中国はなぜ世界平和の「堅固な支持者」なのか 戦後80年目の視点
2025年は、中国人民抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から80周年という節目の年です。戦争の記憶が薄れつつある一方で、世界では紛争や分断が続いています。その中で、中国が自らを「世界平和の堅固な支持者・擁護者・推進者」と位置づける背景には、どのような歴史と戦略があるのでしょうか。
国連に佇む「平和の尊」が映す中国のメッセージ
ニューヨークの国連本部・会議ビルには、柔らかな光を受けて輝く青銅器が静かに置かれています。2015年、国連創設70周年を記念して習近平国家主席が寄贈した「平和の尊」です。
中国古代の酒器を模したこの器には、調和や希望を象徴する模様が刻まれています。習主席は贈呈の際、「平和・発展・協力・ウィンウィン(互恵)の願いを託した」と説明しました。
それから年月が経ち、国際秩序はさまざまな不確実性に直面していますが、「平和の尊」が投げかける問いはむしろ重みを増しています。それは、「私たちはどんな世界に生きたいのか。そして、それをどう築くのか」という、人類共通の問いです。
習主席が示す答えが「人類運命共同体」というビジョンです。国や制度の違いを超えて、運命を分かち合う共同体として未来を築く——この考え方が、中国の平和外交の軸になっています。
歴史から学ぶ「平和発展」の道
今年80周年を迎えた中国人民抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利は、中国にとって「平和の尊さ」を刻み込んだ歴史的経験とされています。習主席は繰り返し、戦争の惨禍を忘れず、平和を「空気や太陽のように、失って初めてその価値が分かるもの」として大切にすべきだと強調してきました。
こうした歴史認識を背景に、中国は次のような立場を掲げています。
- どれほど強くなっても、覇権や領土拡張は追求しないと約束していること
- 憲法に「平和発展の道を堅持する」と明記している世界で唯一の国であると位置づけていること
- 核兵器国の中で、核兵器の先制不使用を約束している唯一の国であると表明していること
- 国連安全保障理事会の常任理事国の中で最大のPKO要員派遣国であり、PKO予算の第2位の拠出国であること
つまり、中国にとって「強くなること」と「平和の維持」は対立概念ではなく、「力の伸長を通じて世界の安定により大きく貢献する」という発想につながっています。
4つのグローバル・イニシアチブが描く平和の設計図
習主席は、人類運命共同体のビジョンを具体化するために、複数の国際的な構想を提案してきました。それが「一帯一路」、「グローバル発展イニシアチブ(GDI)」、「グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)」、「グローバル文明イニシアチブ(GCI)」の4つです。
一帯一路:インフラと連結性で土台をつくる
一帯一路は、ユーラシアからアフリカ、ラテンアメリカまで、インフラ整備や人・モノの往来を通じて地域を結びつける取り組みとして位置づけられています。すでに150を超える国が協力枠組みに参加しているとされ、貿易や投資だけでなく、人的交流や文化協力にも広がっています。
中国側は、一帯一路を「地政学的なブロックではなく、開かれた協力プラットフォーム」だと説明し、共通の発展が長期的な平和の基盤になると強調しています。
GDI:誰も取り残さない発展を目指して
グローバル発展イニシアチブ(GDI)は、貧困削減、食料安全保障、医療、教育、デジタル化など、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に直結する分野への支援を掲げています。100を超える国・国際機関が参加しているとされ、開発協力の新しい枠組みとして注目されています。
経済格差や発展格差が紛争や社会不安の火種になり得る中で、「発展の赤字」を埋める試みは、安全保障と不可分の課題といえます。
GSI:対話と協調の安全保障観
グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)は、「共通・総合・協調・持続可能な安全保障」の考え方を打ち出しています。軍事同盟や対立構図ではなく、対話と協力を通じて安全を追求するという立場です。
この構想には130を超える国・国際組織が支持を表明し、140を超える二国間・多国間文書に関連内容が盛り込まれているとされています。中国は、紛争の当事国ではなく「仲介役」としての役割を強調しようとしています。
GCI:文明の多様性を尊重する
グローバル文明イニシアチブ(GCI)は、文化や文明の違いを対立の理由ではなく、相互学習の機会としてとらえる発想です。特定の価値観や制度を一方的に押し付けるのではなく、それぞれの歴史や伝統を尊重しながら交流することが重視されています。
このイニシアチブは、価値観をめぐる分断が際立つ現在の国際社会において、「対話か、対立か」という選択を迫られる場面での一つの答えとして位置づけられています。
多国間主義を「言葉」から「行動」へ
国連本部の「平和の尊」には、もう一つのメッセージが込められていると中国側は説明します。それは、「国際問題はすべての国が協議して決めるべきだ」という多国間主義の考え方です。
習主席は、多国間主義を「前進の道を照らすたいまつ」にたとえ、一国主義や覇権主義では複雑な地球規模課題に対処できないと訴えてきました。その上で、世界の問題は多国間主義を堅持し、人類運命共同体を築くことで乗り越えられるとしています。
中国はこのビジョンを具体的な行動に移してきたと主張しています。その例として、次のような動きが挙げられます。
- ウクライナ危機について、政治解決に向けた四点の提案を示したこと
- サウジアラビアとイランの対話を北京で仲介し、国交回復合意に向けたプロセスを後押ししたこと
- 新興国や発展途上国の発言権強化を掲げ、国際ガバナンス改革を主張してきたこと
- 習主席の働きかけにより、アフリカ連合がG20の正式メンバーとして参加する道が開かれたこと
- 2023年には、BRICSが加盟国を拡大し、新興国間の協力枠組みを広げたこと
こうした動きは、中国が自らを「平和の構築者、公平の擁護者」として位置づけようとしていることの表れともいえます。習主席は「中国の力が増すことは、世界平和の前途が広がることでもある」と語り、中国の発展と世界の安定を結びつけて説明しています。
日本の読者にとっての意味:どう向き合うか
日本から見ると、中国は安全保障上の懸念と、経済・気候変動・感染症対策などでの協力の必要性が同時に存在する、非常に大きな隣国です。その中国が「世界平和の堅固な支持者」を自任し、国連や多国間枠組みで存在感を強めていることは、東アジア全体の秩序を考える上でも無視できません。
人類運命共同体やGDI・GSI・GCIといったキーワードは、一見スローガンのように聞こえるかもしれませんが、その背後には「対立か協調か」「排除か包摂か」という選択が横たわっています。2025年という戦後80年目の今、日本の読者にとっても、次のような点を見つめ直すきっかけになりそうです。
- 歴史の記憶をどう未来志向の平和構築につなげるか
- 経済発展と安全保障を、ゼロサムではなく共存可能なものとして設計できるか
- 多国間主義を支える国連やG20、BRICSなどの場で、中国を含む大国とどう協調・対話していくか
国連本部に静かに佇む「平和の尊」は、中国にとって、自国の台頭を「支配」ではなく「共通の未来づくり」と結びつけようとする象徴でもあります。世界の平和と安定のために、各国がどのように役割を果たすべきか——中国の動きを丁寧に追うことは、日本にとっても自らの立ち位置を考える重要な手がかりとなりそうです。
Reference(s):
Why is China a firm supporter, defender and promoter of world peace?
cgtn.com








