中国、新エネルギー車のスマート機能に厳格安全ルール案 Xiaomi事故が契機
中国で急成長する「スマート新エネルギー車(NEV)」をめぐり、安全ルールを大幅に見直す動きが強まっています。背景には、2025年に相次いだ事故と、その象徴となったXiaomi(シャオミ)の電気自動車事故があります。
中国当局が「スマートNEV」向け新ルール案
中国の市場監督当局であるState Administration for Market Regulation(SAMR)と、工業と情報技術を担当するMinistry of Industry and Information Technology(MIIT)は、知能化された運転支援機能を備えた新エネルギー車(NEV)を対象に、安全規制を強化する草案を公表しました。
草案は、リコール(回収・無償修理)の要件、生産の一貫性、ソフトウエアの更新、そして販売時のマーケティングまでを網羅しており、従来よりも厳格なルールを定めています。通達では、パブリックコメント(意見募集)の締め切りを2025年9月15日とすることが示されました。
新ルール案のポイント:安全説明からサイバー対策まで
今回の草案が目指すのは、急速に高度化する「スマートNEV」のリスクを、車両の設計段階から販売・運用までトータルに管理することです。主なポイントは次の3つに整理できます。
1. 安全説明とドライバー監視の強化
草案は、自動車メーカーに対し、安全上の注意点や運転支援機能の限界を、運転者に分かりやすく、目立つ形で表示するよう求めています。さらに、運転者の状態を監視するシステムや、必要なときにシステム側から介入できる仕組みの導入など、「人」と「システム」の連携を強めることを重視しています。
2. リコール、ソフト更新、生産一貫性の厳格管理
知能化されたNEVでは、事故の原因が物理的な部品だけでなく、ソフトウエアの不具合や設定ミスにある場合も少なくありません。草案は、こうした不具合に迅速に対応するため、リコール制度の運用を強化し、生産段階で仕様が一貫しているかどうかを厳しくチェックする仕組みを定めています。
また、ソフトウエア更新(アップデート)についても、内容や影響を適切に管理し、安全性に関わる変更があった場合には、責任を持って説明・対応することを求めています。
3. サイバーセキュリティと広告表現のルールづくり
草案は、システムの欠陥や脆弱性(セキュリティ上の弱点)を突いた攻撃による事故を防ぐため、サイバーセキュリティの強化も求めています。ネットワークにつながる車が増える中で、ソフトウエアの安全性は交通安全そのものと直結するテーマになりつつあります。
同時に、運転支援機能を「完全自動運転」であるかのように誤解させる広告や宣伝を禁止する方針も示されています。運転者がシステムを過信しないよう、マーケティングの段階から期待値を適切にコントロールする狙いがうかがえます。
Xiaomi SU7の死亡事故が転機に
こうした動きの背景には、2025年に起きた一連の事故があります。中でも注目を集めたのが、Xiaomiの電気セダン「SU7」が運転支援モードで走行中に起こした事故です。この事故は3月に発生し、3人が死亡しました。
それに先立つ1月には、駐車支援機能のソフトウエア不具合をめぐり、一部車両のリコールも行われていました。運転支援機能の不具合や、その使い方をめぐるトラブルが相次いだことで、スマートNEVの安全性と、その販売・運用のあり方に対する社会の関心が一気に高まりました。
今回の草案は、こうした事案を受けて、運転支援技術をどう設計し、どう説明し、どう管理するのかという問いに、制度面から応えようとする試みだと言えます。
スマートEV時代の「責任の分担」をどう考えるか
運転支援機能が高度になるほど、「どこまでがシステムの責任で、どこからが運転者の責任なのか」という線引きは難しくなります。今回の草案は、少なくとも次の2点を明確にしようとしているように見えます。
- 運転者はあくまで運転の主体であり、システムはそれを支援する存在であること
- メーカーと開発者は、ソフトウエア更新やマーケティングも含めて、安全確保の責任を負うこと
安全説明の義務づけや誤解を招く宣伝の禁止は、「人がシステムをどう認識し、どう使うか」という部分に踏み込んだルールでもあります。技術だけでなく、言葉や情報の伝え方も安全対策の一部だという考え方がにじみます。
日本の読者にとっての示唆
スマートフォンのようにソフトウエアが常に更新される電気自動車は、もはや単なる移動手段ではなく、「走るコンピューター」とも言える存在になりつつあります。今回の中国の動きは、そうした時代にふさわしい安全ルールをどう設計するかという、より広い問いを投げかけています。
高度な運転支援機能を使うとき、私たちはどこまでシステムを信頼し、どこからは自分の判断でブレーキを踏むべきなのでしょうか。海外で議論が進む今こそ、自分自身の運転習慣や、テクノロジーとの付き合い方を見直すきっかけにしてみてもよさそうです。
Reference(s):
China drafts stricter safety rules for smart NEVs after Xiaomi crash
cgtn.com








