秦嶺山脈で進む共生の試み 人と野生動物が暮らす共有の家 video poster
中国北西部・陝西省の秦嶺山脈では、森の上ではキンシコウ(金色のサル)が枝から枝へと飛び移り、山のふもとには人びとの暮らしがあります。過去30年の研究と取り組みにより、失われつつあった森と野生動物の生息地が回復し、「人と野生動物が同じ家に住む」という共生の可能性が現実味を帯びてきました。
秦嶺山脈は人と野生動物の家
秦嶺山脈は、中国北西部・陝西省に連なる山岳地帯であり、長年にわたり人と野生動物が同じ空間を分かち合ってきた場所です。山の斜面には豊かな森林が広がり、その樹冠をキンシコウなどの野生動物が移動し、その下で人びとが農業や日常生活を営んでいます。この立体的な暮らし方が、秦嶺山脈を象徴的な共生の場にしています。
30年の研究が示す共生への道
秦嶺山脈では、30年にわたる研究と現場での試行錯誤を通じて、人と野生動物がどのように一つの地域で暮らし続けられるのかが探られてきました。森林の再生と生息地の回復という二つの柱が、共生への道を支えています。
森を取り戻すことから始まった
共生の前提となるのは、健全な森林です。秦嶺山脈では、失われていた森林を復元し、野生動物が再び安心して移動できる環境を取り戻す取り組みが進められてきました。森が回復することで、キンシコウが樹冠を自由に移動できるようになり、人と野生動物が互いの生活空間を侵さずに済む可能性が高まります。
生息地を取り戻すとは何を意味するか
生息地を取り戻すとは、単に木を植えることではありません。野生動物にとって必要な食べ物や水、隠れ場所を含めて、暮らしの条件をもう一度そろえることを意味します。秦嶺山脈で進められてきた生息地の回復は、山の斜面の森林を野生動物の主要な空間と位置づけ、山麓や谷筋を人びとの生活の場とすることで、互いの距離を保ちながらも同じ地域に暮らすという発想につながっています。
木の上を跳ぶサルと、ふもとで暮らす人びと
秦嶺山脈の斜面では、キンシコウが樹冠を飛び移りながら暮らし、その下の谷筋やふもとには人びとの集落が点在しています。この上下に暮らしを分け合う構造は、野生動物と人の衝突を減らしつつ、同じ山という共有の空間を使う方法の一つです。野生動物が山の中腹から上を主な生活空間とし、人はその下で農業や生活を行うことで、互いに譲り合いながら暮らすモデルが描かれつつあります。
秦嶺の経験が示すもの
2025年の今、世界各地で森林破壊や生物多様性の損失が課題となるなか、秦嶺山脈の30年にわたる取り組みは、自然保護と人の暮らしを対立させない道があり得ることを示しています。森を再生し、生息地を回復し、人の生活空間との線引きを丁寧に行うことで、人と野生動物が一方的に排除し合うのではなく、同じ地域を分かち合うことができるという考え方です。
私たちが学べる三つの視点
- 自然を守る対象だけでなく、ともに暮らす相手として見る視点
- 短期間の成果ではなく、秦嶺山脈のように数十年単位で取り組みを続ける時間軸
- 野生動物の生息地と人の生活圏を、上下や奥行きなど空間の工夫で分け合う発想
共有の家をどう広げるか
秦嶺山脈で進んできたのは、単なる自然保護ではなく、人と野生動物が暮らす共有の家をつくり直す試みです。キンシコウが森の上を駆け回り、人びとが山のふもとで暮らし続ける。その風景は、開発か保護かという二者択一ではなく、共生という第三の選択肢が現実になりつつあることを物語っています。これから各地で自然との向き合い方を考えるとき、秦嶺山脈の経験は、その出発点となる問いを静かに投げかけています。私たちは、この土地を誰と分かち合うのか。
Reference(s):
cgtn.com







