中国・グルバントンギュト砂漠を守る生物土壌クラストとは
中国北西部・新疆ウイグル自治区のグルバントンギュト砂漠では、一面の砂の下に「生きた皮膚」ともいえる薄い黒い層が広がっています。生物土壌クラストと呼ばれるこの層が、砂漠化の進行を抑え、生物多様性を支える鍵になりつつあります。
砂漠の「生きた皮膚」はどこにあるのか
グルバントンギュト砂漠は、中国で2番目に大きい砂漠で、中国北西部の新疆ウイグル自治区・ジュンガル盆地の中央に位置します。一見すると地平線まで続く砂の海ですが、足元をよく見ると、砂の表面に沿って薄くて暗い色の膜のようなものが張り付いている場所があります。これが生物土壌クラストです。
生物土壌クラストとは何か
生物土壌クラストは、砂や土の表面に形成される生きた層で、地衣類、コケ類、シアノバクテリアなど、さまざまな生物が絡み合ってできています。砂漠の厳しい環境の中で、これらの小さな生き物が少しずつ広がり、土地全体に薄い皮膚をつくりあげていきます。
どんな生き物からできているのか
- 地衣類
- コケ類
- シアノバクテリアなどの微生物
肉眼ではただの黒っぽい膜に見えますが、その中には多様な生き物の世界が広がっています。
砂漠を支える三つの役割
生物土壌クラストは、砂漠生態系のエンジニアとも呼ばれます。その理由は、次のような働きがあるからです。
- 砂を固定する:砂の表面をまとめることで、砂粒が風に飛ばされにくくなり、動き続ける砂丘を安定させます。
- 砂漠化とたたかう:砂が動きにくくなることで、土地の劣化や砂漠化の進行を抑える力になります。
- 生物多様性を支える:生物土壌クラストそのものが多様な生き物のすみかとなり、周囲に育つ植物やそこに暮らす生き物を支える土台となります。
こうした働きによって、生物土壌クラストは砂漠に暮らす生き物たちを静かに支えています。
10〜20年かけて現れる「治癒のサイン」
こうした生物土壌クラストが自然に形成されるには、長い時間がかかります。自然条件では、1つの場所に安定したクラストができるまでにおよそ10〜20年を要するとされています。
それだけ時間がかかる一方で、クラストがしっかりとできあがることは、土地にとって大きな転換点でもあります。砂漠の土地がゆっくりと癒やされ、脆く壊れやすい砂漠の生態系が少しずつ回復し始めているサインと見ることができるからです。
研究者たちが目指すもの
現在、生物土壌クラストは乾燥地の生態系を支える隠れたヒーローとして、研究者の関心を集めています。研究者たちは、クラストの仕組みを詳しく理解し、その貴重な層を守り、さらには人の手で再びつくり出す方法まで探っています。
こうした取り組みは、砂漠化が進む地域での土地回復や、生態系の保全にとって重要な意味を持ちます。小さな生き物たちがつくる薄い層をどう守るかが、広大な砂漠の未来を左右する可能性があるのです。
私たちにとっての意味
砂漠の表面に広がる薄い黒い層は、遠くから見ればほとんど気づかれない存在です。しかし、とても小さな生き物たちがつくるその層が、広大な砂漠の運命を左右し得るという事実は、私たちのものの見方を少し変えてくれます。
環境問題というと、大規模な技術や政策に目が向きがちですが、生物土壌クラストが示すのは、小さな変化の積み重ねが大きな違いを生むという視点です。スマートフォンの画面越しに砂漠のニュースを読む私たちにとっても、足元の小さな変化に目を向けるヒントになるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








