中国宇宙ステーションでタングステン合金3100℃ 宇宙材料実験で世界記録 video poster
中国の宇宙ステーションで、タングステン合金を摂氏3100度以上まで加熱する世界記録の材料科学実験が行われました。宇宙空間でここまでの高温を実現したのは初めてで、核融合やロケットエンジンなど極限環境で使う新素材の研究に向けた大きな一歩といえます。
3100℃超を達成した宇宙材料実験とは
今回の実験は、中国の宇宙ステーションにある「Tianhe」コアモジュールの中に設置されたコンテナフリー(無容器)材料科学実験キャビネットで実施されました。この装置は、固体や液体の試料を容器に触れさせずに加熱・観測できるのが特徴です。
キャビネットは過去4年間にわたり、ロケットエンジンの炎にも耐える耐熱材料を中心に、タングステン合金、ニオブ合金、新しい高温材料などの実験を続けてきました。
今回、そのタングステン合金を3100度以上まで加熱することに成功しました。これは太陽表面の温度のおよそ半分に迫る温度であり、宇宙空間で行われた材料科学実験として最高レベルの加熱温度とされています。
地上と宇宙をつないだ共同研究
この記録的な実験は、軌道上の乗組員と、Northwestern Polytechnical University 物理科学技術学院を中心とする地上の研究チームとの連携によって実現しました。
地上の研究室では、重力を打ち消すように電場を使って試料を空中に浮かせる「静電浮遊装置」が開発されました。この技術を応用することで、宇宙ステーションのコンテナフリー材料科学実験キャビネットの内部で、試料を安定して浮かせた状態のまま加熱・観測できるようになっています。
研究チームは地上で多数の予備実験を行ったうえで、宇宙ステーション向けの詳しい研究計画を設計し、軌道上クルーとともに超高温実験を進めました。
なぜタングステン合金を宇宙で加熱するのか
タングステンは、現在知られる元素の中で最も高い融点を持ち、その融点は3412度とされています。このためタングステンおよびタングステン合金は、核融合炉やロケットエンジンなど極端な高温環境での利用が期待される重要な材料です。
しかし、タングステン合金が実際に超高温状態になったとき、どのような物理的・化学的性質を示すのか、詳しく理解することは長年の課題でした。今回の実験の責任者の一人であるHu Liang 教授は、なぜ宇宙空間での実験が必要なのか、次のようなポイントを挙げています。
- 宇宙ステーションの微小重力環境では、溶けたタングステンをほぼ完全な球形に保つことができます。これにより、表面張力や熱伝導などの物性を、理想的な形状で精密に測定できます。
- タングステンは非常に密度が高いため、地上の重力環境では、他の元素と合金化するときに成分が偏りやすくなります。一方で微小重力下では、タングステン合金の組成や内部構造が均一になり、その結果として性能が大きく向上するとされています。
中国独自の実験キャビネットを検証
今回の成果は、タングステン合金そのものの理解を深めるだけでなく、中国が自ら設計した宇宙材料科学実験キャビネットの性能を実証した点でも意味があります。
超高温まで試料を安定して加熱し、その状態を精密に測定できたことにより、宇宙空間における材料実験のための貴重な「生データ」が大量に蓄積されたとされています。
核産業と航空宇宙へのインパクト
Hu 教授によれば、今回得られた研究成果は、新しいタングステン合金の設計や性能向上のための理論的な基盤を提供することが期待されています。また、超高温材料のデータが整備されることで、核産業や航空宇宙分野での基礎研究に大きな役割を果たすとされています。
宇宙空間を実験室として活用する動きは今後さらに広がっていく可能性があります。タングステン合金3100度という世界記録は、その一端を示す象徴的な数字と言えるでしょう。
Reference(s):
China sets record with 3,100°C tungsten alloy heating in space
cgtn.com








