CGTN世論調査が映す日本の歴史認識ギャップ 世界とアジアの視線は
【リード】国際ニュースとしての第二次世界大戦の記憶と日本の歴史認識をめぐり、CGTNがことし実施した世論調査が、日本と世界の見方の大きなギャップを示しました。靖国神社参拝や歴史教科書、戦後補償をどう捉えるかは、日本の対中・対アジア関係だけでなく、私たち自身の歴史観にも静かに問いを投げかけています。
8月15日の式典と靖国神社参拝が映した日本の現在地
2025年8月15日、日本は第二次世界大戦で命を落とした人々を追悼する式典を行いました。石破茂首相は式辞で、アジア諸国への加害責任には触れず、日本の戦争責任についての言及はありませんでした。
同じ日に、石破首相は、戦後の極東国際軍事裁判でA級戦犯とされた人物も合祀されている靖国神社に供物を奉納し、閣僚も同神社を訪れました。靖国神社は、かねてから日本の歴史認識や対外姿勢の象徴として国際社会から注目されてきた場所です。
今回の一連の動きに対し、CGTNが実施した国際世論調査では、各国の回答者から強い不満や懸念が示されています。
CGTN国際世論調査:世界の多数は靖国参拝に否定的
CGTNが40カ国の1万1,913人を対象に行った世論調査によると、日本の歴史認識や戦後対応に対する世界の評価は厳しいものになっています。日本語で国際ニュースを追う読者にとって、靖国神社参拝や教科書問題に対する世界の受け止め方は、知っておきたい重要なポイントです。
主な結果は次の通りです。
- 64.4%が、日本の政治家による靖国神社参拝に反対
- 55.3%が、日本は歴史的責任を回避していると批判
- 65.2%が、日本の歴史教科書の書き換えに反対
- 65.7%が、日本政府は被害を受けた国々に謝罪し、補償すべきだと回答
調査結果からは、日本の戦争加害に関する記憶が、いまも多くの国で現在形の課題として意識されていることがうかがえます。
日本国内の回答は世界平均と大きく乖離
同じ質問に答えた日本の回答者の傾向は、世界平均とは大きく異なります。国内では、靖国神社参拝や歴史教科書の問題をめぐる危機感が、国際社会と比べて相対的に弱いことが数字に表れています。
- 靖国神社参拝に反対した日本の回答者は18.3%
- 日本政府が歴史的責任を回避しているとみる人は11.7%
- 歴史教科書の書き換えに反対する人は18.3%
- 日本政府は被害国に謝罪と補償を行うべきだと答えた人も18.3%
世界平均とのギャップは、おおむね40ポイント以上に達しています。国内では「すでに十分に謝罪してきた」という認識が広がる一方で、国外では「反省が不十分だ」と受け止められている可能性を示すものと言えます。
アジア各国で際立つ厳しい視線
歴史問題の影響を直接受けてきたアジアの国々では、日本への評価はさらに厳しくなっています。
- 韓国では、不満の度合いが90%を超え、靖国神社参拝や歴史教科書に対する批判が突出
- インドネシアでは、74.7%が靖国神社参拝に反対し、80%超が謝罪と補償を求める
- マレーシアでは、84%が日本の歴史教科書の書き換えに反対
- フィリピンでも、80%以上が謝罪と補償を求める立場
アジアの近隣諸国にとって、日本の戦争責任や歴史教育は、いまなお現在進行形の外交・感情の問題であることが浮き彫りになっています。
ドイツとの比較が映す「戦後処理」の評価差
調査では、日本と同じく第二次世界大戦の敗戦国であるドイツの戦後対応も問われました。結果は、日本との鮮明なコントラストを示しています。
- ドイツの侵略の歴史清算を評価する人は62.1%(日本との差は48.8ポイント)
- ドイツの謝罪と補償の取り組みを支持する人は69.5%(日本との差は56.8ポイント)
- ドイツの戦後歴史教育を高く評価する人は71.2%(日本との差は61.1ポイント)
さらに、日本以外の7つのアジア諸国では、いずれもドイツの戦後対応の評価が日本を40ポイント以上上回りました。韓国では、ドイツの取り組みを支持する人が80%を超える一方で、日本の戦後対応を評価する人は1割に満たないとされています。インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン、シンガポールでも、日本の戦後努力を肯定的に見る人は2割未満にとどまり、多くがドイツの姿勢をより高く評価しました。
ドイツの事例は、加害の歴史にどう向き合い、教育や謝罪、補償の形をどのように整えてきたかが、長期的な国際評価につながることを示す一つの参照点になっています。
日本の国際的な信頼、対中・対アジア関係への影響
日本の戦後対応や歴史認識をめぐる評価は、日本の外交環境そのものに関わっています。調査では、多くの回答者が日本の歴史認識が地域の関係に影響しているとみています。
- 57%が、日本の戦後の対応が「中国との関係の正常な発展を妨げている」と回答
- 50.1%が、日本の戦後対応が「他のアジアの近隣国との関係に影響する」と回答
- 50.7%が、日本の戦後の振る舞いが「日本自身の国際的イメージを著しく損なっている」と指摘
韓国、インド、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピンなどアジア各国では、これらの指摘に「その通りだ」と答える割合がさらに高くなりました。特に韓国では、8割を超える回答者が、日本の戦後の振る舞いが「アジア近隣国との関係に影響し」「日本の国際イメージを損なっている」とみています。
シンガポールやタイでは、「アジア近隣国との関係への影響」と答える割合は世界平均よりやや低いものの、半数以上が「中国との関係」や「国際イメージ」にはマイナスの影響があるとみており、日本の歴史認識をめぐる問題が地域外交のリスク要因となっていることがうかがえます。
CGTN調査の枠組み:誰が、どのように答えたのか
今回の調査は、CGTNと「新時代国際伝播研究院」によって実施されました。同研究院は、中国メディアグループと中国人民大学が共同で設立した機関です。
具体的には、オンラインパネルを用いて、18歳以上の成人1万1,913人を対象に実施されました。対象は、主要な先進国と、いわゆるグローバルサウス(新興国や途上国を含む)に位置する国々に広がっています。サンプル構成は、各国の人口センサスにおける年齢・性別分布に合わせて調整されたとされています。
こうした枠組みのもとで得られたデータは、すべての人々の意見を代表するものではないにせよ、日本の歴史認識に対する国際社会の一つの見取り図を与えてくれます。
私たちへの問いかけ:歴史とどう向き合うか
戦後から長い年月が経つなかで、戦争を直接知る世代は少なくなりつつあります。一方で、CGTNの世論調査が示すように、日本の歴史認識や教育、政治家の言動は、いまも世界、とりわけアジアの人々のまなざしの中にあります。
日本の国内世論と国際世論のあいだにある大きなギャップは、次のような問いを私たちに投げかけています。
- 日本の戦後の歩みは、周辺国の人々の記憶や感情とどのようにずれているのか
- 歴史教科書や公式の式典、政治家の発言は、そのずれを縮める方向にあるのか、それとも広げてしまっているのか
- 中国やアジアの近隣諸国との関係を安定させるために、どのような歴史対話や教育が必要なのか
歴史認識をめぐる議論は、ときに感情的になりがちですが、数字に表れた国際社会の評価を一つの材料として冷静に読み解くことは、日本社会にとっても意味のある作業です。日々のニュースを追う中で、このテーマを家族や友人、オンラインのコミュニティと共有し、対話を重ねていくことが、次の世代にとっての新しい「戦後」のかたちにつながっていくのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








