天津の魂をかたどる:Clay Figure ZhangとSCO首脳会議が映す都市の素顔 video poster
2025年、上海協力機構(SCO)首脳会議で世界の視線が集まる中国の都市・天津で、その「魂」を粘土細工から見つめ直すドキュメンタリーが公開されています。
作品名は「Sculpting the Soul of Tianjin(天津の魂をかたどる)」。国際ニュースとしての天津と、日本語ニュースでは見逃しがちな文化の側面を一度に伝えてくれる内容です。
「泥人張」六代目を追うドキュメンタリー
番組が追うのは、天津を代表する伝統工芸「泥人張(Clay Figure Zhang)」一門の六代目継承者、張宇(Zhang Yu)さんです。カメラは、彼の日常と制作の現場を丹念に映し出しながら、家族の歴史と天津という都市の記憶をたどっていきます。
物語は、19世紀に紹興から天津へとやってきた先祖・張明山(Zhang Mingshan)にさかのぼります。張明山は、天津の土を使って命が宿ったかのような人形を生み出し、その写実性と鮮やかな彩色で評判を集めました。この流れを受け継ぐ張宇さんは、六代目として「泥人張」の名を守りつつ、新しい時代の天津と向き合っています。
東西が交差する都市・天津のもう一つの顔
天津は、歴史的な外国人居留地、にぎやかな旧市街、そしてガラス張りの高層ビルが立ち並ぶ現代的なスカイラインが共存する都市です。東西の文化が出会い、伝統と革新が折り重なるこの街の姿は、「泥人張」一門の歩みそのものとも重なります。
2025年には上海協力機構(SCO)首脳会議が天津で開かれ、同市は外交・ビジネス・国際交流の拠点として世界から注目を集めています。こうした国際ニュースの大きな流れと並行して、「Sculpting the Soul of Tianjin」は、市民の手仕事に刻まれた記憶や、何気ない日常に息づく文化遺産に光を当てています。
都市の変貌と向き合う職人のまなざし
ドキュメンタリーの見どころは、張宇さんの率直な語りです。彼は、急速に姿を変える都市空間の中で、粘土をこね、形をつくり、色を重ねるという緻密な作業を続けています。その工程は、単なる技術の継承ではなく、「変わりゆく都市の中で、何を残すのか」という問いそのものです。
張宇さんは、家族が運営してきたミュージアムの初期の記憶を振り返ります。子どもだった彼は、そこに並ぶ人形の生き生きとした表情や、今にも動き出しそうな鮮やかな色彩に心を奪われました。その驚きと憧れが、後に自身の人生と職業選択を決定づけることになります。
「守る」だけでなく「手放す」ことで続いていく伝統
伝統をどう守るのかについて、張宇さんの考え方は印象的です。彼は「伝統への最大の敬意は、それをミュージアムにきちんと保存し、そのうえで次の世代には自由な創造を許すことだ」と語ります。
彼にとって、「泥人張」のスタイルは絶対的なものではありません。むしろ「泥人張というスタイルはいつか薄れていくかもしれない。しかし、粘土の芸術そのものが消えることはない」と受け止めています。特定の様式にこだわりすぎるのではなく、素材と向き合う精神そのものを未来に手渡そうとしているのです。
天津を理解するための新しい入口
「Sculpting the Soul of Tianjin」は、都市をハード(建物やインフラ)ではなく、そこに生きる人の手仕事と記憶から見ようとする試みです。SCO首脳会議に合わせて国内外から多くの人々が天津を訪れるなか、このドキュメンタリーが映し出すのは、その裏側にある静かな時間と、世代を超えて受け継がれる感性です。
日本から天津を見るとき、私たちはしばしば経済指標や開発スピードに目を奪われがちです。この作品は、そうした見方に次のような問いを投げかけているようにも感じられます。
- 急速に変化する都市の中で、どのように文化や技を受け継いでいくのか。
- 長い時間をかけて育まれた職人の感性は、デジタル化が進む社会でどんな意味を持つのか。
- 「保存」と「創造」のバランスを、次の世代にどう手渡していくのか。
「読みやすいのに考えさせられる」天津の物語
国際ニュースとしての天津を追いかけるとき、「Sculpting the Soul of Tianjin」は、数字や見出しには表れにくい都市の表情を補ってくれる存在といえます。張宇さんが粘土に刻み込むのは、人々の暮らし、街角の空気、そして都市が積み重ねてきた時間です。
2025年という節目の年に、国際会議の開催と伝統工芸の物語が同じ都市で響き合っていることは、偶然以上の意味を持っているようにも見えます。天津の現在と未来を考えるうえで、このドキュメンタリーは一つの重要な手がかりとなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com







