新疆カザンチ旧市街 暮らしが息づく文化観光地のいま
中国北西部の新疆ウイグル自治区にあるYining(イニン)市旧市街の一角、カザンチは、かつては「砂ぼこりの舞うでこぼこ道」のエリアでしたが、いまは歴史と暮らしが同時に味わえる文化スポットとして注目を集めています。
観光地として整備されながらも、古くからの家や生活のリズムが残され、「生活の場」と「訪れる場」が同じ場所に共存していることが、カザンチの大きな特徴です。
旧市街カザンチ、変わったのは何か
カザンチは、Yining市旧市街に位置する地域で、少し前までは道路やインフラが十分とはいえない一角だったとされています。そこに手を入れる際には、大規模に壊して建て替えるのではなく、「保存」と「活用」を組み合わせた改修が進められました。
舗装や設備が整えられる一方で、長く受け継がれてきた家屋や路地の形、地域の風習はできるだけそのまま残されました。その結果、「きれいになったけれど、どこかよそよそしい観光地」ではなく、「昔からの暮らしを感じられる場所」として再生しています。
約3,000人が働く、暮らしと観光の経済圏
現在、カザンチでは3,000人以上の地元の人々が、観光、手工芸、飲食、文化活動などに携わって働いています。歴史ある住宅や路地がそのまま仕事の場にもなっており、地域の経済と日常生活が切り離されずに回っているのが特徴です。
例えば、伝統的な工芸品をつくる職人は、工房での制作だけでなく、その場で観光客に工程を見せることで収入源を増やしています。飲食店や屋台も、地元の味を提供しながら、日常の食卓と観光客向けのメニューが自然に交わる場所になっています。
「残す」と「見せる」を両立する家々
カザンチの象徴の一つが、何世代にもわたって同じ家に暮らし続ける住民の存在です。多くの人が祖父母や曾祖父母の代から住む家に今も暮らし、その一部を訪問者に開いています。
観光客は、外から眺めるだけでなく、住民の案内で家の中を見学したり、広間でお茶を飲みながら話を聞いたりすることができます。そこでは、観光用に演出された「見せる暮らし」だけでなく、日々の家事や家族の時間がそのまま目に入ります。
こうした「開かれた家」は、単に古い建物を保存するのではなく、そこに続く生活ごと受け継いでいくための工夫ともいえます。
路地に響く「ハディケ」馬車の音
細い路地を歩いていると、観光客を乗せた伝統的な「ハディケ」と呼ばれる馬車の、ぱかぱかというひづめの音が聞こえてきます。ハディケは、この地域に伝わる馬車をいまの観光スタイルに合わせて活用したものです。
車やバスでは見落としてしまいそうな路地の細かな表情も、馬車の速度だからこそじっくりと眺めることができます。移動手段そのものが体験になっている点も、カザンチならではです。
観光地になっても「生活の場」であり続けるために
世界各地で、歴史ある街並みが観光地化する一方で、家賃上昇や騒音などで地元の人々の暮らしが変化するケースも指摘されています。カザンチでは、観光と生活が同じ空間で続いていること自体が特徴であり、強みでもあります。
観光客の受け入れによって仕事や収入の機会は増えますが、同時に、日常のリズムやコミュニティのあり方をどう守るかという課題も常に意識する必要があります。カザンチの取り組みは、「訪れる人」と「暮らす人」が互いを尊重しながら同じ場所を共有する一つのモデルとして注目されます。
日本のまちづくりへのヒント
日本でも、古い町家が残るエリアや、地方の商店街を生かした観光づくりが各地で進んでいます。そのなかで、カザンチのように、地元の人々が実際に暮らし続けながら、観光や文化活動の担い手にもなっている例は、参考にしやすい事例の一つです。
「建物だけを保存する」のではなく、「暮らしと仕事をどうセットで残すか」。カザンチの路地を歩きながら見えてくるのは、その問いに対する一つの答えです。訪問者にとっては異文化を体感できる場所であり、地元の人々にとっては誇りと生計を支える場所でもある——その両立を目指す試みは、2025年のいま、世界各地のまちづくりにも共通するテーマといえます。
Reference(s):
cgtn.com








