「ラサの肺」ラル湿地を守る 青海・シーザン高原の高地都市湿地と科学 video poster
中国西部の青海・シーザン高原に広がるラル湿地は、「ラサの肺」と呼ばれる貴重な高地の都市湿地です。中国で最も標高が高く、最大規模の都市湿地とされるこの場所では、現在、研究者たちが最先端の科学技術を使って、生態系の「秘密」を解き明かしながら保護に取り組んでいます。
「ラサの肺」と呼ばれるラル湿地とは
中国西部の青海・シーザン高原(Qinghai-Xizang Plateau)には、ラサ市のすぐそばに広がるラル湿地があります。このラル湿地は、中国で最も標高が高く、最大規模の都市湿地とされる存在で、「ラサの肺」とも呼ばれています。
標高の高い乾いた地域において、水と緑がまとまって存在するラル湿地は、地域の生態系にとって文字通りのオアシスです。都市の近くにありながら、多様な動植物のすみかとなり、気候や水循環を安定させる役割も担っています。
高地に広がる都市湿地が持つ役割
一般に、湿地は「自然の浄水装置」や「炭素の貯蔵庫」とも言われ、水質の浄化、洪水の緩和、生物多様性の保全など、多くの役割を果たします。高地にあるラル湿地のような都市湿地は、これに加えて、薄い空気や強い日射といった過酷な環境条件の中で、都市の暮らしを支える独特の機能を持っています。
ラル湿地が「ラサの肺」と呼ばれるのは、湿地の植生が大気中の二酸化炭素を吸収し、都市の空気環境の改善に貢献しているからです。高地特有の気候と組み合わさることで、その働きは周辺地域の温度や湿度の調整にもつながっています。
科学者たちが挑むラル湿地の「秘密」
現在、ラル湿地を保護するために、研究者たちは最先端の科学的手法を駆使して、その生態系の仕組みを解き明かそうとしています。高地特有の気候や水の動き、植物や土壌がどのように関わり合っているのかを、データにもとづいて分析する取り組みです。
こうした研究では、衛星観測やドローン、自動計測装置、コンピューター解析など、さまざまな技術が組み合わされます。長期的なデータを集めることで、「どのような状況で湿地がダメージを受けやすいのか」「どのような管理が生態系の回復につながるのか」といった具体的な判断材料が得られます。
保全と都市の発展をどう両立させるか
ラル湿地は都市のすぐそばに位置するため、保全と都市開発のバランスが重要なテーマになります。道路や住宅、観光施設などが拡大すれば、湿地の水の流れや動植物のすみかに影響が出る可能性があります。
科学的な調査から得られるデータは、こうしたリスクを事前に把握し、被害を最小限に抑えるための判断に役立ちます。どのエリアを手つかずで残すべきか、どこなら人の利用を増やせるのか、といったゾーニング(利用区分)を検討するうえでも、科学にもとづく議論が欠かせません。
また、湿地の価値を市民が理解し、日常的に大切にすることも、長期的な保全には欠かせない要素です。教育プログラムやガイド付きの自然観察などを通じて、ラル湿地の役割や魅力を共有することで、地域ぐるみの保護意識が高まっていきます。
遠くの湿地と私たちの日常はつながっている
遠く離れた高地の湿地を守ることは、なぜ私たちにとって重要なのでしょうか。ラル湿地が広がる青海・シーザン高原は、日本から見ると距離のある場所に感じられますが、その保全は気候変動や水資源の管理、生物多様性の保全といった、私たち自身の暮らしに直結するテーマと深く結びついています。
世界各地で都市化が進む一方、湿地が失われつつあるなか、「ラサの肺」と呼ばれるラル湿地の保全は、自然と都市がどのように共存できるのかを考えるうえで重要なヒントを与えてくれます。遠くの高地で進む最先端の研究と保全の試みは、私たちが自分の足元の自然環境をどう守るかを考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








