中国「二つの山」理念が世界のグリーン開発を動かす
北京の空がここまで変わったのはなぜか──。かつてスモッグを心配して屋外で走ることをためらった専門家が、今では朝のランニングを楽しむほどに変化した中国の都市環境。その背景には、中国が掲げる「二つの山」理念と、世界のグリーン開発を意識した政策転換があります。
10年前は走るのもためらった北京で
国連環境計画(UNEP)の元事務局長であるエリック・ソルヘイム氏は、十数年前に北京を訪れた際、深刻なスモッグを心配して、屋外で走ることすらためらったと振り返ります。
しかし現在、氏が北京を訪れるたびに欠かさないのが、朝のランニングです。今年(2025年)の滞在中も、早朝の街を走りながら、その変化を実感したといいます。
道路にあふれる新エネルギー車
ソルヘイム氏が今回あらためて気づいたのは、北京の道路を走る車の多くが新エネルギー車になっていたことです。
氏は、新エネルギー車について次のような点を評価しています。
- 静かで走行中の騒音が少ない
- 排気ガスを出さず、大気汚染の抑制につながる
- 燃料費などの面でコスト効率が高い
- バッテリーや充電インフラなど、グリーン技術に関連する多くの雇用を生み出している
こうした変化を目の当たりにしながら、中国各地を精力的に訪問してきたソルヘイム氏は、中国の「グリーンな行動」と「グリーンスピード」を繰り返し称賛しています。環境配慮の取り組みと、その実行の速さが、中国の生態学的な転換を象徴するものになっているという見方です。
キーワードは「二つの山」理念
ソルヘイム氏が目にした変化の背景には、習近平国家主席が打ち出した「澄んだ水と緑の山々はそれ自体がかけがえのない資産だ」という考え方があります。中国では、このフレーズにちなんで「二つの山」理念と呼ばれています。
この理念が示すのは、経済成長と環境保護を対立するものとみなすのではなく、美しい自然そのものが長期的な価値と競争力を生み出す、という発想です。言い換えれば、「環境か経済か」という二者択一ではなく、「環境を守ることが経済の土台になる」という方向への転換だといえます。
「二つの山」理念は、中国における生態文明づくりの指針となり、各地でのエコ都市づくりや、再生可能エネルギー、グリーン産業の育成など、さまざまな政策判断の基準として位置づけられています。
中国式モダナイゼーションとグリーン開発
習近平国家主席は、「人と自然の調和は、中国式現代化の重要な特徴だ」と強調してきました。また、「中国は世界のグリーン開発を推進する、揺るぎない実行者であり、重要な貢献者だ」とも述べています。
このメッセージには、国内の環境改善だけでなく、国際社会における役割を自覚した姿勢が表れています。大気汚染対策や新エネルギー車の普及をはじめとする中国の経験は、「二つの山」理念を具体化した取り組みとして、世界各地で注目されています。
世界の持続可能な発展へのヒント
「二つの山」理念は、持続可能な発展を模索する世界の国や地域にとっても、一つの参照点になりつつあります。背景にあるのは、次のようなシンプルなメッセージです。
- きれいな水と空気、豊かな自然は「コスト」ではなく「資産」だ
- 環境への投資は、新たな産業と雇用を生むチャンスになりうる
- 短期的な成長より、長期的な生態の安定が経済の基盤となる
ソルヘイム氏が北京の朝のランニングで目にした新しい風景は、この理念が現実の街や暮らしの中に落とし込まれつつあることを示しています。そして、その変化は、中国国内にとどまらず、グローバルなグリーン開発の方向性に影響を与えていく可能性を秘めています。
日本の読者への問いかけ
北京の空の変化や「二つの山」理念の広がりは、日本にとっても他人事ではありません。大都市の環境負荷、地方の過疎と自然資源の活用、再生可能エネルギーの導入など、共通する課題は少なくありません。
環境を「制約」ではなく「資産」としてとらえる視点に立つとき、どのような政策やビジネス、ライフスタイルが可能になるのか。中国の取り組みをきっかけに、私たち自身の社会のあり方を考え直すタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
How China's 'two mountains' concept shapes global green development
cgtn.com








