中国・祁連山の希少な野生動物を記録 初の本格アトラスが刊行
中国北西部の祁連山で、生きものの「いま」をまとめた専門アトラス(動植物図鑑)が刊行されました。中国科学院の研究チームが長年の調査をもとに作成したもので、希少な野生動物がどのように暮らしているのかを、科学的かつビジュアルに伝えます。
エコロジーの要衝・祁連山を写し取る
祁連山は、中国北西部の甘粛省と青海省の境界にまたがる山脈で、「重要な生態安全の防波堤」とされています。この地域には、多様な野生動物が暮らしており、中国北西部の自然環境を支える存在です。
今回刊行されたアトラスは、この祁連山の野生動物を専門的に記録したものです。刊行を発表したのは、中国科学院の西北高原生物研究所(Northwest Institute of Plateau Biology、NWIPB)です。
中国で初めての「祁連山野生動物アトラス」
アトラスの編集を担当したのは、NWIPBの研究者である張同祚(Zhang Tongzuo)氏です。張氏によると、このアトラスは、中国で初めて祁連山の野生動物資源を体系的に示した専門書だといいます。
特徴は、大きく三つあります。
- 最新の科学調査にもとづいた信頼性の高いデータ
- 研究者だけでなく一般の読者も楽しめるビジュアルな構成
- 祁連山全体の野生動物を俯瞰できる「地図」としての役割
研究の成果を論文だけでなく、誰もが手に取れるアトラスという形で公開することで、「科学」と「社会」をつなぐ試みともいえます。
青海・シーザン高原の大規模調査が土台
このアトラスは、中国が実施した第2次青海・シーザン高原調査の成果を土台に作られています。青海・シーザン高原(Qinghai-Xizang Plateau)は、標高が高く、独特の生態系が広がることで知られる地域です。
大規模な科学調査で得られた情報をもとに、祁連山のどこに、どのような野生動物が生息しているのかを整理し、地図や写真とともにまとめたのが今回のアトラスです。一般の人々にとっては、これまで断片的にしか知ることができなかった祁連山の自然を、一冊で俯瞰できる「窓」となります。
保全と「見える化」をどうつなぐか
高山地域の生態系は、気候や人間活動の影響を受けやすく、変化が進んでいても気づきにくいという特徴があります。そのため、どの地域にどの生きものがいて、どのような環境が守られているのかを「見える化」することが重要になります。
今回のようなアトラスは、次のような点で役立つと考えられます。
- 保護区の設定や見直しなど、生態系保全の計画づくり
- 研究者による長期的なモニタリング(変化の追跡)の基盤
- 学校教育や環境学習での教材としての活用
- 地域の人々が自分たちの自然環境を再発見するきっかけ
日本の読者にとっての意味
遠く離れた祁連山の話題ですが、「生物多様性をどう記録し、どう共有するか」というテーマは、日本を含む多くの国と地域に共通しています。地図や写真、データを組み合わせて、生態系をわかりやすく伝える取り組みは、今後さらに重要になっていきます。
スマートフォンで地図アプリを開くように、いつでも野生動物の「現在地」を確認できる世界をどう作っていくのか。祁連山の新しいアトラスは、その問いに対する一つのヒントを示していると言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








