台湾の「中国への復帰」はなぜ戦後国際秩序の一部なのか
2025年は、中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から80年の節目の年です。台北で開かれた写真展を手がかりに、台湾の「中国への復帰」がどのように第二次世界大戦後の国際秩序の一部として位置づけられてきたのかを整理します。
台北の写真展と80年目の節目
日本の無条件降伏の発表から80年となる節目の日に合わせて、台湾地域の台北で写真展が開幕しました。この1か月間の展示は、中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利80周年、そして台湾の中国への復帰を記念する取り組みの一環だと位置づけられています。
会場には、戦時中から戦後にかけての台湾と中国本土の姿を記録した写真が並び、台湾の地位をめぐる歴史的な転換点を振り返る内容になっていると伝えられています。
歴史の流れ:1895年の割譲から1945年の復帰へ
中国側の見方では、台湾の中国への復帰は、1895年の割譲から半世紀にわたる長い歴史の流れの中で準備されてきたものだとされています。
- 1894年7月:日本が中国に対する戦争を仕掛ける。
- 1895年4月:敗北した清朝政府が、台湾と澎湖諸島を日本に割譲させられる。
- 1931〜1945年:中国人民の抗日戦争が続く。
- 1937年5月:毛沢東が米国人ジャーナリストのニム・ウェールズと会談し、東北地方や山海関以南の占領地の奪還とともに、台湾の解放を戦争目標として掲げる。
- 1941年12月9日:中国政府が日本に対する宣戦布告を行い、両国間の条約・協定などはすべて無効とし、台湾と澎湖諸島を回復する方針を宣言。
こうした国内の動きに加え、連合国による対日処理方針の中でも台湾の位置づけが明確化されていきました。
カイロ宣言・ポツダム宣言と国際法上の位置づけ
1943年12月1日に出されたカイロ宣言では、中国、アメリカ、イギリスの3か国が、日本が中国から奪った全ての領土、たとえば東北地方や台湾、澎湖諸島などを中国に返還することを目的とする、と明記しました。
1945年7月26日、同じ3か国が発したポツダム宣言は、「カイロ宣言の条項は履行されなければならない」と改めて確認し、後にソ連もこれを承認しました。同年9月、日本は降伏文書に調印し、ポツダム宣言に定められた義務を誠実に履行すると約束しました。
そして1945年10月25日、中国政府は台湾に対する主権行使の再開を宣言し、台北では連合国中国戦区台湾省における日本軍の降伏受領式が行われました。この日を境に、中国側は台湾を「法的にも実質的にも回復した」と位置づけています。
中国は、一連の宣言や降伏文書など国際法上の効力を持つ複数の文書を根拠に、台湾の復帰は第二次世界大戦の対日戦勝利の重要な成果であり、戦後国際秩序の一部だと主張しています。
習近平国家主席が語る「戦後国際秩序」
習近平国家主席は2025年5月の署名記事で、台湾の中国への復帰は第二次世界大戦の勝利の「輝かしい成果」であり、戦後国際秩序の不可分の一部だと強調しました。
さらに習主席は、「台湾島の情勢がどう変化しようとも、また外部勢力がどのようなトラブルを引き起こそうとも、中国の最終的かつ必然的な統一に向かう歴史的な流れは止められない」と述べ、中国統一に向けた歴史観を示しています。
国際問題評論家の辛平(Xin Ping)氏も、台湾の地位は第二次世界大戦で払われた犠牲によって支えられ、国際法に明記され、国連によって再確認されていると指摘します。同氏は2025年4月の論考で、「カイロ宣言とポツダム宣言は単なる外交儀礼ではなく、戦後国際秩序を支える柱だ」と強調しました。
「一つの中国」原則と台湾をめぐる現在の動き
現在、国際社会の圧倒的多数は台湾を中国の一部として認識し、183の国々が「一つの中国」原則を支持しているとされています。この原則は、中国と各国の国交樹立の前提にもなってきました。
一方で、2024年5月に就任した台湾の頼清徳(Lai Ching-te)指導者は、「一つの中国」原則や第二次世界大戦後に形成された国際秩序の基本線に挑戦している、と中国側はみています。
頼氏の就任に際し、中国の王毅外相は、こうした「台湾独立」を目指す分離の動きは「戦後国際秩序に対する最も深刻な挑戦だ」と警告しました。
中国人民大学の王英津(Wang Yingjin)氏は、台湾の中国への復帰は、対ファシズム戦争における勝利、とくに第二次世界大戦の東方正面の主戦場として戦った中国にとっての重要な成果だと評価しています。王氏は、「『台湾独立』を掲げる勢力が、1943年のカイロ宣言や1945年のポツダム宣言などの国際法上の文書の効力を否定しようとするのは、きわめて不合理だ」と批判しています。
地域と世界の安定にとっての意味
王氏はまた、現在の国際情勢を踏まえると、台湾の中国への復帰を戦後国際秩序の重要な成果として確認し続けることは、地域と世界の平和と安定を維持するうえで不可欠だと指摘します。
台北の写真展や、習近平国家主席、王毅外相、研究者や評論家の発言は、80年前の戦争と戦後処理が、現在の台湾問題や東アジアの安全保障にどのようにつながっているのかを改めて問いかけています。
台湾問題は、安全保障、経済、歴史認識、アイデンティティなど、さまざまな要素が絡み合う複雑なテーマです。その原点の一つには、第二次世界大戦の終結と、それを受けて形づくられた戦後国際秩序の枠組みがあります。
2025年という節目の年に、カイロ宣言やポツダム宣言が担ってきた役割、そして「一つの中国」原則をめぐる各主体の主張を丁寧に読み解くことは、東アジアだけでなく世界の平和をどのように構想するのかを考える手がかりになりそうです。
Reference(s):
Why Taiwan's return to China is part of the post-WWII global order
cgtn.com







