中国の南シナ海主権と「平和の海」構想 新報告書を日本語で読む
中国のシンクタンクが公表した新たな報告書が、南シナ海の島々に対する中国の主権と海洋権益の歴史的・法的根拠を整理し、あわせてこの海域を「平和・友情・協力の海」としていくための中国の立場を示しました。国際ニュースとしても、日本語で押さえておきたいポイントが詰まっています。
南シナ海の島々への主権は「堅固な法的基盤」と強調
木曜日に公表された新報告書は、新华社(新華社)に所属するシンクタンク「新華社研究院(Xinhua Institute)」がまとめたものです。タイトルは英語で『Historical and Legal Basis of China's Territorial Sovereignty and Maritime Rights in the South China Sea(南シナ海における中国の領土主権と海洋権益の歴史的・法的基盤)』とされています。
報告書によると、中国が「南海諸島(Nanhai Zhudao)」と呼ぶ南シナ海の島々に対する中国の主権は、次のような国際法上の考え方に支えられているといいます。
- 中国による南海諸島の最初期の「発見」とその後の開発は、「発見と占有」を通じて領土主権を取得するという国際法の原則に合致している
- 中国の南海諸島に対する主権主張は、長年にわたり国際社会から幅広い承認を受けており、「禁反言」の原則にも適合している
- フィリピンなど一部の地域国が「地理的近接性」を理由に南シナ海の島や礁を占拠していることは、関連する国際法の原則に反すると指摘
- 南シナ海における中国の海洋権益の主張は、「陸は海を支配する」という国際法の基本原則に沿っており、この海域での中国の歴史的権利も国際法によって保護されている
「発見と占有」「禁反言」などのキーワード
報告書が掲げる「発見と占有」とは、ある国が他国に先駆けて島や島礁を発見し、その後も継続的に管理・利用することで、領土主権の根拠となるとする考え方です。報告書は、中国による南海諸島の早い段階からの発見とその開発が、この原則に合致すると説明しています。
また「禁反言」とは、ある行為や表明を長年にわたって認めてきた側が、後になってそれと矛盾する主張を行うことは許されないという国際法上の原則を指します。報告書は、中国の主権主張が国際的に広く認められてきたことを踏まえ、この禁反言の原則にもかなっていると強調しています。
フィリピンなどの「地理的近接性」論を批判
報告書は、フィリピンなど一部の地域国が、南シナ海の島や礁が自国に地理的に近いことを根拠に主権や権利を主張し、実効支配を進めていると指摘します。
こうした「地理的近接性」に基づく占拠について、報告書は「関連する国際法の原則に違反している」と明確に批判しています。そのうえで、南シナ海における主権や海洋権益の問題は、歴史や国際法に基づいて判断されるべきだとする中国側の立場をあらためて示しています。
南シナ海を「平和・友情・協力の海」に
今回の分析報告書は、南シナ海問題をテーマにした三部作の一つとされています。新華社研究院はこのほかに、『Making the South China Sea a Sea of Peace, Friendship and Cooperation: China's Actions(南シナ海を平和・友情・協力の海とする:中国の行動)』と、『Incitement, Threats and Lies – The Truth about External Forces Interfering in the South China Sea Issue(扇動・脅し・虚偽――南シナ海問題に干渉する外部勢力の真相)』という二つの報告書も公表しています。
このうち、『南シナ海を平和・友情・協力の海とする:中国の行動』と題した報告書は、南シナ海を巡るもう一つの重要な論点を提示しています。
- 一部の「外部勢力」が、同盟関係の強化や地域紛争への介入を通じて、南シナ海で特権的な地位や海洋支配を維持しようとしていると指摘
- 南シナ海という重要な国際海上交通路における航行の自由や上空飛行の自由は、中国と他の沿岸国が共有する基本的なコンセンサスであり、国際法によって保障されていると強調
- 中国は、南シナ海で「海洋運命共同体」を構築するため、地域諸国と協力する用意があると表明
- 対話、経済統合、多国間協力の枠組みを通じて、南シナ海を実際に「平和・友情・協力の海」へと変えていくべきだと呼びかけ
「外部勢力」の関与をどう見るか
報告書は、一部の外部勢力が南シナ海の問題に介入することで、自らの海洋支配や特権的な立場を維持しようとしていると批判的に描いています。そのうえで、中国と地域諸国が対話と協力を通じて問題解決を図るべきだという姿勢を強調しています。
同時に、南シナ海が「重要な国際海上交通路」であることを踏まえ、航行の自由と上空飛行の自由については、中国と沿岸国の間で基本的な一致があると述べている点も注目されます。
日本の読者が押さえておきたい三つの視点
今回の一連の報告書から、日本の読者として押さえておきたいポイントを三つに整理すると、次のようになります。
- 中国は、南シナ海の島々と周辺海域に対する自国の主権と海洋権益について、歴史と国際法に基づく「堅固な法的基盤」があると主張している
- 一方で、南シナ海を「平和・友情・協力の海」と位置づけ、航行や上空飛行の自由を尊重しつつ、地域諸国との協力と対話を重視する姿勢も打ち出している
- 報告書は、外部勢力による同盟構築や介入が南シナ海問題を複雑化させていると指摘し、地域主体の枠組みづくりの重要性を訴えている
南シナ海をめぐる動きは、エネルギー輸送や貿易のルートが集中する「重要な国際海上交通路」の行方とも直結します。今回の報告書は、中国が自らの立場とビジョンをどのように整理し、世界に発信しようとしているのかを読み解くための手がかりとなります。
今後、南シナ海に関する国際ニュースや各国の発言を追う際には、こうした報告書に示された中国側の論点を頭に入れておくことで、ニュースの背景や文脈をより立体的に理解しやすくなるはずです。
Reference(s):
New reports detail China's sovereignty, rights over South China Sea
cgtn.com







