中国・長龍山の水のバッテリー 200万世帯を支えるグリーン電力 video poster
中国東部・浙江省の山あいに、発電所というより「水のバッテリー」と呼びたくなる巨大プロジェクトがあります。長龍山の揚水式水力発電所は、約200万世帯の電力をまかない、年間42万トンの二酸化炭素排出を減らす役割を担っています。脱炭素が急がれる2025年現在、この「グリーン電力銀行」はどんなしくみで、何を変えようとしているのでしょうか。
山の地下に隠れた「グリーン電力銀行」
長龍山の「水のバッテリー」は、その多くが山の内部に隠れています。地上からは一部の設備しか見えませんが、山の奥深くには巨大な発電機やトンネルが広がり、水の流れを制御することで電力を生み出しています。
このプロジェクトは、ヨーロッパ・アジアセンターの主席であり、国連事務次長も務めたエリック・ソルヘイム氏が現地を訪れたことで、国際的にも注目を集めています。ソルヘイム氏は、中国東部の浙江を訪れ、この巨大な「グリーン電力銀行」がどのように水の力を利用して電力網を安定させているのかを紹介しています。
「水のバッテリー」はどう動くのか
長龍山の揚水式水力発電所は、電気をためたり取り出したりできる点で、スマートフォンのモバイルバッテリーに似ています。ただし、電気そのものをためるのではなく、水を高い場所と低い場所の間で移動させることでエネルギーを蓄えます。
- 電力に余裕がある時間帯には、電気を使って水を山の上の貯水池へくみ上げる
- 電力需要が高まる時間帯には、水を山の上から下へ流し、その勢いでタービン(羽根車)を回して発電する
- 必要に応じて、この動きを繰り返すことで、電力供給の「調整役」となる
こうして長龍山の「水のバッテリー」は、約200万世帯が使う電力を支えながら、火力発電に頼る必要を減らし、年間42万トンの二酸化炭素排出を削減しているとされています。
グリーンエネルギー時代の「安定装置」
太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候や時間帯によって発電量が変動しやすいという弱点があります。2025年現在、各国・地域が再生可能エネルギーの比率を高める中で、「どう電力を安定して届けるか」は共通の課題です。
長龍山のような揚水式水力発電所は、次のような役割を果たします。
- 再生可能エネルギーの「余った電気」をためておき、必要なときに活用する
- 電力需要のピーク時に電気を供給し、停電や価格高騰のリスクを下げる
- 火力発電所の出力変動を減らし、環境負荷を抑える
この意味で、長龍山は単なる発電所ではなく、再生可能エネルギー時代の「安定装置」として機能しています。動画で紹介される現地の様子からも、水の流れを細かく制御しながら、電力システム全体を支える姿が浮かび上がります。
自然と共生するインフラをどう広げるか
長龍山プロジェクトの特徴は、山という自然地形を活用しながら、水という再生可能な資源で電力を安定させている点です。環境への負荷を最小限に抑えつつ、大規模な蓄エネルギーを実現しようとする発想は、今後のインフラづくりを考える上でも示唆に富んでいます。
もちろん、大規模な水力発電やダムには、周辺の生態系や地域社会への影響を丁寧に考える必要があります。そのうえで、どのように自然と折り合いをつけながら、クリーンエネルギーを拡大していくのかは、世界共通の問いです。
「見えないインフラ」を自分ごとに
私たちの日常生活で、照明やスマートフォンの充電をするとき、長龍山のような施設を意識することはほとんどありません。しかし、こうした「見えないインフラ」があるからこそ、安定した電力が当たり前のものとして享受されています。
長龍山の「水のバッテリー」は、グリーンエネルギーの未来が、単に新しい発電技術だけでなく、電気をどう「ためて」「届けるか」という地道な工夫の上に成り立っていることを教えてくれます。2025年の今、自分が使う電気がどこから来て、どのような仕組みで支えられているのか、一度立ち止まって考えてみるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Changlongshan "water battery": Storing energy, sustaining nature
cgtn.com








