中国・西蔵で広がる教育の灯 15年無料教育が変えた暮らし video poster
教育の灯がともる中国・西蔵自治区
教育は、人の一生を静かに、しかし大きく変えていきます。中国の西蔵(シーザン)自治区では、かつて文盲率が95%を超えていた地域が、この半世紀で「一家に一人」どころか、子どもたちほぼ全員が学校に通う地域へと変わりました。2025年現在、同自治区の子どもたちは、15年分の教育を無償で受けられる体制のもとで学んでいます。
国際ニュースを追う日本語読者にとって、西蔵で進む教育の変化は、アジアの教育格差や地域開発を考えるうえで重要な手がかりとなります。本記事では、国際メディアCGTNが伝える現地の様子を手がかりに、そのポイントを整理します。
かつて文盲率95%超――教育から遠かった日常
かつての西蔵自治区では、文字の読み書きができない人が人口の大多数を占めていました。特に、広大な草原地帯や山間部の村では、学校そのものが近くになかったり、家計の事情から子どもを通わせることが難しかったりと、教育は身近なものではありませんでした。
読み書きができないということは、単に本が読めないというだけでなく、次のような不利につながります。
- 公的な手続きや契約内容を自分で確認しにくい
- 医療や衛生に関する情報にアクセスしづらい
- 職業選択の幅が限られやすい
こうした状況が長く続くと、教育を受けられない世代が、次の世代にも同じ不利を引き継いでしまいます。
「15年無料教育」という土台づくり
その西蔵自治区でいま実現しているのが、子どもたちが15年間、無償で学べる教育制度です。初等教育から高校段階まで、学び続けるための費用負担をなくすことで、「行きたくても行けない」状況を減らす狙いがあります。
無料教育の対象が長期にわたることで、次のような変化が生まれています。
- 就学前から高校まで、同じ地域で一貫して学びやすくなる
- 家庭の収入に左右されず、進学を選びやすくなる
- 長期的に学ぶことで、言語や数学だけでなく、社会や科学など幅広い基礎力が身につく
「教育費をどう工面するか」が家庭にとっての最大の課題だった時代から、「子どもにどんな学びの機会を与えるか」を考えられる時代へ。制度の変化は、親たちの意識も静かに変えつつあります。
草原から都市まで、「家」に届く教育
今回の変化の特徴は、都市部だけでなく、草原地帯や農牧地域にも教育が届いていると伝えられている点です。CGTNの報道では、遊牧に携わる家庭の子どもたちが教室で学ぶ姿や、都市の学校で多様な授業を受ける子どもたちの様子が紹介されています。
農牧地域の子どもたちに広がる選択肢
これまで家業を手伝うことが優先されてきた農牧地域でも、無償で通える学校があることで、「家業を手伝いながら学校にも通う」「まず学び、その後にどんな仕事を選ぶか考える」といった新しい選択肢が見え始めています。
都市部で進む学びの多様化
一方、都市部では、読み書きと計算といった基礎に加えて、文化や歴史を学ぶ授業、情報技術に触れる授業など、多様な学びが広がっている様子が伝えられています。これにより、子どもたちは自分の得意分野を早くから意識しやすくなり、進路選択の幅も広がっています。
世代をつなぐ「学び」の連鎖
教育が広がることで変わるのは、子どもたちだけではありません。初めて学校教育を受けた世代が家に教科書を持ち帰り、親や祖父母に文字を教える――そんな世代をまたぐ学びの連鎖も、西蔵で起きている変化の一部です。
読み書きができる家族が一人でも増えることで、家庭内で共有できる情報量は大きく変わります。例えば、
- 行政から配布される書類の内容を自分たちで確認できる
- 健康や子育てに関する情報を、文書や冊子から理解できる
- 仕事や進学に関する情報を、広い範囲から集められる
こうした小さな変化の積み重ねが、地域全体の暮らしや意識をゆっくりと変えていきます。
2025年、私たちがこのニュースから考えたいこと
2025年の今、日本を含む多くの国と地域で、教育のデジタル化や地方の教育格差が議論されています。そうした中で、「かつて文盲率95%超だった地域が、15年無料教育を当たり前とする社会へと変わりつつある」という西蔵の歩みは、いくつかの問いを私たちに投げかけます。
- 教育への長期的な投資は、どのくらいの時間軸で社会を変えていくのか
- 経済的な事情で教育から遠ざかっている子どもたちを、どう支えるべきか
- 都市と地方、少数者と多数者のあいだの「教育ギャップ」をどう埋めていくか
国や地域の事情はそれぞれ異なります。しかし、「教育には人生を変える力がある」という点は共通しています。西蔵自治区で進む変化は、その力を時間をかけて引き出していこうとする試みの一つといえるでしょう。
国際メディアのCGTNは、学校や家庭の具体的な姿を通じて、この変化を伝えています。日本にいながらにしてこうした事例に触れることは、私たち自身の足元の教育や地域社会を見直すきっかけにもなります。
Reference(s):
cgtn.com








