中国の無人船が台風の目に突入 気象研究を進化させる国際ニュース
2025年の台風シーズンが6月以降も活発さを保つなか、中国・浙江大学の研究チームが、台風の「目」に自ら飛び込む無人航行船を開発しました。台風の核心部から直接データを集めることで、進路や強さの予測精度を高め、災害の予防・軽減につなげることが期待される国際ニュースです。
この記事のポイント
- 中国・浙江大学が台風の目に入る無人航行船「アルバトロス」を開発
- 今年の台風「ウーティップ(Wutip)」と「ウィパ(Wipha)」の核心部で気象・海洋データを取得
- 今後は1000メートル潜航や世界航走試験で観測ギャップの解消を目指す
台風の目に入った無人航行船「アルバトロス」
研究チームが開発した無人の帆走船は「アルバトロス」と名付けられ、全長は約4.3メートル。風の力だけで進む設計で、遠隔操作によって危険な海域にも送り込めるのが特徴です。
今年6月、このアルバトロスは今年最初の台風「ウーティップ(Wutip)」の目(台風の中心部)に初めて突入し、気象データと海洋波浪データをその場で収集しました。無人の海洋観測機が台風の目を通過し、海と大気の境界面を観測したのは、中国ではこれが初めてとされています。
カメラと専用センサーを備えた改良型が登場
初成功を受けて、研究チームはアルバトロスをアップグレードしました。改良型には前方と後方にカメラが搭載され、台風内部の様子を映像として記録できるようになりました。
従来型は、風速や風向、波といった航行に必要な基本的データのみを測るセンサーを備えていましたが、新世代機は台風の激しい環境に対応した専用センサーを追加。より詳細な気圧や風の変動、波の構造などを把握できる設計になっています。
改良型アルバトロスは、その後台風「ウィパ(Wipha)」の核心部へと進入し、映像とともに多様な観測データを集めました。これにより、台風内部の構造を立体的に捉える試みが進んでいます。
なぜ「少しの誤差」が大きな進路のズレを生むのか
浙江大学の李培良(リー・ペイリャン)教授は、中国メディアの取材に対し、現在の台風監視技術や予測モデルはかなり成熟している一方で、「海上での初期データにわずかなずれがあるだけで、台風進路の予測に大きな誤差が生まれる」と指摘しています。
特に、台風の核心部周辺は観測が難しく、データが欠けがちな「空白地帯」になりやすいエリアです。そこに直接無人船を送り込み、進路や強度変化に関する一次データを集めることで、台風がどのように発達し、どのタイミングで弱まるのかといった変化のメカニズムをより詳しく理解できるようになります。
衛星や気象レーダー、航空機観測など既存の手法と組み合わせることで、進路予測の「ぶれ」を小さくし、上陸のタイミングや雨・風の強さをより精密に見通せる可能性があります。
今後は1000メートル深く、世界の海へ
研究チームは今後、アルバトロスにさらに多くの環境センサーを搭載し、気象だけでなく海洋環境のデータも包括的に集める計画です。
将来的には、最大で水深1000メートルまで潜航できる能力を持たせ、海と大気の間で起きる熱や水分のやり取り、上層の海洋構造を詳しく調べる「移動型観測船」として活用する構想が示されています。
また、偏西風帯に沿って世界の海を航走する試験も想定されています。長期間にわたって広い海域をカバーすることで、これまでデータが乏しかった海域の観測ギャップを埋めていく狙いです。
日本とアジアの防災にとっての意味
台風は国境を越えて移動し、日本を含むアジア各地に大きな影響を与えます。台風の核心部からの高精度な観測データが増えれば、各国の気象機関が共有し合い、早めの警報発表や避難判断に役立てることも期待できます。
スマートフォンで最新の国際ニュースをチェックする私たちにとっても、こうした観測技術の進歩は決して遠い話ではありません。予測精度が上がれば、仕事や学校、交通機関への影響をより具体的に見通し、防災・減災につながる行動を取りやすくなるからです。
無人航行船アルバトロスが切り開いた「台風の目」からの新しい視点は、今後の台風研究と私たちの暮らしの双方に、静かだが確かな変化をもたらしていきそうです。
Reference(s):
China's unmanned vessel enters typhoon eye, advancing storm research
cgtn.com








