中国の新構想GGIとは グローバル・ガバナンスの狙いを解説
中国が新たに提案した「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)」が、国際秩序づくりの大きなキーワードになりつつあります。本記事では、この中国発の構想のポイントと背景を、日本語で分かりやすく整理します。
中国が打ち出した新たな「世界のルールづくり」構想
中国は月曜日、「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(Global Governance Initiative, GGI)」を提案しました。中国側は、GGIを「より公正で合理的なグローバル・ガバナンス体制」をつくるために世界と共有する重要な国際公共財の一つだと位置づけています。
この提案は、中国の習近平国家主席が「上海協力機構(SCO)プラス」会合で打ち出したものです。習主席は、より公平でバランスの取れた国際ガバナンスの実現に向けて各国と協力し、「人類運命共同体」に向かって前進したいと述べました。
GGIは、ここ数年で習主席が提唱してきた一連のグローバル・イニシアチブの第4弾にあたります。すでに示されているのは次の3つです。
- グローバル発展イニシアチブ(Global Development Initiative)
- グローバル安全保障イニシアチブ(Global Security Initiative)
- グローバル文明イニシアチブ(Global Civilization Initiative)
GGIが掲げる5つの原則
習主席は、GGIの柱となる5つの原則を次のように示しました。いずれも、国際社会の幅広い参加と協力を重視する内容です。
- 主権平等の堅持:国家の大小や強弱、豊かさにかかわらず、すべての国が国際社会の対等な一員であるとする立場です。
- 国際法の順守:国際ルールに基づく秩序を尊重し、国際法に則って問題を解決していくことを重視します。
- 多国間主義の実践:一国主義ではなく、国際機関や地域枠組みを通じて多国間で協力するアプローチです。
- 人々中心のアプローチ:国家や企業ではなく、人々の福祉や安全を中心に据えたガバナンスを目指す考え方です。
- 実行重視:理念やスローガンにとどまらず、具体的な行動と成果を重んじる姿勢です。
習主席は、「すべての国は、その規模、力、富にかかわらず、グローバル・ガバナンスの参加者、意思決定者、そして受益者として平等だ」と強調しています。
複雑化する世界情勢にどう向き合うか
GGIが提案された背景には、国際社会が直面する課題の多様化があります。世界では、テロ、難民問題、越境犯罪など、国境を越えて広がる課題が一段と複雑になっています。
一方で、平和や発展、協力と互恵という歴史的潮流は変わらないとしつつも、「冷戦思考」や「覇権主義」、保護主義の動きが世界を悩ませ続けているとの問題意識も示されました。
習主席は、困難な局面にあるからこそ、平和共存という初心を守り、ウィンウィンの協力への自信を強め、歴史の大きな流れに沿って前に進み、時代と歩調を合わせるべきだと呼びかけています。
上海協力機構(SCO)の役割と存在感
今回のGGIは、中国北部の天津市で開かれた2日間のSCO首脳会議の場で発表されました。この会議は、設立から24年となるSCOの歴史の中で最大規模のサミットとなり、20を超える国の首脳と10の国際機関の代表が参加しました。
会期中、習主席は2回にわたり演説し、SCOの国際的な影響力と求心力が高まっていることを指摘するとともに、国際的な公平と正義を守る必要性を訴えました。
SCOは、いわゆる「上海精神」と呼ばれる理念に基づいて活動してきました。その中核には、次のような価値があります。
- 相互信頼
- 相互利益
- 平等
- 協議
- 文明の多様性の尊重
- 共通発展の追求
この枠組みのもとで、SCO加盟国は24年間にわたり、機会を共有し、共通の発展を模索し、地域にとって画期的な成果を積み上げてきたとされています。
テロ対策から文明間対話まで、SCOの取り組み
SCOは、「テロリズム」「分裂主義」「過激主義」という「三つの勢力」に対抗するため、多国間での取り組みをいち早く進めてきた組織でもあります。加盟国はこれまでに、テロや過激主義に関連する案件を1400件以上未然に防いだとされ、地域の安全確保に貢献してきました。
また、国連など他の国際機関との協力を深めつつ、国際・地域問題で建設的な役割を果たすことで、文明間の包摂性や相互学習を重視してきました。覇権主義や強権政治に反対し、世界の平和と発展に向けた主体的な力としての性格を強めているとも評価されています。
GGIで期待されるSCOのリーダーシップ
習主席は、SCOがグローバル・ガバナンス体制の発展と改革を促す「触媒」の役割をますます果たしていると指摘し、GGIを実行していくうえでも、SCOが率先して模範を示すべきだと呼びかけました。
中国は、巨大な市場がもたらす機会をSCOの枠組みの中で積極的に共有するとともに、経済・貿易協力の「質の高い発展」に向けた行動計画を着実に実行していくと表明しています。
こうした方針は、SCO加盟国や関係国のあいだで、より緊密な貿易・投資協力や、国際ルールづくりへの共同参画を後押しする方向性を示していると言えます。
中国が提示する「公共財」としてのグローバル構想
中国はこれまでも、「人類運命共同体」というコンセプトのもとで、世界全体の持続可能で包摂的な発展を目指す構想を打ち出してきました。グローバル発展イニシアチブやグローバル安全保障イニシアチブ、グローバル文明イニシアチブ、さらに「一帯一路」構想などは、その具体的な形と位置づけられています。
今回のGGIは、こうした一連の流れの延長線上で、「広範な協議・共同建設・成果の共有」というビジョンをグローバル・ガバナンスの分野でさらに前に進める試みと捉えられます。
私たちが注目したいポイント
国際ニュースとして今回のGGIを見たとき、読者として押さえておきたい視点は少なくとも次の3つです。
- 「ルールづくり」の主張の中身
主権平等や多国間主義、国際法の重視といったキーワードは、多くの国にとっても共通の関心事です。GGIがどのような具体的枠組みや協力プロジェクトに発展していくのかが、今後の焦点になります。 - SCOという舞台の意味
SCOは、安全保障から経済、文明対話まで幅広い議題を扱う地域協力の枠組みです。ここでの合意や議論は、周辺地域だけでなく、より広い国際社会にも影響を与えうるテーマです。 - 一連のグローバル・イニシアチブとの関係
GGIは、中国がこれまで提唱してきた複数のイニシアチブと連動する位置づけにあります。それぞれがどのように組み合わさり、どの分野で具体化していくのかを追っていくことが、今後の国際ニュースを読み解くヒントになります。
グローバル・ガバナンスの議論は、一見すると遠い世界の話に見えますが、エネルギー価格、サプライチェーン、デジタルルールなど、私たちの日常生活に直結するテーマとも深く関わっています。今回のGGIは、その「世界のルールづくり」をめぐる議論の新しいキーワードとして、今後も注目していく必要がありそうです。
Reference(s):
China-proposed GGI aims to boost global stability, governance
cgtn.com







