国際ニュース:中国とタジキスタンがパミール高原の野生動物を共同保護
2025年、標高4,000メートルを超えるパミール高原で、中国とタジキスタンの科学者たちが、マルコポーロヒツジをはじめとする高原の野生動物を守るために肩を並べています。厳しい風が吹きつける雪線付近での地道な調査は、中央アジアの生態系をどう守るかという国際ニュースとしても注目される動きです。
パミール高原で進む中国とタジキスタンの共同調査
パミール高原の調査現場は、標高4,000メートル以上の世界です。冷たい風が容赦なく吹きつけるなか、中国とタジキスタンの合同調査チームは、マルコポーロヒツジの足跡を追いながら、険しい斜面や雪原を進みます。
雪線に沿って歩いていると、突如としてヒツジの群れが姿を現すことがあります。その瞬間、チームは素早く観察用の望遠スコープを設置し、個体数や行動、位置情報などを静かに記録していきます。こうした作業が、一日のうちに何度も繰り返されるのが、彼らにとっての「いつもの一日」です。
高原生態系の「旗艦種」マルコポーロヒツジ
マルコポーロヒツジは、その名の通り、中世の旅行家マルコ・ポーロの旅行記を通じて広く知られるようになった高原の野生動物です。現在は、パミール高原を代表する「旗艦種」として位置づけられています。
旗艦種とは、その地域の生態系を象徴する存在であり、その保護が他の多くの生き物や環境全体の保全にもつながると考えられる種のことです。マルコポーロヒツジの動きや生息環境を丁寧に追うことは、高原全体の健康状態を知る「指標」を手に入れることでもあります。
現場からの声:一つ一つの出会いが研究の「宝」
中国科学院の新疆生態地理研究所(XIEG)で研究を行う楊維康(ヤン・ウェイカン)研究員は、現場での観察の積み重ねこそが調査の核だと語ります。
楊氏は「マルコポーロヒツジにとって適した生息地に出会うたびに、私たちは車や足を止めて観察します。数頭しか見られないこともあれば、数十頭の群れに出会うこともあります。一つ一つの観察が、私たちの研究にとって非常に貴重なのです」と話しています。
山の天候は変わりやすく、強風や低温のなかでの調査は決して楽ではありません。それでも、目の前の一群れを見逃さずにデータとして残すことが、長期的な保護策を考えるうえで不可欠だと、調査チームは考えています。
中国とタジキスタンの国際協力が持つ意味
マルコポーロヒツジのように広い範囲を移動する野生動物は、国境線とは関係なく生きています。そのため、生息状況を正確に把握し、保護の方法を考えるには、一つの国だけでなく、周辺国との連携が不可欠です。
今回のように、中国とタジキスタンの科学者が共同で現地調査を行い、同じデータを共有しながら議論を重ねることは、科学的な知見を深めるだけでなく、地域の信頼関係を築くうえでも重要だといえます。高原の野生動物保護をめぐる国際協力は、政治や経済とは別のレベルで、静かに進む「対話」の形でもあります。
遠い高原と私たちの日常をつなぐ視点
パミール高原は、日本から見ると遠い場所にありますが、その生物多様性を守る取り組みは、私たちの日常とも無関係ではありません。気候変動や環境悪化が進むなかで、どの地域の生態系がどのように守られているのかは、地球規模で考えるべきテーマになりつつあります。
中国とタジキスタンの合同調査チームが、厳しい風の中で一頭一頭のマルコポーロヒツジを見つめているのは、「失われる前に知り、守る」ための問いを、現場から投げかけているとも読めます。遠く離れた高原での国際ニュースをきっかけに、私たち自身の暮らしと環境のつながりについて、少し立ち止まって考えてみる余地がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








