中国漁民が救った英兵 映画『リスボン・マル号沈没』と戦争の記憶 video poster
第二次世界大戦中に中国浙江省沖で起きたリスボン・マル号の悲劇と、中国漁民による英国人捕虜救出を描いた映画『リスボン・マル号沈没(The Sinking of the Lisbon Maru)』について、監督の方励(Fang Li)氏がインタビューで語りました。本記事では、その作品と発言を手がかりに、戦争の記憶をどう受け継ぐかを考えます。
約83年前、香港発の船で何が起きたのか
今から約83年前、第二次世界大戦のさなか、輸送船リスボン・マル号は香港から日本へ向かっていました。船には、日本軍に捕らえられた1816人の英国人捕虜が乗せられていました。中国浙江省の東極島沖で、リスボン・マル号は米国の潜水艦から発射された魚雷を受けて撃沈されます。
沈没する船からなんとか脱出した捕虜たちは、海上で日本軍の射撃を受けることになりました。その危険な状況の中で、地元の漁民たちは自らの安全を顧みず漁船を海に出し、捕虜たちの救助に乗り出したとされています。
忘れられかけた歴史を映画でよみがえらせる
方励監督は、このほとんど忘れられかけていた戦時史の一幕をよみがえらせるため、およそ8年を費やしました。映画『リスボン・マル号沈没』は、軍事作戦や政治判断ではなく、危険を承知で英国人捕虜の救出に向かった中国の漁民たちの勇気と人間性に焦点を当てています。
作品は、国籍や立場を超えて目の前の命を助けようとした人びとの姿を通じて、戦争の中でも失われない連帯の可能性を描こうとしています。国際ニュースや歴史を追う読者にとっても、第二次世界大戦の知られざるエピソードを知る手がかりとなる物語です。
インタビューで語られた創作プロセスと戦争観
CGTNの番組で行われたマイク・ウォルター氏とのインタビューで、方励監督は、どのようにしてこの物語にたどり着き、映像作品として形にしていったのか、その創作プロセスを語りました。また、単に史実を再現するだけでなく、観客が自分自身の価値観や歴史観を問い直せるような映画にしたいという姿勢もうかがえます。
映画の題材そのものが示すように、方励監督は戦争の暴力だけでなく、その中でも他者を救おうとする行動に光を当てています。インタビューでは、戦争についての個人的な考えも共有しており、観客に平和や人間の尊厳について考えてほしいという意図が感じられます。
2025年にこの物語をどう受け止めるか
2025年の今、第二次世界大戦を直接知る人びとは少なくなりつつあります。その一方で、世界各地で紛争や対立が続き、戦争報道が絶えることはありません。こうした状況のなかで、リスボン・マル号の物語は、敵味方に分かれた人びとのあいだにも、命を守ろうとする行動があり得ることを思い出させてくれます。
国際ニュースを日々チェックする読者にとっても、この映画は、数字や地図だけでは見えてこない一人ひとりの視点から戦争と平和を考えるきっかけになりそうです。上映の機会があれば、歴史の細部だけでなく、そこに映し出された人間の選択と勇気に注目してみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
Interview with Fang Li, Director of "The Sinking of the Lisbon Maru"
cgtn.com








