雪豹の瞳と出会う:青海・シーザン高原野生動物園の小さな命の物語 video poster
ヤクに踏まれ鼻の手術を受けた雪豹、痩せた子どもの頃に救われ、いまは高原を風のように駆ける雪豹——。中国西部・Xiningにある青海・シーザン高原野生動物園(Qinghai-Xizang Plateau Wildlife Park)で、CGTNのYang Xinmeng記者が出会ったのは、傷を負いながらも生き抜いてきた高原の「本当の住人」たちでした。
雪豹の瞳と向き合った場所
青海・シーザン高原野生動物園には、モウコヤマネコ(Pallas's cat)、スナネコ、そして雪豹など、高地に暮らす野生動物たちが保護されています。彼らの多くは、事故や病気で深い傷を負い、人の手を借りなければ生き延びることができなかった動物たちです。
Yang Xinmeng記者が雪豹の瞳を初めて見つめたとき、そこにあったのは、猛獣としての鋭さだけではなく、過酷な自然と闘いながら生きてきた「時間」と「物語」でした。
動物園以上の役割:病院であり孤児院
この施設は、名前こそ「野生動物園」ですが、その役割は単なる展示にとどまりません。高原の野生動物たちにとっては、病院であり、孤児院のような存在になっています。
- ケガや病気を負った野生動物の治療
- 親を失った子どもの保護と世話
- 可能な場合には、再び自然へ戻すためのリハビリ
ここで暮らす動物たちの多くは、もしこの場所がなければ「二度目のチャンス」を得られなかったといわれています。山々に囲まれた空の下で、彼らが再び歩き、走り、じゃれ合う姿は、静かな感動を呼びます。
傷を負った雪豹たちの物語
ヤクに踏まれた雪豹 リン・ブーフー
雪豹のリン・ブーフーは、かつてヤクに踏まれるという事故に遭いました。高原の過酷な環境の中では、こうした偶発的な事故も命取りになりかねません。
リン・ブーフーは大きく傷ついた鼻の治療のため、中国で初めて鼻の手術を受けた雪豹となりました。繊細な手術とその後のケアを経て、いまもその体には傷跡が残りますが、その瞳にはなお強い生命力が宿っています。傷跡は弱さではなく、生き抜いてきた証としてそこにあります。
風のように走るリン・シャオジョー
もう一頭の雪豹、リン・シャオジョーは、生後わずか6か月の頃に救出されました。その身体は弱り、幼さと同時に危うさをまとっていたといいます。
手厚い保護と時間の中で、リン・シャオジョーは少しずつ力を取り戻し、いまは再び高原を走り回るまでになりました。その姿は「高原を吹き抜ける風」のようだと表現されます。彼の走る背中には、人と動物が共に紡いだ「再出発の物語」が重なっています。
「貧しいけれど心は温かい」野生動物園
この野生動物園は、「経済的には豊かではないが、心は満ちている場所」だと語られます。豪華な施設や派手な演出があるわけではありませんが、そこには、目の前の命を何とかつなごうとする人々の思いがあります。
もしこの場所がなかったら、多くの動物たちは命を落としていたかもしれません。決して大きくはない高原の一角で、「もう一度生きるチャンス」が静かに積み重ねられているのです。
山の空の下を歩く雪豹やヤマネコたちを眺めていると、高原を渡る風が、ただ冷たいだけのものではなく、小さな命をそっと運び、前へと押し出しているようにも感じられます。
私たちに問いかけるもの
青海・シーザン高原野生動物園の物語は、遠い高原での出来事でありながら、私たちの日常にも問いを投げかけます。傷ついた命に、社会はどこまで手を差し伸べるべきなのか。限られた資源の中で、何を優先し、どこまで守るのか。
リン・ブーフーやリン・シャオジョーのように、「もう一度、生きる」という選択肢を与えられる存在がいる。その現実を知ることは、私たちが人間同士のあいだでどんな社会を望むのか、静かに考え直すきっかけにもなります。
高原の風のように、そこで生きる動物たちの物語は、2025年の今を生きる私たちのもとにも、確かに届いています。
Reference(s):
cgtn.com








