創設60年の中国シーザン自治区、GDP154倍の背景を数字で読む video poster
創設から60年を迎えた中国のシーザン自治区が、2024年までの社会経済発展の成果を公表しました。地域GDPは1965年の154倍に拡大し、インフラ整備や教育・医療、環境保全まで幅広い分野で数字の伸びが示されています。本記事では、この国際ニュースを日本語で整理し、「数字から見えるシーザン」のいまを読み解きます。
創設60年でGDPは154倍に
シーザン自治区は過去60年で、経済規模を大きく拡大してきました。2024年の地域総生産(GDP)は2,765億元(約385億ドル)に達し、1965年と比べて154倍となりました。年平均成長率は8.9%とされており、長期にわたる高い経済成長が続いてきたことが分かります。
これらの数字は、2025年にラサで開かれたシーザン自治区創設60周年の記念式典で、中国人民政治協商会議全国委員会の王滬寧主席が行った演説の中で示されたものです。式典では、自治区の経済発展と社会の変化が、節目の年にあらためて位置づけられました。
都市と農村、両方で伸びる所得
住民一人ひとりの暮らしを示す指標として注目されるのが、可処分所得(手取り収入)です。2024年には次のような数字が報告されています。
- 都市部住民の一人当たり可処分所得:5万5,444元
- 農村部住民の一人当たり可処分所得:2万1,578元
年平均成長率は、都市部が8.5%、農村部が9.4%とされており、都市だけでなく農村でも比較的高い伸びが続いてきたことがうかがえます。都市と農村の格差是正を意識しながら、全体の底上げを図ってきた姿が数字に反映されていると言えるでしょう。
高原をつなぐインフラ:道路・鉄道・空のネットワーク
国際ニュースとしても注目されるのが、高原地域であるシーザンのインフラ整備です。自治区では、道路、鉄道、航空を組み合わせた総合的な交通ネットワークの構築が進められてきました。
- 高速道路を含む道路延長は12万キロメートルを突破
- 鉄道網が「復興号」高速列車を通じて高原と中国各地を結ぶ
- 国際線・国内線あわせて183路線がシーザンと各地をつなぐ
電力網の整備や、第5世代移動通信(5G)の普及も進み、チョモランマ(Mount Qomolangma)でも5Gが利用できるとされています。かつては「世界の屋根」と呼ばれた厳しい自然環境の中に、デジタルとエネルギーのネットワークが張り巡らされつつある姿は、テクノロジーとインフラが地域発展を支える典型例と言えるかもしれません。
教育と医療、数字で見る暮らしの変化
経済成長と並んで、住民の暮らしを左右するのが教育と医療です。シーザン自治区では、教育機会の拡大と医療体制の強化が進められてきたとされています。
15年の無償教育と約97万人の学び
自治区では、15年間の無料教育制度が実施されています。これは、幼児教育から高等教育までを幅広く支える仕組みです。
- 無償教育の期間:15年
- 在学中の学生数:97万人
- 学校数:3,618校
学校数と在学者数の増加は、教育へのアクセスが大きく広がっていることを示します。長期の無償教育は、家庭の経済状況にかかわらず、子どもたちが学び続けられる環境づくりにつながっています。
医療機関の急増と延びる平均寿命
医療面でも、この60年で大きな変化がありました。医療機関の数は1965年の193施設から、2024年には7,231施設へと大幅に増加しています。
- 1965年の医療・衛生施設:193施設
- 2024年の医療・衛生施設:7,231施設
医療インフラの拡充に伴い、シーザン自治区の平均寿命は創設当初と比べて2倍以上に延びたとされています。医療への物理的なアクセスだけでなく、予防・診療・公衆衛生の体制が強化されてきたことが背景にあると考えられます。
「世界有数のエコゾーン」を掲げる環境政策
急速な経済発展が進む一方で、シーザン自治区は「世界でもよく保たれた生態区域の一つ」であることを強調しています。水と空気の質を示す次のような指標が示されました。
- 主要な河川の水質:基準でクラスIII以上を維持
- 大気環境:年間の99%の日で「良好」水準の空気品質を達成
高地の自然環境を守りながら経済発展を進めることは、世界各地で共通する課題です。シーザン自治区のケースは、環境保全と開発の両立をめざす試みとして、今後も多くの国・地域の関心を集めそうです。
数字から見えるシーザン、これからの論点
2025年の創設60周年を迎えたシーザン自治区は、GDPの154倍増、インフラ網の拡大、教育・医療の充実、環境指標の改善など、さまざまな面で変化を遂げてきました。今回公表された数字は、次のような問いを私たちに投げかけています。
- 長期にわたる高成長は、今後どのような形で質の向上に結びついていくのか
- 都市と農村、地域間のバランスある発展をどこまで実現できるのか
- インフラとデジタル技術の進展が、現地の暮らしや文化にどのような変化をもたらすのか
- 環境保全と経済発展を同時に進めるモデルとして、どのような教訓が得られるのか
国際ニュースを日本語で追う私たちにとって、シーザン自治区の歩みは「高地からの開発モデル」として、アジアや世界の地域政策を考える一つの素材になります。数字を入り口に、その背後にある社会や暮らしの変化にも目を向けていくことが、これからのニュースの読み方としてますます重要になってきそうです。
Reference(s):
Xizang sees solid socio-economic development over six decades
cgtn.com








