中国がブチルゴムとカナダ産菜種に反ダンピング予備決定
中国商務省が2025年8月に発表した反ダンピング調査の予備決定が、日本とカナダとの貿易に静かな影響を与えています。対象は、自動車タイヤなどに使われるハロゲン化ブチルゴムと、カナダ産菜種です。本記事では、決定の内容と背景、日本の読者が押さえておきたいポイントを整理します。
何が決まったのか:ブチルゴムと菜種が対象
中国は、カナダ・日本・インドから輸入されるハロゲン化ブチルゴムと、カナダ産菜種を対象に反ダンピング調査を行い、2025年8月に予備決定を公表しました。調査はいずれも2024年9月14日に開始されており、約1年をかけて進められてきたことになります。
ハロゲン化ブチルゴムへの反ダンピング措置
カナダと日本に最大40.5%の保証金
ハロゲン化ブチルゴムについて、中国商務省はカナダ産と日本産の製品に反ダンピングが存在すると認定しました。その結果、中国の反ダンピング関連規定にもとづき、輸入業者は2025年8月14日から、カナダおよび日本から輸入する該当製品に対して最大40.5%の保証金を中国税関に納付するよう求められています。
保証金は最終決定が出るまでの暫定的な措置で、のちに本格的な追加関税などに置き換えられる可能性があります。
インドからの輸入は調査打ち切り
一方、インドから輸入されるハロゲン化ブチルゴムについては、市場シェアが小さいことを理由に調査そのものを終了する決定が出されました。インド向けには、暫定措置も含め追加的な負担は課されません。
カナダ産菜種にも暫定措置:保証金率75.8%
同じ予備決定の中で、中国商務省はカナダ産菜種(なたね)についても、ダンピングが存在し、中国国内産業に実質的な損害を与えていると結論づけました。また、その損害とダンピングとの間に因果関係があると判断しています。
この結果、カナダ産菜種の輸入業者は、2025年8月14日から、中国税関に対して75.8%という高い保証金を納付する必要があります。こちらも最終決定までの暫定的な反ダンピング措置です。
ハロゲン化ブチルゴムとはどんな素材か
今回対象となったハロゲン化ブチルゴムは、ゴム製品の中でもやや専門的な素材ですが、私たちの日常生活とも無関係ではありません。主な用途は次の通りです。
- チューブレスタイヤの気密層
- 耐熱性が求められるタイヤチューブや内側ゴム
- 医薬品用の瓶の栓(ゴム栓)
- 防振パッドや衝撃吸収材
- 各種接着剤・シーリング材(すき間をふさぐ材料)
とくに自動車用タイヤ分野での使用比率が高いため、自動車産業やタイヤメーカーにとっては重要な素材です。中国市場向けに輸出している日本やカナダのメーカーには、コストや価格戦略の見直しが迫られる可能性があります。
反ダンピング措置とは何か
反ダンピングとは、ある国が、自国市場で通常の価格よりも不当に安い価格で輸出されていると判断した製品に対し、追加の関税などを課す仕組みです。目的は、自国の産業が不当な安値競争で損なわれるのを防ぐことにあります。
今回の決定では、中国の国内産業が、輸入品によって実質的な損害を受けていると認定されました。中国商務省は、調査が中国の関連法と世界貿易機関(WTO)のルールに従い、公平・公正・公開・透明の原則にもとづいて行われたと説明しています。
中国商務省の説明と今後のプロセス
商務省の報道官によると、現時点で示されたのはあくまで予備決定であり、最終決定に向けて調査と検証が続きます。予備決定では次の点が強調されました。
- 対象製品にダンピングが存在するという予備的な証拠がある
- 関連する中国国内産業が実質的な損害を受けている
- ダンピングと損害との間に因果関係がある
最終決定では、保証金の税率が引き下げられたり、逆に引き上げられたり、あるいは措置が取り消される可能性もあります。いずれにせよ、それまでは輸入業者にとって高い保証金負担が続くことになります。
日本の企業とサプライチェーンへの影響
日本から中国へハロゲン化ブチルゴムを輸出している企業にとって、最大40.5%の保証金は無視できない負担です。短期的には次のような動きが考えられます。
- 輸出価格の引き上げや、取引条件の見直し
- 中国以外の市場への販売シフト
- 中国国内や第三国での生産体制の検討
一方、中国国内のタイヤメーカーなどから見ると、輸入品の価格上昇により、原材料コストが高まる可能性があります。ただし、国内生産が拡大すれば、その分を補う余地もあります。
カナダ産菜種についても、保証金率75.8%はかなり高く、輸入量が減少する可能性があります。これは中国の油脂・飼料市場だけでなく、世界の農産物市場全体に波及する余地があります。
日本の読者が押さえておきたいポイント
今回の反ダンピング予備決定は、単なる貿易ニュースにとどまらず、サプライチェーンや企業戦略に関わるテーマでもあります。要点を整理すると、次の通りです。
- 対象はハロゲン化ブチルゴム(カナダ・日本産)とカナダ産菜種
- ブチルゴムには最大40.5%、菜種には75.8%の保証金が課される
- インド産ブチルゴムへの調査は、市場シェアが小さいとして終了
- 中国は調査が自国法とWTOルールに沿って行われたと説明している
- 日本の化学メーカー、自動車・タイヤ産業、農産物市場にも間接的な影響が出る可能性がある
今後の最終決定や、各国・企業の対応しだいで、東アジアと北米をまたぐ貿易の流れがどう変わるのか。日本としても、中長期的な視点で注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
China announces anti-dumping rulings on butyl rubber from 3 countries
cgtn.com








