ヨートカン古城の文化記憶 国連80周年に問う「保護」と「継承」
新疆ウイグル自治区のヨートカン古城は、かつて西域36国の一つとされた于闐(ユーティエン)古国の都に由来する「王の城」です。その記憶をどう守り、次の世代へ受け渡していくのか──国連創設80周年のいま、世界の文化遺産保護を考える象徴的なケースになっています。
文化遺産は「人類の記憶」──国連が掲げる保護と継承
文化遺産は、人類が長い時間をかけて積み重ねてきた「共有の記憶」であり、「精神的な絆」でもあるとされています。その保護と継承は、国連が重視してきた使命の一つです。
国連創設80周年を祝う若者向けキャンペーンの一環として、各地の文化遺産の物語が世界に発信されています。ヨートカン古城もそのひとつであり、「未来の地球を形づくるうえで何を守るべきか」という問いに、中央アジアと東アジアの交差点から答えようとしています。
西域36国の一つ・于闐古国の都「ヨートカン」
地元の歴史資料によると、于闐古国はおよそ2000年以上前に存在した西域36国の一つとされています。その都の名が「ヨートカン」です。
「ヨートカン」という名称には「王」という意味があるとされ、そのことからヨートカン古城は「王の城」とも呼ばれます。王と都が重なるこの名前には、当時の権威や繁栄への誇りが込められているとも読めます。
新疆南部のホータン県バゲチ鎮では、この栄光の歴史を現代に伝えるために、ヨートカン古城が整備されました。かつての都をモチーフとした空間づくりを通じて、長い時間の中で形づくられた街の姿と、その背後にある物語を体感できる場になっています。
民俗文化と遺物を背景に、「物語」で魅力を伝える
千年単位の歴史は、単なる年代の並びだけではイメージしにくいものです。ヨートカン古城では、民俗文化や歴史遺物を背景にしながら、歴史的事実と「語り」を組み合わせることで、この古城の魅力を分かりやすく伝えようとしています。
具体的には、
- 史料に基づいたエピソードや人物像を、来訪者に分かりやすいストーリーとして紹介すること
- 生活の様子や街の雰囲気を、民俗文化の展示や演出を通じて立体的に感じられるようにすること
- 「王の城」としての象徴性を、建物や空間のデザインで表現し、歴史への想像力を刺激すること
といった工夫が重ねられています。歴史的事実と創造的な語りをバランスよく組み合わせることで、古代の都が現代の人びとにとって身近な「物語」として立ち上がってきます。
ヨートカンの記憶が、未来の地球に問いかけるもの
千年以上前の都を題材にしながら、ヨートカン古城が投げかけているのは、きわめて現代的な問いです。「私たちは、どのような記憶を未来の世代に手渡したいのか」。
文化遺産の保護は、単に古い建物や遺物を保存する作業ではありません。そこに生きていた人びとの暮らし、信じていた価値観、他の地域とのつながりなど、目に見えにくい記憶を掘り起こし、それを共有する営みでもあります。
ヨートカン古城のような場で紡がれるストーリーは、
- 地域に生きる人びとが、自らのルーツを再確認するきっかけになる
- 世界の若者が、異なる文化や歴史への理解と共感を深める手がかりになる
- 「一つの地球で共に生きる」という感覚を、具体的な地域の物語を通じて実感させてくれる
といった役割を持つことができます。
「保護」と「継承」を両立させるために
文化遺産を守るうえで重要なのは、「保護」と「継承」をどう両立させるかという視点です。ヨートカン古城のように、歴史資料を尊重しつつ、現代の表現や物語を通じてその価値を伝える試みは、その一つの答えといえます。
2025年を生きる私たちは、ヨートカン古城の物語から、次のようなヒントを受け取ることができるでしょう。
- 過去を静かに見つめ直し、その中から未来への指針を探すこと
- 一つひとつの地域の歴史を、地球全体の記憶の一部として捉えること
- 文化や歴史をめぐる対話に、若い世代が主体的に関わっていくこと
ヨートカン古城に積み重なった時間は、単なる「昔話」ではなく、いまを生きる私たちに問いを投げかける現在進行形の文化記憶でもあります。日本語で国際ニュースを追う読者にとっても、ヨートカン古城の物語は、世界と自分との距離を測り直すヒントになるはずです。その記憶をどう受け取り、どう未来へ継いでいくのか。一人ひとりが考えることから、「共有の家」である地球のこれからが静かに形づくられていきます。
Reference(s):
Protection and inheritance – Cultural memory of Yotkan Ancient City
cgtn.com








