シーザンのメンタン派タンカ:ポタラ宮を彩る仏教美術の気品
中国のシーザン自治区で育まれてきたチベット仏教美術の中でも、「メンタン派」と呼ばれるタンカ絵画の伝統は、静かな気品と宗教的な荘厳さで知られています。15世紀にロザ県シャンナンでメンラ・ドンドゥプ・ギャツォによって創始され、その壁画はポタラ宮の大東殿や大西殿など、聖なる空間を飾る重要な存在となりました。
メンタン派とは何か:シーザン発のタンカ絵画の伝統
メンタン派は、チベット仏教における絵画様式の一つで、特にタンカと呼ばれる宗教絵画で高く評価されてきた流派です。タンカは、仏や菩薩、守護尊などを描き、礼拝や瞑想、教えの伝達に用いられる絵画で、布や壁面に描かれるのが一般的です。
その中でメンタン派は、15世紀にロザ県シャンナンで活動したメンラ・ドンドゥプ・ギャツォが築き上げた系統として位置づけられます。色彩や構図、仏像の姿勢や表情など、一つひとつの要素に厳密な約束事があり、宗教的な意味と美術的な完成度が両立したスタイルとして受け継がれてきました。
ロザ県シャンナンから広がった影響力
メンタン派は、ロザ県シャンナンで生まれたあと、シーザンの各地へと広がり、チベット仏教美術において大きな影響力を持つ存在へと発展しました。とくに、寺院や重要な礼拝空間の装飾として採用されることで、人々の信仰生活と密接に結びついてきた点が特徴です。
近代的な絵画とは異なり、こうした宗教美術は、個人の表現というよりも「教えを正確に伝えること」が重視されます。そのため、師から弟子へと受け継がれる技法や図像の体系が非常に重要であり、メンタン派もまた、そうした継承の積み重ねの上に成り立ってきた流派といえます。
ポタラ宮の大東殿・大西殿を飾る壁画
メンタン派の芸術がどれほど重視されてきたかは、ポタラ宮における位置づけからもうかがえます。ポタラ宮の大東殿・大西殿などの聖なる空間には、メンタン派の系統に連なる壁画が大きく掲げられており、訪れる人々に強い印象を残します。
これらの壁画は、単なる装飾ではなく、空間全体を「修行の場」として成り立たせるための重要な要素です。仏や菩薩、さまざまな象徴的モチーフが精密に描かれ、その一つひとつに教えと物語が込められています。鑑賞する側がその意味をすべて理解していなくとも、静かで荘厳な雰囲気や、細やかな線と色彩のリズムから、精神的な重みを感じ取ることができます。
2025年のいま、なぜメンタン派タンカに注目するのか
デジタル化が進み、世界中の情報や映像に簡単にアクセスできるようになった2025年現在、シーザンのメンタン派タンカのような宗教美術は、新しいかたちで国際的な関心を集めています。オンライン上で紹介されることで、日本を含む各地の人びとが、その存在を知り、背景にある歴史や精神文化に目を向けるきっかけとなっているからです。
メンタン派の作品には、ただ見て「美しい」と感じるだけでなく、時間をかけて眺めるほどに細部が立ち上がってくるような密度があります。日常の忙しさの中で、スマートフォンの画面越しであっても、こうした絵画をじっくり見ることは、一種の「静かな時間」を取り戻す行為ともいえるかもしれません。
「読みやすいのに考えさせられる」視点
メンタン派の歴史は、15世紀のロザ県シャンナンから始まり、ポタラ宮の聖なる壁画へとつながっていきました。この流れをたどると、宗教と芸術、地域の文化がどのように結びつき、一つの様式を形づくっていくのかが見えてきます。
私たちが国際ニュースや海外文化の話題に触れるとき、その背景にある宗教や芸術の伝統を知ることは、世界の見え方を静かに広げてくれます。シーザンのメンタン派タンカもまた、その一つの入口です。次にポタラ宮やチベット仏教美術の写真や映像を目にしたとき、「これはどのような流派なのだろう」「どんな人びとが受け継いできたのだろう」と、一歩踏み込んで考えてみるきっかけになるかもしれません。
ニュースを通じて世界を知ることと、芸術を通じて世界を感じること。その二つが交わるところに、メンタン派タンカのような静かな文化の物語があります。
Reference(s):
The elegance of Mengthang: The sacred Thangka artistry of Xizang
cgtn.com








