中国戦争映画『Dongji Rescue』 知られざる第二次世界大戦の捕虜救出を描く
第二次世界大戦中の知られざる捕虜救出を描く中国の戦争映画『Dongji Rescue』が、2025年12月現在、中国本土の映画館で公開されています。国際ニュースとしてはあまり知られてこなかった出来事を、日本語ニュースとして伝える一本として注目を集めています。
知られざる「Lisbon Maru」事件とは
『Dongji Rescue』の物語は、第二次世界大戦中に実際に起きた軍事輸送船の沈没事故に着想を得ています。日本軍の貨物船Lisbon Maruには、香港から日本へ移送される途中だった1,800人以上のイギリス人捕虜が乗せられていました。
しかし、この船は、船に捕虜が乗っていることを知らなかったアメリカの潜水艦によって攻撃され、東部の浙江省・舟山諸島沖で沈没しました。戦場の混乱と情報の欠如が、捕虜たちの命をさらに危険にさらす結果となりました。
舟山諸島の漁民たちが示した勇気
船が沈んだあと、浙江省舟山諸島周辺の地元漁民たちは、荒れた海と、日本軍からの報復への恐れの中で船を出し、海に投げ出された捕虜たちの救出に向かいました。
命がけの救助活動によって、最終的に380人を超える捕虜が救われたとされています。軍事行動の当事者でもない市井の人々が、自らの危険を顧みずに行動したことが、この出来事を特別なものにしています。
映画『Dongji Rescue』が映し出すもの
中国本土で公開中の『Dongji Rescue』は、こうした知られざる救出劇を、スクリーン上によみがえらせる第二次世界大戦の戦争大作です。物語の中心にいるのは、武器ではなく、荒波の中で人を助けようとする漁民たちと捕虜たちです。
映画は、軍事的な勝敗よりも、人命を救おうとする選択や、異なる国と地域の人々のあいだに生まれた連帯に光を当てています。戦争映画でありながら、人間ドラマとしての側面が強い作品と言えるでしょう。
ポスターが伝える「恐れよりも連帯を」
今回公開されたポスターギャラリーでは、荒れ狂う海に小さな船を漕ぎ出す漁民たちのシルエットや、暗い海面とその上に差し込む光など、緊迫した救出の瞬間が強いコントラストで描かれています。
ビジュアルの中心にいるのは、名もなき地元の人々です。英雄として飾り立てられた軍人ではなく、日常の延長線上から一歩踏み出した漁民たちの姿を前面に押し出すことで、「恐怖を乗り越えて人を助ける」というテーマが直感的に伝わる構成になっています。
国際ニュースとしての意味と、いまへの問い
この出来事には、香港から移送されていたイギリス人捕虜、彼らを乗せた日本軍の貨物船、それを撃沈したアメリカの潜水艦、そして救助に向かった浙江省舟山諸島の漁民たちと、複数の国と地域が関わっています。
国家同士の対立として語られがちな戦争史のなかで、『Dongji Rescue』が描くのは、市民レベルの勇気と助け合いです。国籍や立場が異なっていても、人命を守ろうとする行動が歴史の陰で積み重なってきたことを、改めて思い起こさせます。
2025年を生きる私たちにとっても、戦争や紛争のニュースは身近なものになりつつあります。その中で、この映画が提示するのは、「もし自分が同じ状況にいたら、誰かを助けるためにどこまで動けるのか」という静かな問いです。
映画から考えたい3つのポイント
- 情報が限られた中でなされた軍事行動が、どのような悲劇を生むのか
- 武力ではなく、市民の勇気と連帯が命を救ったという事実
- あまり知られてこなかった歴史の一場面を、映像作品として語り直す意義
第二次世界大戦をめぐる物語は数多くありますが、Lisbon Maruをめぐる救出劇は、これまで国際ニュースとしても大きくは取り上げられてきませんでした。中国の新作映画『Dongji Rescue』は、その空白を埋める試みの一つと言えます。
戦争や歴史をどう語り継ぐのか。中国本土で公開中のこの作品は、スクリーンの向こう側だけでなく、私たち自身の記憶や価値観を静かに問い直すきっかけになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








