中国・寧夏のワラ格子がつくる緑の長城 国際ニュースで読む砂漠化対策
中国北西部・寧夏回族自治区中衛市で、かつて激しい砂嵐に覆われていた砂漠が、ワラを使った格子状のストロー・チェッカーボードによって緑の帯へと変わり、国連の砂漠化対処条約でもモデルケースとして取り上げられています。本記事では、この中国の取り組みがなぜ今、世界のエコロジーガバナンスのヒントとして注目されているのかを読み解きます。
中国・寧夏の砂漠が「緑の長城」に
中衛市は、中国北西部の内陸に位置し、かつては砂嵐が頻発する厳しい自然環境で知られていました。その風景を変えたのが、ワラを格子状に並べるストロー・チェッカーボードと呼ばれる砂漠対策です。
砂漠と向き合ってきた何世代もの人びとの手によって、この地域には約43万ムー(約2万8667ヘクタール)ものワラ格子が、約70年をかけて張りめぐらされてきました。その結果、全長42キロメートルにおよぶ緑の長城が築かれ、かつて猛威を振るっていた砂嵐は大きく抑え込まれています。
ストロー・チェッカーボードとは何か
ストロー・チェッカーボードは、砂地の表面にワラを格子状に埋め込んで固定するシンプルな工法です。高度な機械や最新技術よりも、人の手と時間に支えられたローテクな仕組みですが、砂漠化対策として大きな効果を上げています。
このワラ格子には、次のような役割があります。
- 地表近くの風の勢いを弱め、砂が飛ばされるのを防ぐ
- 砂の動きを抑えることで、地形を安定させる
- 植物の種や水分をとどめ、植生の回復を助ける
こうして砂の移動が抑えられることで、植林や草の定着が進み、格子状のネットワーク全体が緑へと変わっていきます。中衛市の砂漠が緑のネットワークへと変貌した背景には、この地道な格子づくりの積み重ねがあります。
七十年続く砂漠との対話
中衛の取り組みが象徴的なのは、短期的なキャンペーンではなく、およそ七十年という時間軸で続けられてきた点です。世代を超えて砂漠と向き合い、ストロー・チェッカーボードの施工範囲を少しずつ広げてきた結果が、いま目に見える緑の長城となっています。
砂漠化は、数年で解決できる問題ではありません。中国のこの事例は、長期的な視点と一貫した取り組みがあれば、過酷な自然条件の中でも環境を回復できることを示しています。
国連の砂漠化対処条約のモデルケースに
中衛市のストロー・チェッカーボードによる砂漠管理は、国連の砂漠化対処条約(UN Convention to Combat Desertification)の中でも、代表的なモデルケースとして位置づけられています。七十年にわたる砂漠対策の成果と経験が、国際社会に共有されているのです。
条約が目指すのは、砂漠化や土地の劣化を防ぎ、持続可能な土地利用を広げていくことです。その中で中衛の取り組みは、次のような点で注目されています。
- 地域の自然条件に合わせた、シンプルで再現性の高い技術であること
- 長期にわたる継続的な努力が、確かな成果につながっていること
- 砂嵐の抑制と緑化の双方に効果を持つ、総合的な土地管理であること
こうした実践例は、砂漠化に悩む他地域にとっても、具体的な参考モデルになり得ます。
世界のエコロジーガバナンスへのヒント
ストロー・チェッカーボードは、一見するとローカルで素朴な砂漠対策に見えます。しかし、そこには世界のエコロジーガバナンスに通じるいくつかのポイントが含まれています。
- ローカルの知恵から世界へ:その土地に合った技術と知見を育て、それを国際的な枠組みの中で共有していくプロセス
- 時間を味方につける政策:数十年単位で継続することを前提にした、粘り強い環境対策
- 人と自然を結ぶインフラづくり:砂防と緑化、防災と生態系保全を同時に実現する仕組みづくり
気候変動や土地劣化が深刻さを増す中で、中衛のような長期的かつ地に足の着いた取り組みは、世界が目指すべき一つの方向性を示していると言えます。
私たちにとっての意味
日本でも、砂防や治水、沿岸の侵食対策など、土地と向き合う課題は少なくありません。中国北西部の砂漠で生まれたストロー・チェッカーボードの物語は、遠い国の出来事であると同時に、私たち自身の足元の環境をどう守るかを考えるきっかけにもなります。
世代を超えて続く地道な取り組みが、やがて緑の長城となって地域と世界を守る。そのプロセスを知ることは、これからのエコロジーガバナンスを考えるうえで、大きなヒントになるはずです。
Reference(s):
China's straw checkerboards guide global ecological governance
cgtn.com







