中国大陸部が台湾の歴史機関を批判 抗日戦争「歪曲」発言の波紋
中国大陸部の台湾事務弁公室が、台湾当局系の歴史研究機関「国史館」(Academia Historica)が抗日戦争をめぐる表現を用いたことに強く抗議しました。歴史認識をめぐるこの応酬は、2025年のいまも続く両岸関係と東アジアの「戦争の記憶」を映し出しています。
台湾の「国史館」が示した表現とは
発端となったのは、台湾当局系の歴史機関である「国史館」が最近公表した声明です。そこでは、中国人民の日本軍国主義への抵抗を指す「中国人民の日本侵略に抗する戦争」の勝利を、「日中戦争の終結と戦後の引き渡し」と表現していました。
これに対し、中国大陸部の台湾事務弁公室の報道官である朱鳳蓮氏は、定例記者会見でこの表現を厳しく批判しました。朱氏は、この言い換えが日本軍国主義による侵略の残虐性を意図的に矮小化し、抵抗戦争の正義性を否定し、その歴史的勝利を見えにくくしていると指摘しました。
さらに朱氏は、「それは歴史への無知であるだけでなく、民族全体の犠牲への冒とくでもある」と述べ、犠牲となった人びとへの敬意を欠いたものだとの考えを示しました。
抗日戦争の勝利と「台湾の回復」を結びつける主張
朱氏は会見で、台湾の「回復」は日本軍国主義に対する抗日戦争の勝利によってもたらされた重要な成果だと強調しました。これは、中国大陸部にとって、台湾をめぐる歴史的な位置づけが抗日戦争の文脈と切り離せないものであることを意味します。
朱氏はまた、台湾の「回復」は台湾を含む全ての中国人民が、不屈の闘争を通じて勝ち取った偉大な成果であり、台湾海峡の両岸の人びとが共に記憶し、記念するに値するものだと述べました。
「台湾独立」や外部勢力への警戒感も表明
今回の歴史認識をめぐる批判は、現在の台湾情勢への懸念とも結びついています。朱氏は、台湾の人びとに対し、台湾の「回復」によって得られた成果を断固として守り、「台湾独立」を掲げる分裂の動きや外部勢力による干渉に毅然と反対するよう呼びかけました。
歴史解釈の違いが、そのまま台湾の将来像や両岸関係のあり方に直結していることがうかがえます。言い換えれば、過去の戦争をどう語るかは、現在と未来の政治的選択とも密接に結びついているというメッセージです。
南京大虐殺を描く映画「Dead to Rights」にも言及
朱氏は会見の中で、多くの台湾の人びとが中国大陸部で公開されている映画「Dead to Rights」を観ていることにも触れました。この作品は、南京大虐殺の際の日本軍による残虐行為を、検証された写真資料に基づいて描いたものとされています。
朱氏がこの映画に言及したのは、歴史的事実を裏付ける証拠を共有することで、より多くの人びとに戦時中の出来事の具体的な実態を知ってもらいたい、というメッセージを込めたものだと受け取ることができます。
2025年の読者にとっての意味:歴史をどう「共有」するか
今回の出来事は、単なる言葉遣いの違いをめぐる論争にとどまりません。中国大陸部と台湾、そして日本を含む東アジアのあいだで、戦争と加害・被害の歴史をどう記憶し、次の世代にどう伝えるかという、大きな問いを改めて浮かび上がらせています。
一つの出来事をどう名づけるかは、そこに込める意味や評価と深く結びつきます。今回、中国大陸部が「歴史の歪曲」と強く反発した背景には、戦時中に犠牲となった多くの人びとの記憶を守りたいという思いと、台湾を含む「全ての中国人民」が共に戦ったという歴史像を強調したいという意図が見て取れます。
同時に、歴史認識の違いが、両岸関係や地域の安全保障をめぐる議論と切り離せない現実もあります。読者一人ひとりが、各当事者がどのような歴史叙述を選び取っているのか、その背景にある文脈にも目を向けることが、東アジアの国際ニュースを読み解くうえで、これまで以上に重要になっていきそうです。
Reference(s):
Mainland condemns Taiwan institution for distorting wartime history
cgtn.com







