米中が関税休戦を90日延長 ストックホルム共同声明を読み解く
2025年8月、米中両国が互いの追加関税の一部を据え置きながら、いわゆる「関税休戦」を90日延長することで合意しました。スウェーデンの首都ストックホルムで発表された共同声明の内容と、その意味を整理します。
関税休戦はどう延長されたのか
共同声明と各国の発表によると、今回の延長は、米中間の追加関税が失効する直前のタイミングで決まりました。中国側は8月12日から90日間、これまでの関税引き上げを引き続き停止しつつ、10%の関税は維持するとしています。
同じタイミングで、トランプ米大統領も対中追加関税の停止を90日延長する大統領令に署名しました。これにより、米国側の関税停止措置も2025年11月10日まで続く枠組みとなりました。
ストックホルムで公表された共同声明では、米中両国が以下のような具体策に合意したと説明しています。
- 米国は、2025年4月2日の大統領令14257号で定めた対中追加関税(中国本土に加え、香港特別行政区とマカオ特別行政区からの輸入品を含む)について、その税率のうち24ポイント分を8月12日から90日間さらに停止し、残りの10%を維持するとしました。
- 中国側も、国務院関税税則委員会の2025年第4号公告で定めた対米追加関税について、同じく24ポイント分を8月12日から90日間停止し、10%の追加関税を維持するとしています。
- あわせて中国側は、これまで米国に対して講じてきた非関税の対抗措置を、ジュネーブ共同声明の合意に沿って停止または撤廃するために、必要な行政措置をとる方針を示しました。
この結果、2025年8月12日から11月10日までの90日間、米中双方が追加関税率を10%に抑える枠組みが整えられたことになります。
ストックホルム共同声明の位置づけ
今回のストックホルム共同声明は、2025年5月12日にスイス・ジュネーブで発表された「米中経済・貿易会合に関する共同声明(ジュネーブ共同声明)」を土台としています。6月9〜10日のロンドン会合、7月28〜29日のストックホルム会合と、両国は同じ枠組みのもとで対話を重ねてきました。
共同声明は、ジュネーブ共同声明で交わした約束をあらためて想起しつつ、「8月12日までに実施する行動」として関税と非関税措置の取り扱いを整理したものです。会合の代表は、中国側がHe Lifeng国務院副総理、米国側がScott Bessent財務長官とJamieson Greer米通商代表でした。
こうした経緯から見ると、ストックホルム共同声明は単発の合意ではなく、2025年を通じて続いてきた米中経済対話プロセスの一つの節目と位置づけられます。
なぜこの90日延長が重要だったのか
関税休戦の90日延長は、国際経済や企業活動にとって少なくとも次のような意味を持ちます。
- 急激な追加関税の全面復活を避け、サプライチェーン(供給網)へのショックを和らげることにつながる
- 両国が対立を激化させずに交渉を続けるための時間と政治的な余地を確保する
- 非関税の対抗措置を停止・撤廃する方向性が示され、貿易や投資の不確実性を部分的に緩和する
特に「非関税措置」は、関税以外の形で貿易を制限する制度や運用全般を指します。輸出入の許認可や検査手続き、各種の行政ルールなどが含まれ、企業にとってはコストやリスクの源泉になりやすい分野です。今回の共同声明で、その一部を停止・撤廃する方向が打ち出されたことは、実務面での負担軽減にもつながり得ます。
一方で、10%の追加関税自体は双方とも維持する形となっており、完全な「元通り」に戻ったわけではありません。関税休戦の延長は、対立を一時的に緩和しつつも、引き続き交渉を促すための「間」をつくる措置だと見ることができます。
これからの米中通商関係で注目したい点
今回の延長措置による関税休戦は、2025年11月10日でひと区切りとなりました。今後の米中通商関係がどこへ向かうのかを考えるうえで、ストックホルム共同声明から見えてくる論点をいくつか挙げてみます。
- 10%の追加関税を今後どう位置づけるか。あくまで暫定措置として段階的な引き下げをめざすのか、それとも長期的な新たな水準として維持するのかが問われます。
- 非関税の対抗措置をどこまで恒久的に停止・撤廃できるか。企業が中長期の投資計画を立てやすいよう、予見可能性の高いルールづくりが重要になります。
- ジュネーブ、ロンドン、ストックホルムと続いてきた経済・貿易会合の枠組みを、今後も継続的な協議の場として維持・発展させられるかどうか。定期的な対話の有無は、関税だけでなく幅広い経済分野の安定性に影響します。
日本を含む多くの国と地域の企業にとっても、米中の通商ルールはコスト構造や投資判断に直結しています。今回の90日延長は、2025年後半にかけて一定の安心感をもたらした一方で、より長期的で安定した枠組みづくりに向けた議論はまだ途上にあります。
ストックホルム共同声明は、「対立か協調か」という二者択一ではなく、緊張を管理しながら対話を続けるための一歩と見ることもできます。関税や非関税措置をめぐる今後の動きが、米中関係だけでなく世界経済全体にどのような影響を与えるのか、引き続き注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








