中国が全国炭素市場を強化へ 2030年に本格始動目指す新ガイドライン
中国が全国規模の炭素排出量取引市場を本格的に整備する新たなガイドラインを公表しました。グリーンで低炭素な経済への転換を加速しつつ、2030年までに国際基準と整合した市場づくりを目指します。
新ガイドラインの概要
新たに示されたのは、全国の炭素排出量取引市場(カーボン・トレーディング)を強化し、グリーンかつ低炭素な転換を推し進めるためのガイドラインです。この文書は、中国共産党中央委員会弁公庁と国務院弁公庁が連名で発出しました。
炭素排出量取引市場とは、温室効果ガスの排出量に「上限(キャップ)」を設け、その範囲内で企業などに与えられた排出枠を売買(トレード)できる仕組みです。排出を抑えた企業は余った枠を売り、排出が多い企業は枠を買い足すことで、経済活動と排出削減を両立させることを狙います。
2027年までに主要産業をすべてカバー
ガイドラインによると、2027年までに全国の炭素排出量取引市場は、国の主要な産業部門をすべて対象とする計画です。
あわせて、全国レベルの「自主的な温室効果ガス排出削減取引市場」についても、同時期までにすべての重要分野へ対象を広げるとしています。これにより、国としての制度だけでなく、企業や団体が自主的に取り組む削減活動も、市場を通じて評価されやすくなることが想定されます。
2030年の姿:キャップ・アンド・トレード型の全国市場
ガイドラインは、2030年までに全国の炭素取引市場を「キャップ・アンド・トレード」方式を基礎とする仕組みとして、ほぼ確立することを掲げています。キャップ・アンド・トレードとは、全体の排出量に上限(キャップ)を設定し、その枠を主体ごとに配分したうえで、枠の売買(トレード)を認める方式です。
排出枠の配分方法については、無料配分と有料配分の両方を組み合わせる設計を想定しています。また、2030年までに、次のような特徴を持つ自主的な温室効果ガス排出削減取引市場の構築を完了させるとしています。
- 信用性が高いこと
- 透明で標準化された仕組みであること
- 幅広い主体が参加できること
- 国際基準と整合していること
その時点で、中国は目に見える排出削減の成果を上げ、規制の枠組みを一段と改善するとともに、妥当な水準の価格が形成される炭素価格メカニズムを確立することを見込んでいます。
市場設計の具体的な方向性
対象拡大と排出枠配分ルールの精緻化
ガイドラインはまず、全国炭素取引市場のカバー範囲をさらに広げることを求めています。主要産業だけでなく、他の重要な分野も段階的に市場に組み込んでいく方向性が示されています。
同時に、企業などに割り当てる炭素排出枠(クオータ)の配分制度を、より精緻で実態に即したものへと改善する方針です。各地域で先行して実施されているパイロット(試験的)炭素取引制度についても、全国市場との整合性を意識しながら監督・管理を強化するとしています。
自主的削減市場の整備
政府主導の排出量取引だけでなく、自主的な温室効果ガス削減取引市場の整備も、今回のガイドラインの大きな柱です。具体的には、次のような方向性が示されています。
- 炭素削減に関する資源やプロジェクトの調整を進め、全国レベルでの連携を強化する
- 自主的削減活動に関するルールや基準を整備し、市場の健全性と信頼性を高める
- 認証された排出削減量(クレジット)の活用を促進し、削減成果を取引につなげやすくする
こうした取り組みにより、企業や団体が自主的に進める削減プロジェクトが、より明確なルールのもとで評価・取引されることが期待されます。
市場の活性化と監督の強化
ガイドラインは、市場の流動性と健全性の両立にも重点を置いています。具体的には、次のような方策が盛り込まれています。
- 取引対象となる商品の種類を増やし、市場参加者のニーズに応える
- 参加主体の範囲を広げ、多様なプレーヤーが関与できるようにする
- 市場監督を強化し、不公正な取引や不透明な行為を抑制する
取引商品や参加主体の多様化は市場の活性化につながる一方で、監督の強化も不可欠になります。今回のガイドラインは、その両面を同時に進める考え方を示しています。
データ・情報公開・法制度・国際協力も強化
市場の「基盤」を固めることも重要なテーマです。ガイドラインは、炭素取引市場全体の能力を高めるために、次の点を挙げています。
- 炭素排出量の算定と報告の精度向上
- 情報開示制度の強化と透明性の向上
- 政策面・法制度面での支援の充実
- 国際的な交流と協力の一層の深化
排出量データの信頼性や情報公開の仕組みは、炭素取引市場の信用を支える土台となります。また、法的な裏付けや安定した政策環境が整うことで、企業や投資家にとっても長期的な見通しを持ちやすくなります。
同時に、国際的な交流や協力を深めることで、中国の炭素市場が世界のルールや慣行とも歩調を合わせていくことが期待されます。これは、気候変動対策やグリーン投資をめぐる国際的な連携にも影響しうる動きです。
これから何が注目ポイントか
今回のガイドラインは、2027年と2030年という具体的なマイルストーンを示しつつ、市場の設計、監督、データや法制度、国際協力までを包括的にカバーしています。
今後は、主要産業への対象拡大のペース、排出枠配分ルールの具体化、自主的削減市場の認証制度づくりなどが、注目すべきポイントになりそうです。日本や他の国・地域にとっても、企業活動や国際協力の面で影響しうる動きとして、引き続きフォローしていく必要があります。
Reference(s):
China issues guideline to strengthen national carbon trading market
cgtn.com








