・インテリジェンスは、ロボットのように物理的な「身体」を持ち、現実世界で物をつかむ・運ぶといった動作を伴うAIのことです。
こうした技術が実用化されていくと、移動や物流、介護・家事支援など、私たちの日常生活のあり方そのものが変わっていく可能性があります。
リスト公開の狙い:社会への影響を共有し、戦略の参考に
CAEの院士であるYu Shaohua氏によると、今回のリストの狙いは、AIが今後社会にもたらす影響について一般の理解を高めるとともに、AI開発計画を立てる際の戦略的な参考資料とすることにあります。
どの技術を重視し、どの分野に人材や資本を集中的に投じるのかは、各国・各地域にとって重要な政策判断です。中国の研究機関が、今後5〜10年の重点分野を体系的に整理して示したことで、アジアや世界のAI競争の今後を読み解くうえでの材料が一つ増えたと言えます。
日本とアジアの読者が押さえておきたいポイント
今回の発表から、日本やアジアのビジネスパーソン・研究者・政策担当者が意識しておきたいポイントを整理すると、次のようになります。
- 6Gや大規模AIモデルなど、基盤となる情報通信技術への長期的な投資が続く見通しであること
- 計算神経科学やAI創薬など、ヘルスケアとAIの融合分野が「生産性革命」の担い手として位置づけられていること
- スマートウェアラブルや無人システムなど、個人の生活や働き方に直結する技術がAIホットスポットとされていること
- 公的機関が技術リストを公開することで、社会全体でAIの影響を議論しやすくする動きが強まっていること
2025年12月現在、人工知能をめぐる国際ニュースは、単なる技術競争を超え、社会のあり方そのものを問うテーマになりつつあります。中国の今回のリストは、その流れを象徴する一つの出来事と言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








