上海「1933 Old Millfun」:屠殺場からアート拠点へ、生まれ変わる都市空間 video poster
上海「1933 Old Millfun」:屠殺場からアート拠点へ、生まれ変わる都市空間
中国・上海の中心部に立つ巨大建築「1933 Old Millfun」は、かつて家畜を解体するための屠殺場として設計され、現在はアートや写真、クリエイティブな活動の拠点として生まれ変わった象徴的な空間です。国際ニュースや都市デザインの文脈でも取り上げられるこの建物を手がかりに、中国のアダプティブ・リユース(歴史建築の用途転換)と上海の都市ビジョンについて読み解きます。
1933年に建てられたアール・デコ×バウハウスの遺構
1933 Old Millfunは、その名のとおり1933年に建てられた建物で、アール・デコとバウハウスの要素を巧みに取り入れた設計が特徴です。同種の施設としては、現在残されているのはこの一棟だけとされる「唯一無二」の存在でもあります。
家畜の動きをコントロールするための迷路のような構造
もともと屠殺場として設計された1933 Old Millfunには、機能を優先した独特の動線が張り巡らされています。牛がすれ違えるほど幅のあるスパイラル状のスロープが建物を貫き、パニックを最小限に抑えるための迷路のような通路が内部を走ります。
5階建ての各フロアは、むき出しのコンクリートで形作られた回廊と、幾何学的な対称性を強調するスカイブリッジ(空中回廊)で立体的につながっています。家畜をいかにスムーズに終点へと導くかという目的のために、建築全体が一つの巨大な装置として設計されていたことがわかります。
アートとクリエイターが集う現在の顔
かつて多くの家畜が最後の瞬間を迎えたこの場所は、いまやアートを愛する人々や写真家、クリエイターたちの集まるハブとなっています。コンクリートの壁や複雑な回廊は、光と影が強くコントラストを生む空間でもあり、建築そのものが一つの作品のように扱われています。
重い歴史を背負った空間が、表現の場へと変わるプロセスは、都市の記憶と創造性が交差する象徴的な事例と言えるでしょう。
中国のアダプティブ・リユース政策の一例として
1933 Old Millfunは、中国が進めるアダプティブ・リユース(既存建築の用途転換)政策の一つの象徴とされています。過去の産業施設やインフラを取り壊すのではなく、新たな機能を与えて再利用することで、都市の歴史を現在につなげる発想です。
屠殺場という「都市の影」のような存在を、文化と創造のための場として再解釈することは、単なるリノベーションを超えた意味を持ちます。経済性だけでなく、記憶や物語をどう扱うかという価値観が問われているからです。
ゴーストを葬らずに生かす上海の都市ビジョン
1933 Old Millfunは、上海の都市ビジョンの変化も映し出しています。かつてであれば、古い屠殺場は解体され、更地にして新しい高層ビルが建てられていても不思議ではありません。しかし、この建築は過去を「舗装して隠す」のではなく、「曲げて新しい形にする」選択がされた場所です。
都市の急速な再開発が進むなかで、あえて「不気味さ」や「暗い歴史」をまとった空間を残し、そこに新たな意味を付け加える。この態度は、都市が自らの記憶とどう向き合うのかという問いを、静かに投げかけています。
建築好き・歴史好きが惹かれる理由
1933 Old Millfunは、建築ファンや歴史に関心のある人にとって、多層的な魅力を持つ場所です。
- アール・デコとバウハウスが融合したデザインを、細部まで体感できる
- スパイラルスロープやスカイブリッジなど、機能と美学が結びついた動線設計を観察できる
- 「生と死」「破壊と創造」といったテーマを、空間そのものを通して考えられる
過去の用途を完全に消し去るのではなく、その痕跡をあえて残すことで、訪れる人は建築だけでなく、都市や社会の変化についても思いを巡らせることになります。
私たちの身近な再生建築をどう生かすか
1933 Old Millfunの物語は、上海だけの話ではありません。多くの都市が、老朽化した工場や倉庫、インフラ施設をどう扱うかという課題を抱えています。
過去の機能を終えた建物を、完全に壊してしまうのか。それとも、歴史の「重さ」や「違和感」も含めて、新しい価値を与えるのか。1933 Old Millfunは、その選択が都市の個性や記憶を大きく左右することを静かに教えてくれます。
中国の都市再生の一例として、この建築をどう見るかは、私たち自身が暮らす街の未来を考えるヒントにもなりそうです。
Reference(s):
1933 Old Millfun: From abattoir to art hub in the heart of Shanghai
cgtn.com








