中国の第二次世界大戦を語り継ぐ動画「China Popcast」の試み video poster
第二次世界大戦中の中国で起きた物語を、いまの視点からどう語り継ぐのか――。文化をテーマにした動画ポッドキャスト「China Popcast」の最新エピソードでは、ヒマラヤを越えたパイロットたちの足跡と、日本軍による占領下の暗い記憶が静かに掘り起こされています。
第二次世界大戦の中国をテーマにした新しい動画ポッドキャスト
「China Popcast」は、中国の文化を幅広く扱う新しいビデオポッドキャスト番組です。番組のホストを務めるのは、ルーシー・ルー(Lucy Lv)さんとウェンデル・マーティン(Wendyl Martin)さん。国際ニュースや中国のカルチャーに関心のある視聴者に向けて、歴史や社会をやわらかい語り口で伝えています。
今回取り上げられているのは、第二次世界大戦期の中国に関する「忘れがたい物語」です。ヒマラヤを越える危険な飛行に挑んだパイロットたちの行方から、日本軍による占領下での東北地域の記憶まで、戦争の影が残るエピソードが並びます。
「Back to the Hump」でヒマラヤの空路をたどる登山家ケビン・ワン
ゲストの一人、登山家のケビン・ワン(Kevin Wang)さんは、「Back to the Hump」というプロジェクトの創設者です。彼は雲南省の山々を縦走しながら、第二次世界大戦中にヒマラヤ山脈上空を飛んだ航空路「ハンプ(the Hump)」に沿って、墜落した航空機やパイロットの痕跡をたどっています。
ハンプは、当時、中国へ物資を届けるために使われた空路とされています。険しい山岳地帯の上空を飛ぶ過酷なルートで、多くの航空機が帰らぬ飛行となりました。ワンさんの「Back to the Hump」は、次のような試みとして紹介されています。
- 雲南の山岳地帯を歩き、山中に眠る航空機の残骸を探し出すこと
- そこに込められたパイロットたちの物語を、現代に伝える手がかりとすること
山の斜面で見つかる金属片や部品は、単なる「残骸」ではなく、当時の緊迫した空路と、それを飛んだ人々の選択を物語る証拠として番組の中で位置づけられています。
東北の占領期を語るZ世代クリエイター、ジョナサン・ヤオ
もう一人のゲスト、ジョナサン・ヤオ(Jonathan Yao)さんは、Z世代のコンテンツクリエイターです。彼は自身の動画チャンネルを通じて、歴史や文化の断片を掘り起こし、丁寧に紹介してきました。
番組の中でヤオさんが語るのは、故郷である中国東北部が日本軍の占領を受けていた時代の記憶です。第二次世界大戦期の占領は、多くの暗い体験や感情を伴うテーマですが、彼はそれを避けずに取り上げ、歴史と向き合う姿勢を示しています。
ヤオさんの語りは、次のような点で注目されています。
- Z世代という若い世代の視点から、占領期の歴史を見つめ直していること
- 動画という身近な形式を使い、複雑な歴史を日常の会話に引き寄せていること
「China Popcast」は、こうしたヤオさんの取り組みを通じて、第二次世界大戦の記憶が現在の文化表現とどのようにつながっているのかを浮かび上がらせています。
「失われたパイロット」と「占領の記憶」をつなぐ番組の視点
今回のエピソードには、ヒマラヤの空路で行方を絶ったパイロットたちの物語と、日本軍占領下の東北地域の暗い記憶という、一見すると離れた二つのテーマが並んでいます。しかし番組は、それらを「第二次世界大戦が中国にもたらした影響」という一本の線で結びつけています。
山岳探検を通じて航空機の残骸を探すケビン・ワンさんの活動は、目に見える「物証」から戦争を考えさせる試みです。一方で、ジョナサン・ヤオさんの動画制作は、個人の語りや地域に残る記憶から、歴史の意味を問い直すものだと言えます。
番組のホストであるルーシー・ルーさんとウェンデル・マーティンさんは、この二つのアプローチを丁寧に聞き出しながら、歴史の重さだけでなく、そこから何を学び取るのかという問いを視聴者に投げかけています。
ポップカルチャーとしての戦争の語り直し
「China Popcast」は、ニュース・ドキュメンタリーとは少し違う、ポップカルチャー寄りの表現で第二次世界大戦の中国を取り上げています。動画ポッドキャストという形式を通じて、戦争の話題を身近な会話の延長線上に置こうとしている点が特徴です。
今回のエピソードが示しているのは、次のような視点です。
- 登山や探検といったアウトドアの経験から、歴史への関心が生まれうること
- 若い世代のクリエイターが、自分たちの言葉とスタイルで戦争を語り直していること
- 文化やエンターテインメントのコンテンツが、歴史教育とは別の形で記憶を受け継ぐ役割を持ちうること
国際ニュースとして語られる戦争史とは別に、こうした個人と地域に根ざした物語が積み重なることで、第二次世界大戦の中国像はより立体的なものになっていきます。
読む・聞く・語るための入口として
第二次世界大戦の歴史は、教科書や専門書だけでなく、ポッドキャストや動画といったかたちでも触れることができる時代になりました。「China Popcast」の今回のエピソードは、中国の戦争体験を、登山家とZ世代クリエイターという二人のゲストを通じて紹介することで、視聴者一人ひとりが「自分ならどう感じるか」「自分の周りにはどんな記憶があるか」を考えるきっかけを提供しています。
歴史に詳しい人はもちろん、これから中国の現代史や文化に触れてみたい人にとっても、戦争の物語をめぐるこうした試みは、知る・考えるための入口になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








