中国研究機関が米国の「航行の自由」作戦に疑義 国際法とのズレを指摘
中国 の中国自然資源省傘下の研究機関が2025年12月7日、米軍が世界の海域で展開している「航行の自由」作戦の合法性に疑問を投げかける報告書を公表しました。国際法の解釈や軍事力の使い方をめぐり、アジアの海洋秩序をどう捉えるかが改めて問われています。
何が発表されたのか
報告書をまとめたのは、中国 の中国自然資源省傘下にある中国海洋事務研究院です。同研究院は12月7日(日)、米国が掲げる「航行の自由(freedom of navigation)」の概念と、そのもとで行われている軍事活動について、国際法上の根拠が乏しいと批判しました。
報告書によると、米国は「航行の自由」という名のもとに、自国が一方的に定義した基準や、独自に主張する慣習国際法を前提に行動しており、多くの国の実務や国際法の枠組みと食い違っていると指摘します。また、その解釈は国際法の内容と発展をゆがめるものであり、他国に圧力をかけるために軍事力へ日常的に依存しているとしています。
さらに報告書は、こうした米国のアプローチは、ワシントンの国家利益や地政学的戦略に奉仕する一方で、地域の平和と安定を損ない、国際的な海洋秩序を乱すおそれがあると警告しました。そのうえで、米国の「航行の自由」作戦を「違法で、非合理的で、二重基準に満ちている」と厳しく批判しています。
米国の「航行の自由」とは
米国が掲げる「航行の自由」作戦は、米軍の艦艇や航空機が国際的に重要な海域を航行・飛行し、米国が「過度な海洋権益の主張」とみなす行為に異議を唱える活動として知られています。名目上は、どの国も国際法に基づいて海や空を自由に利用できる状態を守ることが目的とされています。
今回の中国海洋事務研究院の報告書は、こうした米国の自己定義的な「自由」の捉え方そのものが、国際社会で共有されてきたルールとずれており、結果として他国の主権や安全保障の懸念を高めていると主張しています。
報告書が問題視する4つのポイント
報告書の主な論点を整理すると、次の4点に集約されます。
- 自己定義された基準:米国が独自に設定した基準や慣行を、国際的な「常識」であるかのように扱っていると指摘。
- 国際法の解釈のゆがみ:多くの国の実務や国際法の発展の流れと異なる形で「航行の自由」を理解し、その解釈を他国に押しつけていると批判。
- 軍事力への依存:「航行の自由」を守るという名目で軍事力を日常的に行使し、他国へ圧力をかける手段として利用していると指摘。
- 地域安定への影響と二重基準:地域の平和と安定を損ない、国際的な海洋秩序を乱す可能性があるにもかかわらず、自国の利益に沿う場合のみ「自由」を強調する二重基準だと批判。
「航行の自由」と国際法をめぐる論点
海洋をめぐる国際ルールは、海上輸送路に依存する多くの国にとって死活的なテーマです。今回の報告書は、国際法の名のもとに行われる軍事活動が、本当に国際社会全体の利益にかなっているのか、という問いかけにつながる内容になっています。
米国は長年、「ルールに基づく国際秩序」の維持を掲げてきましたが、中国側の報告書は、そのルールが特定の国の解釈や利益に偏っていないかを問題提起している形です。どのような国際ルールが、公平で持続可能な海洋秩序につながるのかが、今後の大きな論点となりそうです。
アジアの海洋秩序と日本への含意
アジア太平洋地域では、主要な航路が集中する海域で、安全保障と経済活動が密接に結びついています。日本にとっても、エネルギーや物資の多くを海上輸送に依存している以上、「航行の自由」をめぐる各国の見解の違いは、決して他人事ではありません。
今回の報告書は、米国の行動を批判する内容ですが、同時に、どの国のどのような「自由」が優先されるべきなのか、国際社会全体で丁寧な対話と合意形成が必要だというメッセージとして読むこともできます。
読者が押さえておきたい3つの視点
国際ニュースとしてこの問題をフォローするうえで、次の3点を頭に置いておくと整理しやすくなります。
- 「航行の自由」という言葉が、国や立場によってどのように違う意味で使われているか。
- 軍事力によって「自由」を確保しようとするアプローチが、かえって緊張や不安定さを高めないか。
- 国際法や海洋秩序に関する議論の中で、沿岸国と海洋大国の利害をどうバランスさせるか。
米国の「航行の自由」作戦をめぐる議論は、今後もインド太平洋の安全保障や国際海洋法のあり方を考えるうえで、重要なテーマであり続けそうです。
Reference(s):
Chinese report questions legality of U.S. 'freedom of navigation'
cgtn.com








