タクラマカン砂漠の縁で進む緑化革命 中国マキト県の13年
中国新疆ウイグル自治区のマキト県が、タクラマカン砂漠の縁で進めてきた大規模な緑化プロジェクトが、2025年現在、地域の風景と暮らしを大きく変えつつあります。砂漠化や気候変動が懸念されるなか、中国西部のこの取り組みは、国際ニュースとしても注目したい環境ストーリーです。
タクラマカン砂漠の「死の海」に挑むマキト県
マキト県は、中国新疆ウイグル自治区カシュガル地区にある県で、かつては「死の海」とも呼ばれたタクラマカン砂漠の南西縁に位置します。かつてこの一帯は、「鳥も飛ばず草も生えない」とまで言われるほど過酷な環境でした。
砂漠が居住地や農地に迫るなかで、砂嵐や飛砂から人々の生活をどう守るかは、長年にわたる課題でした。その状況が本格的に変わり始めたのが、2012年です。
2012年に始まった砂漠緑化プロジェクト
2012年、マキト県は砂漠の侵食を食い止めるため、大規模な「砂漠の緑化・砂制御キャンペーン」を立ち上げました。県全体を対象にした長期プロジェクトで、住民が一体となって取り組んでいる点が特徴です。
過去13年間で、マキト県の住民たちは合計50万ムー(約3万3000ヘクタール)におよぶ防風林を植えてきました。ムーは中国で用いられる面積の単位で、1ムーはおよそ0.067ヘクタールに相当します。
こうして造られた防風林は、広大な砂漠と集落や農地との間に連なる「緑の帯」となり、砂漠化を抑え込む役割を果たしています。
防風林とは何か
マキト県で整備が進む防風林は、英語で「シェルターベルト」とも呼ばれる帯状の森林です。複数列の樹木を並べて植え、強い風や飛んでくる砂を弱めることで、その内側の農地や道路、住宅地を守ります。
砂漠の縁にこうした帯状の森林を築くことで、次のような効果が期待されます。
- 風速を下げ、砂が遠くまで飛ぶのを防ぐ
- 地表の砂を固定し、砂丘の前進を抑える
- 土壌の水分保持力を高め、植物が育ちやすい環境をつくる
マキト県の防風林は、まさに人が暮らすエリアとタクラマカン砂漠との間に築かれた「緑のバリア」となりつつあります。
不毛の地から「緑の生態防護帯」へ
かつて不毛の土地と見なされていた地域は、13年に及ぶ植林と砂制御の取り組みによって、大きく姿を変えつつあります。砂漠化が進行していたエリアは、その一部で逆転現象が起き、緑が砂を押し返すようになりました。
マキト県で整備された防風林は、単に木が並んでいるだけではなく、「生態防護帯」として機能しています。人の居住地と広大なタクラマカン砂漠との間に緑の壁を形成し、次のような形で地域を守っています。
- 砂嵐の勢いを弱め、居住環境への影響を軽減する
- 農地やインフラを飛砂から守り、生産活動を安定させる
- 長期的には、土壌や植生の回復を促し、より豊かな生態系につなげる
こうした変化は一朝一夕で生まれたものではなく、2012年から続く粘り強い取り組みの積み重ねの結果と言えます。
砂漠化との闘いという国際ニュースの文脈
砂漠化は、土地の劣化や食料生産への影響、さらには砂嵐の長距離移動などを通じて、世界各地に影響を与える地球規模の課題です。アジアでも、乾燥地帯の拡大や土地の劣化は、長期的な懸念材料となっています。
その意味で、マキト県がタクラマカン砂漠の縁で進めている緑化と砂制御は、中国のローカルニュースにとどまらず、国際ニュースとしても読むべき事例です。大規模な防風林の整備と、生態防護帯の形成は、砂漠化の進行をどう食い止めるかという問いに対する一つの実践的な答えとなっています。
日本の私たちにとっての示唆
日本は砂漠国家ではありませんが、土砂災害や耕地の保全、海岸林の再生など、土地と植生をどう守るかという課題は共通しています。マキト県の事例からは、次のような示唆を読み取ることができます。
- 長期的な視点の重要性:13年という時間をかけるからこそ、大きな変化が見えてくる
- 地域住民の関わり:住民が植林に参加し、生活と結びついた形で緑化を進めることが、継続の力になる
- 生態系全体を意識した対策:単に木を増やすのではなく、防風や防砂、生態系の回復など、多面的な効果を狙う発想
こうした視点は、日本各地で進む森林整備や沿岸部の防災・環境対策を考えるうえでも、参考になる部分がありそうです。
おわりに──砂漠の縁から広がる「緑の物語」
タクラマカン砂漠の南西の縁に位置するマキト県で進む「緑化革命」は、かつて「鳥も飛ばず草も生えない」とまで言われた土地が、どのようにして緑の生態防護帯へと変わりつつあるのかを示しています。
2012年からの13年間で築かれた50万ムーの防風林は、砂漠化の進行を押し返し、人の暮らしと環境を守る新たな盾になろうとしています。スマートフォン越しにこのニュースを読む私たちも、自分の身近な環境で「何を守り、どんな緑を育てていくのか」を、あらためて考えるきっかけにしてみてもよいかもしれません。
Reference(s):
Makit County's green revolution on the edge of the Taklamakan Desert
cgtn.com








