神舟19号、史上最長9時間EVAで起きたロック故障と中国の対応力
中国の有人宇宙船・神舟19号のクルーが、帰還後の報告で、昨年12月に行われた約9時間の船外活動中にロックの故障が発生していたものの、その場で対応し作業を完了させていたことを明らかにしました。史上最長とされる単独の船外活動で起きた想定外トラブルは、中国の軌道上トラブルシューティング能力の高さを象徴する事例となっています。
史上最長9時間の船外活動で何が起きたのか
国際ニュースとしても注目される神舟19号の船外活動では、昨年12月に約9時間に及ぶ記録的な船外活動が行われました。宇宙飛行士が宇宙服を着て船外に出て作業する船外活動は、英語でエクストラ・ビークル・アクティビティ(EVA)と呼ばれます。
今回新たに明らかになったのは、その船外活動中、装置を固定するためのロック機構に故障が発生していたという事実です。神舟19号クルーの説明によると、以前の機器設置作業の際に使われたペイロードアダプター(実験装置などを取り付ける接続部品)が部分的にかみ込んだ状態で残っており、ロックが正常に閉じきらない不具合が起きていたといいます。
本来であれば、安全のため作業を中断して地上に持ち帰る判断もあり得た状況でしたが、クルーは軌道上で問題を切り分け、協力して解決に動きました。
五度のEVAを経験した蔡旭哲が語る「現場対応」
今回の出来事を詳しく語ったのは、現在、中国で最も多くの船外活動を経験している宇宙飛行士、蔡旭哲です。蔡旭哲は、これまでに五回のEVAを経験しており、その実績から中国で最も経験豊富なスペースウォーカーとされています。
彼の説明によると、ロックが完全に閉じていないことに気づいたクルーは、まずは無理な力をかけず、原因が構造上の問題なのか、異物や部品の位置ずれなのかを一点ずつ確認していきました。そのうえで、地上管制との通信を続けながら、手順を再検証し、工具を使ってアダプターの姿勢を微調整。ロックが安全に機能する位置まで戻すことで、最終的に作業を完了させたといいます。
長時間に及ぶ船外活動では、宇宙服の消耗や酸素残量、宇宙飛行士の疲労など、時間とともにリスクが高まります。そのなかで、パニックに陥ることなく、訓練に基づいて一つ一つ確認しながら対応したことが、今回の成功の背景にあるといえるでしょう。
ペイロードアダプターとは何か
今回トラブルの原因となったペイロードアダプターは、宇宙ステーションの外部に機器や実験装置を取り付けるための「つなぎ役」となる部品です。
- 宇宙ステーションの外壁と装置を機械的に接続する
- 電力やデータのやり取りのための配線を通す役割も担う
- 船外での交換や増設を想定して設計されている
このような部品に不具合が起きると、装置がしっかり固定されず、安全上のリスクになるだけでなく、将来の保守作業にも影響が出ます。神舟19号クルーがその場で問題を解決できたことは、宇宙ステーション運用の安定性にとって重要な意味を持ちます。
軌道上トラブルシューティング能力の向上
神舟19号ミッションの「帰還後の開示」は、中国が軌道上でのトラブルシューティング能力を着実に高めていることを示すものとして位置づけられています。単に宇宙空間に到達するだけでなく、長期運用を前提とした「運用の強さ」が求められる段階に入っているからです。
今回の事例から見えてくるポイントを整理すると、次のようになります。
- 長時間EVAを支える運用と訓練:約9時間に及ぶ船外活動を完遂するには、宇宙飛行士の体力や精神力だけでなく、船外活動計画やサポート体制の精度が不可欠です。
- 想定外トラブルへの準備:ロック故障のようなトラブルは、事前にすべてを予測することが難しい一方で、起きたときに備えた訓練や手順が重要になります。
- 軌道上で「直して使う」力:宇宙空間というアクセスが限られた環境では、壊れたら交換ではなく、その場で修理し、再利用する能力がコストと安全性の両面で重要になります。
神舟19号クルーの報告は、中国の宇宙ステーション運用が、こうした「宇宙で当たり前に運営し続けるための力」を重視する段階に入っていることを示しているといえます。
「トラブルを前提とする」視点は地上にも通じる
宇宙ニュースとして見ると、神舟19号のEVAは記録的な長さや技術的な難しさに目が行きがちです。しかし、私たちの日常や仕事に引き寄せてみると、別の問いも見えてきます。
- 想定外のトラブルが起きたとき、落ち着いて状況を分解し、原因を切り分ける仕組みや訓練があるか
- 現場の判断と「遠隔のサポート」(地上管制のような役割)との連携が機能しているか
- リスクをゼロにするのではなく、「起きても対応できる前提」で設計しているか
宇宙飛行士の高度な作業は、極限環境で行われる特殊な仕事であると同時に、「チームでリスクに向き合う」という意味では、地上の多くの仕事と通じる部分があります。
神舟19号の船外活動でのロック故障対応は、中国の宇宙開発の現在を映し出すニュースであると同時に、私たち自身がトラブルやリスクにどう向き合うかを考えさせてくれる出来事でもあります。
Reference(s):
Shenzhou-19 astronaut recounts fixing unexpected EVA malfunction
cgtn.com








