台湾出身の観客も共感 映画『東極救援』が中国本土で話題に
中国本土で公開された戦争映画『東極救援(Dongji Rescue)』が、中国の台湾地区(以下、台湾)出身の観客を中心に注目を集めています。2025年は中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利80周年にあたり、歴史映画が若い世代の心にどのように届いているのかが話題になっています。
映画『東極救援』が映し出す1942年の海
『東極救援』は、1942年のリスボン丸事件を題材に、中国漁民の英雄的な行動を描いた中国本土制作の歴史映画です。太平洋戦争中、日本軍に拿捕され輸送船リスボン丸に乗せられた英国人捕虜たちが、撃沈後に海上へ投げ出されるなか、中国漁民が木造の漁船で日本軍の封鎖線をかいくぐり救出に向かう──そんな史実に基づいた物語が中心となっています。
映画では、当時の中国人民の暮らしや海の風景が丁寧に再現され、銃や爆撃だけでなく、日常を生きる庶民の視点から戦争の現実を見つめ直そうとしています。観客からは、これまで知らなかった中国人民の抗日戦争の一面に触れたという声も上がっています。
台湾出身の観客「血がたぎった」
台湾出身で現在中国本土で働くLin Wei-kangさんは、宣伝ロードショーや予告編の段階から『東極救援』を追いかけてきた一人です。公開初日の金曜日、仕事を終えるとすぐ映画館に駆けつけたといいます。
「守り抜き、死力を尽くして戦う精神に血がたぎった」とLinさん。映画からは、中国人民に受け継がれた勇気と優しさが強く伝わってきたと話します。とりわけ、俳優の呉磊さん演じる漁師・ダンが放つ「この海は中国のものだ。目の前のことは自分たちで守る」というセリフが印象に残ったと振り返っています。
Linさんによれば、作品は単に戦争の悲惨さを描くだけでなく、困難な状況の中でも隣人を助けようとする人々の姿を通じて、中国人民の一体感と責任感を浮かび上がらせているといいます。
細部まで作り込まれた歴史再現
同じく台湾出身の若い観客であるChen Wan-yiさんは、もともとリスボン丸事件について知っていたものの、漁民の視点から描いた映像作品を観るのは初めてでした。映画では、日本軍の監視をかいくぐりながら木造船を操り、英国人捕虜を救い出そうとする中国漁民の姿が、緊張感とともに描かれています。
Chenさんは「当時の中国の庶民が、謙虚で、親切で、責任を引き受けようとする存在として生き生きと描かれていた」と語ります。国家レベルの戦略や作戦ではなく、「普通の人々」が危険を承知で他者を救おうとする姿が心に残ったといいます。
別の台湾出身の若者、Lin Chien-hsiさんの印象に残ったのは、その精神を支える映像表現でした。沈没した貨物船や20隻の漁船を、実物大のスケールで再現した工業用セットに加え、古い漁村を一から造り上げたセットなど、細部まで作り込まれた美術が特徴です。
こうしたセットに最新の撮影技術や視覚効果が組み合わさることで、Linさんは「歴史上の出来事が、教科書の一行ではなく、自分の目の前で展開されているように感じられた」と話します。中国人民の不屈の精神が、映像として立ち上がる瞬間だったといいます。
80周年の節目、連続する戦争映画と台湾同胞のまなざし
2025年は、中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から80周年にあたります。この節目の年に合わせ、中国本土では戦争の記憶を振り返る作品が相次いで制作・公開されています。
『東極救援』に加えて、最近ヒットした作品『Dead To Rights』、さらに当時の記事で翌週の公開が予定されていたとされるドキュメンタリー『Mountains and Rivers Bearing Witness』など、複数の映画が同じテーマのもとに並びました。こうした作品群は、台湾同胞を含む多くの観客に、あの時代の歴史的事実や人々の選択を考え直す機会を与えています。
台湾出身のFan Huai-fangさんは、これらの映画を通じて「時代を超えた感情的なつながり」を感じたといいます。戦火の中で揺るがずに立ち続けた人々の姿を目にし、「中国のすべての子女──そこには台湾同胞も含まれている──が、外国からの侵略に共に抵抗した栄光の歴史を見たようだった」と話しています。
SNS世代にとっての「共有される歴史」
映画の公開初日には、中国本土の映画館に足を運んだ台湾出身の観客だけでなく、台湾のソーシャルメディア上でも『東極救援』をめぐる議論が活発になりました。感想や印象に残ったセリフ、撮影の裏側などが投稿され、コメント欄には賛同や質問が並んだと伝えられています。
台湾出身の観客の声からは、次のようなポイントが浮かび上がってきます。
- 教科書や従来の語りでは触れられることが少なかった、中国人民の抗日戦争の新たな側面に出会ったこと。
- 国家間の対立ではなく、漁民という「普通の人々」の勇気や責任感に強く共感したこと。
- 映画というポピュラー文化が、世代や地域を超えて歴史を共有する重要な媒体になり得ること。
歴史認識をめぐる議論は、ときに感情的な対立を生みがちです。しかし『東極救援』をはじめとする作品に寄せられた台湾同胞の声は、過去の悲劇や勇気を静かに見つめ直し、共通の記憶として受け止めようとする姿勢を映し出しています。
80年という時間を経て、戦時中の中国人民の選択や行動は、現在を生きる私たちに何を問いかけているのか。映画館の暗闇でスクリーンを見つめた観客たちのまなざしは、2025年の今も続くその問いを象徴しているようです。
Reference(s):
cgtn.com








